◆当面の「最後の円安、米金利上昇」だった「トランプ・ラリー」

「トランプ高」の高値更新まで長い時間がかかった米ドル/円と米金利

2016年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、米ドル/円は101円から12月半ばにかけて118円まで、最大で約17円もの一段高となった。今回は投開票直前の米ドル/円の安値は151.3円。11月19日現在までの高値は156.7円なので、最大上昇幅は5円程度にとどまっている。

ただし、2016年は選挙の開票が進む中で米ドル高が急に始まったのに対し、今回の場合は9月半ばの139.5円からすでに2ヶ月以上も米ドル高が続いていた。この2ヶ月間の米ドル/円の最大上昇幅は約17円で、奇しくも「トランプ・ラリー」のそれとほぼ同じだ。8年前は約1ヶ月という短期間で米ドル高となり、今回は2ヶ月と比較的ゆっくり時間をかけて米ドル高になった。

それにしても、8年前の「トランプ・ラリー」で記録した118円という高値を、2017年から4年間のトランプ政権を通じて米ドル/円は上回ることがなかった(図表1参照)。つまり、「トランプ・ラリー」は、トランプ政権1期を含めた局面における「最初で最後の米ドル高・円安」だったわけだ。

【図表1】米ドル/円の推移(2016年~2020年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

次は、「トランプ・ラリー」における米金利の動きについて見てみよう。投開票が始まる前まで1.7%程度だった米10年債利回りは、約1ヶ月で2.6%程度まで1%近い急騰となった。これに対して、今回は4.2%程度から4.5%程度までの上昇なので、やはり選挙後の上昇の程度は「トランプ・ラリー」に比べると小幅だ。

ただ、9月半ばの3.6%から約2ヶ月で米10年債利回りは1%近く上昇した。米ドル/円と同じように、米金利上昇も8年前の「トランプ・ラリー」は短期で実現したのに対し、今回はゆっくり時間をかけた結果という違いだったのではないか。

米10年債利回りも、2017年1月から正式にトランプ政権が始まると間もなく低下に向かった。その上で、米10年債利回りが「トランプ・ラリー」で記録した高値を大きく更新に向かったのは、2017年12月の「トランプ減税」の議会成立以降、ほぼ1年後のことだった(図表2参照)。

【図表2】米10年債利回りの推移(2016年~2018年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、米ドル/円、米10年債利回りとも8年前の「トランプ・ラリー」で記録した高値を更新するまでにはかなり長い時間がかかっていた。その意味では、8年前のトランプ氏勝利後の米ドル高・円安、米金利上昇という動きは、当面における「最後のトランプ高」だったことになる。

米国株のみ「トランプ・ラリー」の高値をすぐに更新

これらと異なり、米国株は、「トランプ・ラリー」の高値をすぐに更新、「トランプ高」が一段と拡大に向かった(図表3参照)。米国株が急落に向かったのは、「トランプ減税」の議会成立を受けた米金利上昇局面だった。

【図表3】NYダウの推移(2016年~2017年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上、トランプ氏の大統領選挙での勝利後の上昇相場、「トランプ高」が一段落した後の展開について、8年前の「トランプ・ラリー」のケースで振り返ってみた。特に米ドル/円と米金利が「トランプ高」の高値更新までかなり長い時間がかかった点は、今回のケースにおいても意識しておきたいところではないだろうか。