今後の注目点は利上げの有無だけではなく、金利上昇を吸収できるほど景気と企業利益が伸びるか
先週(9月7日週)の米国株市場は、原油価格と米長期金利の上昇が重荷となり、主要株価指数がそろって下落しました。S&P500種株価指数は週間で0.8%安、ナスダック100指数は0.59%安でした。下落相場ではありましたが、ナスダック100の下げは相対的に小さく、テクノロジー株の底堅さが目立ちました。
市場を動かした最大の要因は、企業のファンダメンタルズではなくマクロ環境でした。中東情勢の長期化懸念から原油価格は1バレル=100ドルを上回り、米10年国債利回りは一時5%に迫りました。8月のPPI(生産者物価指数)とCPI(消費者物価指数)も市場予想より強かったため、市場はFRB(米連邦準備制度理事会)が次回会合で利上げに踏み切る確率を9割近くまで織り込みました。
それでも9月11日(金)の株式市場は反発しました。政策の方向性が明確になるとの安心感に加え、企業利益と景気の底堅さが改めて評価されたためです。過去7回の利上げ開始局面では、1年後に株価が上昇したケースが5回ありました。重要なのは利上げの有無だけではなく、金利上昇を吸収できるほど景気と企業利益が伸びるかどうかです。
原油1バレル100ドル超え、米10年債利回りが5%に迫るなか、米国株市場は耐久力を示す
原油高は、ガソリンや軽油だけでなく、輸送費、原材料費、化学製品など幅広い価格を押し上げます。家計の可処分所得を減らす一方、企業のコストを増やすため、消費と利益率の双方を圧迫しかねません。しかも8月の物価統計には、9月に入ってからの原油高が十分に反映されていません。原油高が長引けば、今後の物価指標や企業業績予想に下方圧力がかかる可能性があります。
もう1つの焦点は、米10年国債利回りです。利回りが5%を超える水準で定着すれば、「価格変動リスクのある株式よりも、約5%の利回りを得られる国債の方が魅力的だ」と考える投資家が増え、株式から国債へ資金が移る可能性があります。
一方、債券投資家にとって、利回り上昇は悪材料だけではありません。約5%の高い利息収入が得られるため、その後に債券価格が下落しても、受取利息によって損失の一部を吸収できるからです。
もっとも、国債の魅力が高まったからといって、直ちに株式の魅力が失われるわけではありません。株式が約5%の国債利回りに対抗するには、それを上回る業績の伸びが求められます。その点で、現在の米国企業の業績は依然として力強く、株価の重要な下支えとなっています。
S&P500は、8月13日に付けた史上最高値7,798.99から、わずか1.8%しか下落していません。原油価格が1バレル100ドルを超え、米10年国債利回りが5%に迫るという二重の逆風に直面しながらも、大幅な調整に至っていないこと自体が、現在の米国株市場の耐久力を示しています。
インフレと金利が逆風のなか、景気後退よりも名目成長と利益拡大が強い
2026年5月末時点で395.10ドルだったS&P500の2027年ボトムアップ予想EPS(1株当たり利益)は、9月4日時点で420.24ドルまで上方修正されました。営業利益率も同期間に20.2%から21.3%へ上昇し、過去最高水準に達しています。
さらに、S&P400とS&P600の業績予想もそろって過去最高を更新しました。業績拡大が一部の巨大テクノロジー企業だけに依存せず、幅広い企業へ波及していることは、現在の相場を支える重要な強気材料です。S&P500の業績予想が上方修正される一方、予想PERは低下しています。企業業績の伸びが株価の上昇率を上回っているため、株価が上昇するなかでも、バリュエーション面での割高感はむしろ和らいでいます。
景気面でも、アトランタ連銀のGDPNowは第3四半期の実質GDP成長率を年率4.4%と推計しています。インフレと金利は逆風ですが、現時点では景気後退よりも名目成長と利益拡大の力が勝っています。
セクター別では、原油高の恩恵を受けるエネルギー株に追い風が吹く一方、短期借入比率が高い企業や、燃料・原材料コストを価格転嫁しにくい輸送、消費、化学関連には注意が必要です。大型テクノロジー株は金利上昇に弱い面があるものの、高い利益成長力が評価され、指数全体より底堅く推移しました。
アップル[AAPL]、折りたたみ式iPhone「Duo」が成長率を押し上げる新たな原動力となるか
先週(9月7日週)は、アップル[AAPL]が恒例の新製品発表会で、折りたたみ式iPhone「Duo」を発表し、株価は上昇しました。サムスンとグーグル(アルファベット[GOOGL])は、すでに約5年前から折りたたみ式スマートフォンを販売しています。しかし、その販売台数は、いまだにスマートフォン市場全体の約2%にとどまっています。価格が約2,000ドルと高額であるうえ、画面中央の折り目が目立つなど、製品としての完成度が十分ではないと受け止められてきたことが背景にあります。
これに対してDuoは、従来の折りたたみ式スマートフォンよりも完成度の高い製品として評価されています。画面の折り目がほとんど見えず、驚くほど薄いことが大きな特徴です。折りたたんだ状態ではPro Maxより約15%幅が広いものの、開いたときの画面サイズは約50%大きくなります。
価格は約2,000ドルと高額ですが、その完成度を評価する声が相次いでいます。2027年のiPhone売上高に占めるDuoの比率を、従来予想の約5%から約10%へ引き上げる見方も出ています。成熟市場とみられてきたスマートフォン市場において、Duoが新たな買い替え需要を創出し、アップルの成長率を押し上げる新たな原動力となるのかが注目されます。
今週の(9月14日週)は金融政策および原油価格動向を注視
今週(9月14日週)の最大の注目点は、FRBの金融政策です。市場は利上げをほぼ織り込んでいるため、実際に利上げが実施された場合には、声明や記者会見を通じて、追加利上げの可能性がどの程度示されるかが焦点となります。反対に利上げが見送られれば、市場の想定が大きく修正され、株式・債券市場のボラティリティが急上昇する可能性があります。
また、原油価格が1バレル=100ドル台で高止まりするのか、米国10年債利回りが5%を超えて定着するのかも重要です。いずれもインフレや金融政策への見方を通じて、株価のバリュエーションと企業業績の見通しを左右する要因となります。
もちろん、歴史が必ず繰り返されるわけではありませんが、ここから月末にかけては、米国株が歴史的に弱含みやすい時期に入ることを知っておいた方がよいでしょう。1928~2025年のデータによると、9月後半のS&P500の平均騰落率はマイナス0.91%で、下落した割合は55%でした。各月を前半と後半に分けた年間24区分の中でも、9月後半は最も弱い期間となっています。
