悪材料を跳ね返す強さ、S&P500は週間で1.43%上昇、5月全体では5.15%高に

先週(5月25日週)の米国株市場は、主要指数がそろって史上最高値を更新する強い展開となりました。S&P500は週間で1.43%上昇し、7,580.06ポイントで取引を終えました。週間ベースでは9週連続の上昇となり、2023年12月以来の長い連騰です。ナスダック100も週間で2.9%上昇し、30333.18ドルと史上最高値を更新しました。

5月全体ではS&P500が5.15%高、ナスダック100が10.5%高となり、特にナスダックは過去2ヶ月で27.8%上昇しました。これは2002年11月以来の大きな2ヶ月上昇率です。ダウ平均も週末には51,032.46ドルまで上昇し、主要3指数がそろって最高値圏で月を終えました。

日々の動きを見ると、マーケットの強さがよく分かります。5月25日(月)は消費者心理の悪化や地政学リスクが意識されながらも、AI関連株が相場を押し上げ、5月26日(火)もイラン情勢の停戦期待を背景に原油価格が落ち着いたことで、主要指数は小幅ながら最高値を更新しました。5月28日(木)には、PCE価格指数の上振れを受けて一時売られる場面もありましたが、引けにかけて買い戻され上昇しました。インフレ懸念、戦争、原油高という悪材料を受けても、株式市場が崩れず、上昇を続けたことは現在の相場の地合いの強さを示しています。

ソフトウェアにも波及するAI相場、一方でインフレ長期化リスクも

先週(5月25日週)の最大のテーマは、引き続きAIです。ただし、今回のAI相場は、エヌビディア[NVDA]や半導体だけではなく、一段広がりを見せ始めています。

重要なのは、AI関連の物色がソフトウェアにも広がり始めたことです。スノーフレイク[SNOW]は好決算を受けて急騰し、S&P500ソフトウェア指数も先週1週間で+8.57と大きく上昇しました。デル・テクノロジーズ[DELL]も好決算に加え、米国防関連の大型契約が材料視されました。AI投資は、GPUや半導体だけでなく、データセンター、クラウド、ソフトウェア、企業向けAI活用へと広がっています。これは、AI相場が単なるテーマ株物色ではなく、実際の設備投資と企業業績に結びつき始めていることを示しています。

一方で、マクロ環境は決して安心一色ではありません。4月のPCE価格指数は前年比3.8%、コアPCEは3.3%となり、FRB(米連邦準備制度理事会)がすぐに利下げへ動ける環境ではありません。エネルギー価格、関税、そしてAIデータセンター投資に伴うコスト上昇が、インフレ圧力を高めています。市場では、インフレが長期化し、FRBが高めの金利を維持するだけでなく、場合によっては利上げを検討せざるを得ないとの見方も出始めています。株式市場は今のところこれを消化していますが、長期金利が再び大きく上昇すれば、短期的な調整材料になる可能性があります。

二極化が進む「K字型」の個人消費と、注視すべき原油・地政学動向

消費についても、強さと弱さが混在しています。消費者信頼感指数は市場予想を上回ったものの、前月からは低下しました。インフレとガソリン価格の上昇が家計の心理を冷やしています。個人消費はなお増加していますが、伸び率は鈍化し、貯蓄率も低下しています。特に中低所得層には、ガソリン価格や生活費上昇の負担が出始めています。

一方で、高所得層や株式保有層は、株高による資産効果もあり、旅行、外食、住宅関連支出などを支えています。今後は、米国消費が一枚岩ではなく、所得階層によって差が広がる「K字型」の様相を強める可能性があります。

地政学面では、イラン情勢が引き続き注目されます。ただし、先週(5月25日週)は和平交渉への期待から原油価格が落ち着き、投資家心理を支えました。市場は戦争そのもののヘッドラインよりも、原油価格と金利がどう反応しているかを重視し始めています。原油価格が落ち着けば、インフレ懸念と消費者負担の両方が和らぎます。一方で、ディーゼルなど一部石油製品の供給不足が残る可能性もあり、完全にリスクが消えたわけではありません。

強気相場のすそ野が拡大、出遅れ感のあったセクターへも資金がシフト

相場の内部構造を見てみると、強気相場の持続性を示す材料も増えています。テクノロジーが依然として相場の中心であることは変わりませんが、出遅れていたセクターにも資金がシフトし始めています。

ヘルスケアではイーライ・リリー[LLY]が新高値を付け、一般消費財、ソフトウェア、小型株にも物色の広がりが見られます。S&P500のイコールウェイト指数も強く、上昇が一部の巨大テックだけに依存しているわけではないことが確認されつつあります。

テクニカル面でも、S&P500の騰落出来高線は新高値を付け、52週高値銘柄数から52週安値銘柄数を差し引いた指標も改善。ナスダック100については、騰落線が新高値を付け、指数の上昇を確認する形となっています。信用市場でもハイイールド債のスプレッドが低下しており、リスクオンの環境が続いています。

今週(6月1日週)の焦点は雇用データ、一時的な調整は「押し目買いの機会」へ

今週(6月1日週)は、ISM製造業景況指数、ADP雇用統計、新規失業保険申請件数、そして米雇用統計が注目されます。市場の焦点は、インフレと雇用の組み合わせです。雇用が強すぎればFRBの利下げ期待は後退し、金利上昇を通じて株式市場の重荷になり得ます。一方で、雇用が緩やかに減速する程度であれば、景気後退懸念を高めずに利下げ期待を残す、株式市場にとって望ましい組み合わせになります。

米国株は短期的には上昇ピッチが速く、どこかで値固めが入っても不思議ではありません。しかし、企業業績、AI投資、相場の裾野拡大、信用市場の安定という支柱は崩れていません。

今の相場は、単なる期待先行のバブルではなく、実際の業績成長と投資テーマに支えられた上昇です。したがって、短期的な調整があったとしても、それは強気相場の終わりではなく、2026年後半に向けた押し目買いの機会と捉えるべき局面だと考えています。