先週バリで行われた第13回温暖化会議(COP13)は、かなり紛糾しました。COP3、京都会議から10年目のこの会議では、京都プロトコール(議定書)にサインしていない2つの先進国のうちのひとつ、オーストラリアはサインしましたが、アメリカは引き続きサインしませんでした。それどころか、新たな数値目標の設定に強く抵抗し、COP13の結果は、かなり中途半端と云うか、複雑なものになりました。

日本は省エネルギーに於いては世界の先進国で、対GDPでのエネルギー消費量は、確かアメリカのそれの3分の1程度の筈で、京都会議の議長国(川口順子さんがもみくちゃにされていた映像は、今でも鮮明に憶えています)でもある日本は、本来なら温暖化のテーマでは主役のひとりの筈なのですが、今回はアメリカの主張に賛同して顰蹙を買いました。

しかしこの問題は簡単ではありません。アメリカを温暖化防止の議論から落としてしまっては、地球温暖化を止めることは不可能です。だからアメリカを議論のテーブルに引き留めるために、日本は敢えて変化球を投げたとも考えられます。ノーベル財団が、ゴア米元副大統領に温暖化ファイターとしてノーベル平和賞を与えたのも、似た理由に思えます。敢えてアメリカにそのような石を投げることにより、アメリカの世論、ひいては産業界、政界に影響を与えようと目論んだのでしょう。

アメリカには石炭が未だ未だいっぱいあります。これは原油に較べて遙かに採掘コストが安く、精製も殆ど必要のない安いエネルギーです。しかし温室ガスを多く出します。アメリカの産業界はこの石炭を今のうちにもっと使いたいのでしょう。そしてその先には、ロッキー山脈の下に眠る、大量のオイル・ストーンがあり、その埋蔵量は中東の原油を遙かに超えるとも云われています。ここには世界の覇権争いや、安全保障など、極めて重大な、そして複雑な事情・戦略が見え隠れします。

一方で代替エネルギーの実用化は急速に実現に向かって進んでいますから、場合によっては原油などのエネルギー価格は、将来暴落するかも知れません。だからこそ中東諸国は今のうちに原油を高く売り、更にはそのお金で世界中の会社や実物資産を買い漁り・・・、等々。

とにかく、温暖化とアメリカの周りには、世界の経済や、資本市場、更には軍事的緊張を読み解く、数多くのヒントが転がっています。答えはと云うか真実は見えませんし、そもそも事実はひとつでも、真実は複数あるとも云えるので何とも濛々漠々とした話しですが、これは、現代に於いて、投資家であるか否かなどに一切関わらず、全ての人にとってとても重要な影響を与える事柄です。注意深く観察し、分析していく必要がありますね。