160円以上の米ドル高・円安容認せず=日米で利害一致
日本の通貨当局は、2026年に入って最初に米ドル/円が160円に迫った局面で、1月23日に円安けん制の「レートチェック」を実施し、米通貨当局もこれに追随した。その上で、この「レートチェック」に出動した水準を超えて米ドル高・円安が進み160円を超えると、4月30日、日本の当局は米ドル売り・円買いの為替市場介入に動いた(図表1参照)。以上が示すのは、日本の当局による160円以上の円安を容認しない方針だ。
こうした方針の背景には、本来なら円安が収益にプラスになる輸出企業も含めて、「今の円安が良い」という声がほぼ聞かれなくなったという当局の判断があるようだ。その上で、160円程度まで円安を是正することについて、日米協調「レートチェック」が示すように、日米間の利害が一致していることの影響もあっただろう。
根強い円安マインド払しょくに為替水準の調整必要=まずは150円が目標
ただし、円安が長期化する中で、いわゆる「円安マインド」はかなり強くなっている。この根強い円安マインドを変えるためには、円安を止めるだけでは不十分で、例えば米ドル/円の水準を150円程度まで調整するという円安是正が必要ではないかと当局も考えているようだ。
150円程度まで円安を是正するには、日本の単独介入に加え、日銀の利上げなど金融政策面での支援も不可欠な要因の1つだろう。これについて、5月に来日したベッセント米財務長官が強く要請したという見方がある。その影響もあってか、利上げ慎重派と見られる高市総理も6月の日銀利上げに反対しないとの見方もある。
日銀の6月利上げは、当局が描く円安是正戦略にとって必要不可欠の要因と見られている。このためそれが万一にも見送られた場合は、日本の財政規律への懸念も残る中で、円安是正とは逆方向への動きとなる円安、債券安、さらに株安が重なる「日本トリプル安」が起こりかねないリスクもある。
6月の日銀金融政策決定会合は、エビアン・サミット(先進国首脳会議)の日程と重なる。為替政策の実質的な責任者である三村財務官は、高市総理の代理である「シェルパ」の1人でもあるため、通常は本番のサミットにも同行する。ただ今回は日本にとどまり、日銀会合の結果への対応を優先する可能性もありそうだ。
「単独介入+α」必要=円安是正策の選択肢増やす
これまで見てきたように、日本の当局は、160円程度での円安阻止にとどまらず、米ドル/円の水準を変えるという円安是正を目指しているとみられる。その上で、それには日本の単独介入、そして日銀の早期利上げで対応するとして、ただそれでもまだ足りないとの認識があるようだ。では、150円程度までの円安是正を目指すためには、日本の単独介入、日銀6月利上げに追加される「+α」は何か。
1つは、円安阻止で日米の利害が一致していることを受けた、米国による円買い介入、つまり日米協調介入だろう。それ以外に、この局面で為替以外の対応で円安是正に貢献しそうなものとして、原油価格の下落への誘導を目的とした原油先物市場への介入なども、この間取り沙汰されてきた。
原油先物市場への介入は、為替介入と異なり基本的に前例がないだけに新たな準備が必要だが、実はそれが進められている形跡もある。一方で、最近、原油価格が下落していることから、少し前ほど「原油高=円安」の印象は薄れ、その意味では円安是正のための原油先物への介入の必要性は低下しているだろう。それでも原油先物への介入は、円安是正の選択肢を増やすという意味はありそうだ。
円安マインド変化なら円の自律反発に期待
以上のように見ると、2024年までは、ほぼ日本単独の介入だけで円安阻止と円高への反転を目指していたが、今回は日本単独介入以外にそれをもたらす可能性のある選択肢を増やし、その上で円安阻止にとどまらず、円安是正を目指しているということなのではないか。
根強い円安マインドの一方で、日米金利差(米ドル優位・円劣位)は一時期に比べて大きく縮小し、金利差からの円売りの優位性は相対的に低下している(図表2参照)。このため150円程度まで米ドル/円の水準が変わることで円安マインドに変化が生じるなら、その後は自律的な円反発に向かう可能性が出てくることを当局は期待しているようだ。
