消費税増税による負担増カバーを目指す

いよいよ2019年10月より、消費税の税率が8%から10%に引き上げられます。食料品等について軽減税率の扱いはあるものの、私たち消費者にとって負担が増えることは間違いありません。

例えば年収500万円の世帯では、消費税増税により年間約5万円の支出増という試算も出ています。ざっくり言って、年収の1%前後は負担が増えると覚悟しておいた方がよさそうです。

一方で、投資の分野では、国も税制面からの後押しをしています。代表的なものが、個人型確定拠出年金(iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)です。

そこで今回から3回にわたり、これらの税優遇制度について解説します。税制メリットを享受することで、消費税増税による負担増のカバーを目指しましょう。

iDeCoの税制メリットは3つ

今回は、個人型確定拠出年金(iDeCo)についてです。実は、制度自体はかなり前からありましたが、知名度が上がらずほとんど使われていませんでした。

しかし、数年前に使用できる対象者が大きく拡大され、「iDeCo」(イデコ)という愛称がつけられてからは一気に広まりました。確定拠出年金とは、自分自身の自助努力により老後の生活資金を若いうちからの積立により形成していくという制度です。この自助努力に対し、国は税金面で後押ししているのです。

iDeCoの税制メリットは、次の3つです。

(1)掛け金が所得控除の対象となる
(2)運用による利益が非課税となる(通常は20.315%の課税)
(3)受け取る年金が公的年金等控除や退職所得控除の対象となる

このうち、特にクローズアップされやすいのが、(1)の「掛け金が所得控除の対象となる」です。この点につき、詳しく見ていくことにしましょう。

まず、拠出できる掛け金は、人により異なります。自営業者であれば年間81万6000円です。企業年金がない会社員や、専業主婦(夫)なら年間27万6000円です。

詳しくはiDeCo公式サイトをご覧ください。

所得控除による税制メリットは「掛け金×税率」

最大のポイントは、所得に応じて節税メリットを受けることのできる金額が大きく異なってくるという点です。所得控除により受けられる税制メリットは、「掛け金×税率」だからです。

例えば企業年金がない会社員が満額の年間27万6000円の掛け金を拠出したとしましょう。

この場合、年間の所得金額が1,500万円の方であれば、所得税・住民税合わせて43%の税率なので、およそ27万6000円×43%=118,680円の税額軽減効果があります(復興特別所得税は無視しています。以下同様)。

同様に、年間所得金額が500万円の方であれば、所得税・住民税の合計で税率30%ですから、27万6000円×30%=82,800円の税額軽減効果です。

そして注意しなければならないのが、所得が小さい、もしくはゼロの方です。そもそも所得税・住民税がゼロであれば、そこから差し引くべき税額も存在しません。したがって、例えば専業主婦の方が満額の27万6000円の掛け金を拠出しても、掛け金に対する税制メリットは受けることができません。

節税メリット=利回りではないことに注意

もう1つ注意したいのが、節税メリットをそのまま利回りで表すことによる誤解です。

例えば上のケースで、年間所得金額が500万円の方は、掛け金の30%の税額軽減効果があります。これをもって、「節税効果で年間利回り30%!」とうたっている専門家も数多くいますが、これは明らかな誤りです。

例えば30歳で年額27万6000円の掛け金を30年間拠出すると合計で828万円です。これに対し、年間所得金額を基に算定される税率が30%で30年間変わらないとしたら、掛け金の所得控除による30年間の節税額の合計は828万円×30%=248万4000円です。

つまり、「30年間」で、掛け金合計828万円に対し、その30%の248万4000円の節税効果があるということです。単純に30年で割ると1年当たり1%という計算です。

運用期間が短くなれば年利換算の数値はもっと大きくなりますが、同じ条件の下、10年では3%、20年では1.5%程度です。この点を勘違いしないよう、十分気を付けてください。

なお、iDeCoにより拠出した掛け金は、原則として60歳になるまでは引き出すことができません。くれぐれも、節税メリットを重視するあまり、手元に残すべきお金までも掛け金として拠出しないように注意しましょう。