マネクリにてご執筆いただいておりましたオフィス・リベルタス 創業者 取締役、大江 英樹 氏が2024年1月1日にご逝去されました。心より哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。

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本年も当コラムをよろしくお願いいたします。2019年5月から「人生100年デザイン」と銘打って連載を開始し、これまで41件のコラムを掲載してきました。今回は過去に掲載したコラムから老後資金について振り返ってみます。

老後資金2,000万円不足問題

昨年6月、金融庁から「老後の生活には2,000万円の金融資産が必要」と記載された報告書が公表され話題となりました。

報告書によると定年退職後の年金を中心とした平均的な毎月の収入額が20万9198円なのに対して支出額は26万3718円とされ、約5.5万円不足すると算出されています。リタイヤ後も20から30年の人生が残っているとすると、不足額の総額は単純計算で1,300から2,000万円となります。

この不足金額はあくまで平均的な金額であり、すべての人に該当するものではありません。

老後の生活スタイルによっては公的年金支給額の範囲内で収まるケースもあれば、2,000万円以上必要になるケースもあります。支出額26万3718円のうち住居費は1万4000円程度で(持ち家前提の試算)、老後も賃貸物件に居住する場合は2,000万円以上不足することとなります。

そのため、ご自身の老後の生活スタイルを想定し、資産寿命を意識したお金の使い方を考える必要があります。

老後資金はどのくらい貯めればいいの?

では退職後にゆとりがある生活をするためには一体いくら用意すればいいのでしょうか。

フィデリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査によると「退職後の生活資金は、現役時の年収に左右される」ということが分かりました。すなわち、年収が高い人ほど生活水準は高くなり、退職後もその生活水準を落とすことは難しいため年収に応じて退職後の生活のための資産形成をしなければいけません。

目安としては、いま20から30代の方は退職時点で年収の9倍。60代の方であれば年収の4倍ほどの資産準備が必要となります。

>>(参照)退職後ゆとりある生活に年収の何倍必要?――プロが教える60代向けの投資プラン(前編)

老後資金を準備するためにはどうすればいいの?

まず、可能であれば定年後も働き続けることで資産寿命を延長させることができます。同時に年金受給開始を後ろ倒しにすることで年金支給額を増やすことができるため、より豊かな老後生活を送ることができるでしょう。そのためには退職後も長く働けるように健康面にも気を遣うことが重要です。

現行制度では70歳まで1ヶ月単位で年金受給開始を遅らせることが可能で、1ヶ月遅らせるごとに65歳から受給した場合の金額に0.7%ずつ上乗せされていきます。

また、次回の制度改正では年金受給開始年齢を最長75歳まで後ろ倒しにできるようになる見込みです。75歳から受け取るとすれば、年金額は通常の2倍となる方向で検討されています。

>>(参照)自助努力は必要?公的年金制度の見直し

>>(参照)お金に働かせる前に、自分で働こう!

資産に余裕があれば投資を検討してみても良いでしょう。

しかし、投資の結果は不確実です。たとえば退職金を使って一度に投資をした結果、失敗してしまい老後難民になってしまっては元も子もありません。投資を行う年齢によって資産配分を変える「ライフサイクル投資」でご自身のライフステージにあった方法で資産形成することがポイントになります。

>>(参照)人生100年時代に必要な「ライフサイクル投資」とは

老後資金の形成をする場合は、毎月一定額を出資して長期に渡る積立投資が基本となります。「iDeCo」や「つみたてNISA」を活用すれば税制面で様々な恩恵を受けることができますので、積極的に活用していきましょう。

iDeCoの税制メリット

(1)掛け金が所得控除の対象となる
(2)運用による利益が非課税となる(通常は20.315%の課税)
(3)受け取る年金が公的年金等控除や退職所得控除の対象となる

>>(参照)iDeCoを活用して税制メリットを受けよう!

つみたてNISAの税制メリット

(1) 積立で購入した投資信託の運用益が非課税に(通常は20.315%の課税)
(2) 年間40万円まで投資可能で、最長20年間非課税となるため長期投資に最適
(3) いつでも売却、引き出しが可能

>>(参照)NISAを使えば売却益・配当金が非課税に!