9月相場の振り返り、AIへの期待とインフレ懸念の綱引き

9月の米国株は、企業業績とAIへの期待が相場を支える一方で、原油高とインフレ、追加利上げへの警戒が上値を抑えています。先週(9月14日週)の小幅な下落から今週(9月21日週)前半にはハイテク株主導で反発しましたが、9月23日(水)には再び売りが広がりました。
    
先週(9月14日週)はFRB(米連邦準備制度理事会)が9月16日(水)に政策金利を0.25%引き上げ、誘導目標を年3.75~4.00%としました。エネルギー高が企業の輸送費や原材料費を押し上げる懸念も強まりました。9月18日(金)に持ち直したものの、S&P500種株価指数は週間で0.08%下落。一方、ナスダック100指数は0.94%高、NYSE FANG+指数は1.03%高となりました。指数全体は足踏みしても、AI関連の大型株には資金が向かっていたのです。

今週(9月21日週)前半の反発も、この強弱を映していました。中東情勢を巡る外交進展への期待で原油価格が下がり、米長期金利も低下すると、半導体など成長株に買いが入りました。9月21日(月)のS&P500は1.49%高、22日(火)はほぼ横ばいとなりましたが、ナスダック総合が終値で最高値を更新しました。

インフレ懸念の再燃と利上げ観測の高まり

9月23日(水)には原油高とインフレ懸念が再び前面に出ました。北海ブレント原油先物は約3.9%上昇し、1バレル103.08ドル。FRBのマイケル・バー理事も物価抑制にはさらなる政策調整が必要になる可能性を示しました。CMEのFedWatchでは10月の0.25%利上げ確率が66%超となり、前日の55.4%から上昇。S&P500は0.75%安、ナスダック100は0.85%安で引けました。企業業績の強さと、原油・サービス価格に広がるインフレ圧力の綱引きが、日々の相場を動かしているのです。

AI安全対話と半導体規制の行方を占う米中首脳会談

相場のもう一つの焦点は、米国時間9月24日(木)にニューヨークで予定されるトランプ米大統領と習近平国家主席の会談です。米国はAI開発で中国に勝つことを目指す一方、急速に進歩する技術の危険にも向き合わざるを得なくなっています。

CNBCによると、ベッセント米財務長官は中国側と、国家安全保障に関わる事案も含めた「米中AI対話」の可能性を協議しました。背景には、AIが自律的にネット上で行動する「エージェント」の能力向上があります。同記事は、OpenAIが研究用モデルによるHugging Faceの一部への無許可アクセスを公表し、Anthropicがサイバー攻撃の一部にAIが利用されていることを確認したと伝えています。

こうした事例は、AIによる攻撃が速くなり、人間が封じ込める時間が短くなるとの懸念を強めます。投資家にとっても、AIの能力向上が需要を生むのと同時に、安全対策の費用や規制対応を増やす可能性を示しています。

もっとも、両国の協力には明確な限界があります。両国が事故時の連絡窓口や安全性を測る共通の定義で合意する可能性はあっても、AI開発の速度をそろえて落とす可能性は低いでしょう。

米国はエヌビディア[NVDA]の高性能半導体の対中輸出を制限し、中国は制限の緩和を求めています。米企業のAIモデルの出力を使って中国企業が学習したとする「蒸留」を巡っても、米中の主張は対立します。会談後は、安全対話が始まるかだけでなく、半導体規制に具体的な変更があるかを切り分けて見るべきです。

最先端技術の社会実装を狙う中国の独自AI戦略

ニューヨーク・タイムズ紙によると、中国の狙いは、最先端モデルの開発競争だけではありません。

習近平国家主席はAIを製造業、医療、教育に広げ、ロボットの活用で労働人口の減少に対応しようとしています。政府は資金や計算資源を投じ、企業はオープンソースのモデルで海外の利用者も獲得しています。中国政府は2030年までにAIを活用するツールやエージェントを社会の90%に普及させる目標を掲げていますが、測定方法は明示していません。

米国の半導体規制で出遅れているという中国側の認識を踏まえると、安全対話が実現しても開発の減速には容易に応じないのではないでしょうか。

10月相場の展望、中間選挙年のアノマリーと好業績への期待

10月相場を考える手がかりとして、中間選挙年の季節性があります。

1930年以降の中間選挙年24回の集計では、年初から9月末までのS&P500の上昇確率は50%、平均リターンはマイナス2.1%、中央値はプラス0.5%でした。これに対し、2026年のS&P500は9月21日時点ですでに年初来13.4%高。トランプ米大統領の中間選挙年の相場は、歴史的な平均を大きく上回る健闘を見せています。

9月を越えると、過去には選挙サイクルでもっとも強い時期を迎えてきました。同じ集計では、中間選挙年の10月から翌年7月までの上昇確率は92%、平均リターンは18.2%、中央値は21.5%。中間選挙年の第4四半期だけでも、上昇確率83%、平均5.6%、中央値7.2%です。

本来は一時的な調整があってもおかしくない9月も、2026年の相場は底堅く推移してきました。イランを巡る紛争は終わっておらず、原油価格や金利の変動が日々の株価を揺らすでしょう。僕の基本シナリオは、10月前半は値動きが荒くても、後半は企業決算が市場の高い期待に応えれば持ち直す、というものです。第3四半期のS&P500企業利益は、現時点で前年同期比24%増が予想されています。これまで事前予想を上回る結果をだしてきています。原油、金利、米中のAI政策に目を配りながら、利益の伸びが株価を支えられるかを見極めたいと思います。

2026年のマーケットは、企業業績というファンダメンタルズに支えられた上昇を見極めながら「Stay Invested」、投資を続ける姿勢が大切だと考えています。原油価格、インフレ、追加利上げという懸念があるものの、堅調な業績の伸びが続く限り、米国株は2026年末に向け、上昇を継続することは可能だと考えています。