10月を迎えると2026年も残すところ3ヶ月となります。年末、そして年度末に向けた株式相場を考えるうえで大きなイベントの1つが、11月3日に行われる米国の中間選挙です。株式市場では、米国の中間選挙と株価の間に一定の関係があることが知られており、「中間選挙後のアノマリー」として注目されています。
そこで今回は、過去のデータを使って、この中間選挙後のアノマリーを検証します。中間選挙後から年末、さらに翌年3月末まで、株価は実際にどのように動いてきたのでしょうか。
結論を先にお伝えすると、過去には中間選挙後に株価が上昇しやすい傾向が確認できます。ただし、詳しく調べてみると、今回の相場を考えるうえで注意しておきたいポイントも見えてきました。今回はその点も含めて紹介していきます。
米大統領選挙、中間選挙サイクル別に見た10月の日本株相場
まずは、大統領選挙サイクルを「大統領選挙の年」「大統領選挙の次の年」「中間選挙の年」「中間選挙の次の年」の4つに分類したうえで、それぞれの年の日経平均株価の月別騰落率を確認しました。第2次世界大戦後、東京証券取引所で株式売買が再開された1949年5月以降のデータを用い、1949年6月から2025年までの各月の騰落率を算出し、大統領選挙サイクルごとに平均したものが図表1です。
今回は中間選挙後の株価動向がテーマのため、中間選挙が行われる11月から年末、さらに翌年の年度末にあたる3月までを見ています。また、中間選挙を迎える前の株価動向も確認するため、選挙直前の10月も対象に加えました。
まず目につくのが、中間選挙の年の10月は株価がさえないことです。中間選挙年の10月の日経平均の平均騰落率は+0.20%にとどまっています。また、大統領選挙の年も-0.40%となっており、選挙を控えた10月は株価が上昇しにくい傾向がみられます。
こうした背景には、投資家の「選挙結果を見極めたい」という姿勢が強まりやすいことがあります。選挙結果によって、その後の政権運営や経済政策の方向性が変わる可能性があるため、選挙を目前にした時期には積極的な買いが手控えられ、株価が上昇しにくくなることが考えられます。
米中間選挙後から年度末にかけて日経平均株価上昇が鮮明に
そこで次に、中間選挙が行われる11月以降、日経平均株価が平均的にどのように推移してきたのかを分かりやすくするため、11月から翌年3月までの月別平均騰落率を累積しました(図表2)。
米国の中間選挙は11月の第1月曜日の次の火曜日に行われるため、11月は月の早い段階で選挙という大きなイベントを通過することになります。
図表2を見ると、中間選挙の年は選挙後から年度末にかけて日経平均株価が大きく上昇してきたことが分かります。中間選挙年の日経平均は、11月の平均騰落率が+2.92%となりました。12月までの累積平均騰落率は+3.01%とほぼ横ばいですが、翌年に入ると上昇が加速します。1月には+5.60%、2月には+8.24%、そして年度末の3月には+9.79%まで上昇しています。
他の大統領選挙サイクルと比べても、中間選挙の年は特徴的です。11月から翌年3月までの累積平均騰落率は、大統領選挙の年が+7.98%、大統領選挙の次の年が+1.96%、中間選挙の次の年が+5.10%だったのに対し、中間選挙の年は+9.79%と最も高くなりました。
つまり過去の平均を見る限り、中間選挙を通過した後から翌年3月にかけて日経平均株価が上昇しやすい「中間選挙後のアノマリー」が確認できます。
その背景の1つとして考えられるのが、選挙を通過することによる政治的不透明感の後退です。中間選挙では、現職大統領の所属政党が議席を減らすケースが多く、選挙前にはその後の政権運営や政策への警戒が高まりやすくなります。こうした懸念が選挙前の日経平均株価にある程度織り込まれる一方、選挙が終われば結果が確定し、不透明感が後退します。こうした選挙前の警戒から、選挙通過後の安心感への変化も、中間選挙後に日経平均株価が上昇しやすい背景の1つと考えられます。
米国株でも鮮明な「中間選挙後の株高アノマリー」
ここまで日経平均株価について見てきましたが、そもそも中間選挙は米国の政治イベントです。そこで、米国株についても同じような傾向がみられるのかを確認してみましょう。
図表3は、NYダウについて、大統領選挙サイクル別に11月から翌年3月までの月別平均騰落率を累積したものです。分析期間は、第一次世界大戦によるニューヨーク証券取引所の長期閉鎖が終了した後、通年で株価データを取得できる1915年から2025年までとしました。
結果を見ると、米国株でも中間選挙後の株高傾向が非常に鮮明です。中間選挙の年のNYダウは、11月に平均+2.07%上昇しました。その後も上昇基調が続き、12月までの累積平均騰落率は+2.89%、翌年1月には+5.61%、2月には+7.56%、そして3月には+8.74%まで上昇しています。
他の大統領選挙サイクルと比べても、その強さは際立っています。翌年3月までの累積平均騰落率は、大統領選挙の年が+2.82%、大統領選挙の次の年が+2.52%、中間選挙の次の年が+1.78%だったのに対し、中間選挙の年は+8.74%となりました。
そして興味深いのは、先ほど見た日経平均とNYダウがよく似た動きをしていることです。日経平均は中間選挙年の11月から翌年3月までの累積平均騰落率が+9.79%、NYダウも+8.74%となりました。ともに中間選挙後から上昇基調が強まり、翌年3月にかけて上昇幅を拡大しています。
つまり、日経平均で確認された「中間選挙後のアノマリー」は、日本固有の季節性というよりも、中間選挙後の米国株の上昇と連動する形で、日本株にも表れてきた可能性が考えられます。
「現職政権が敗北」すると日経平均の株高アノマリーに変化
ここまでは、日米ともに、中間選挙後から翌年3月にかけて株価が上昇しやすい傾向があることを確認しました。しかし、中間選挙の結果によって分けてみると、留意すべき傾向がみられます。
そこで、中間選挙を現職大統領の所属政党の「勝ち負け」によって、さらに分類してみました。
そもそも中間選挙では、現職大統領の所属政党が下院の議席を減らすケースが圧倒的に多くなっています。1934年から2022年までに行われた23回の中間選挙のうち、現職大統領の所属政党が下院の議席を増やしたのは、1934年、1998年、2002年のわずか3回です。残る20回では議席を減らしています。
このため、単に「議席を減らした」ことを現職政権の敗北とすると、ほとんどの中間選挙が「敗北」に分類されてしまいます。そこで本稿では、より明確に選挙結果を分類するため、「中間選挙の結果、現職大統領の所属政党が、それまで保持していた下院の多数派を失ったケース」を「現職政権が敗北」と定義しました。この定義に基づいて、中間選挙を「現職政権が敗北」と「それ以外」に分け、その後の日経平均株価の動きを比較したものが図表4です。
結果を見ると、両者には大きな違いがみられます。現職政権が敗北したケースでは、11月から12月末までの日経平均の累積平均騰落率は+1.60%にとどまりました。さらに翌年に入ると、1月にいったん上昇するものの、その後は伸び悩み、翌年3月末までの累積平均騰落率は+0.29%となっています。
一方、「それ以外」のケースでは、中間選挙後から株価の上昇が続き、翌年3月にかけて上昇幅が大きく拡大しています。
共和党が多数派を維持できるかどうか、要注目
ここまで見てきたように、過去の平均では、日米ともに中間選挙後に株価が上昇しやすいという「中間選挙後の株高アノマリー」が確認できます。しかし、現職大統領の所属政党が下院の多数派を失った場合には、日経平均においてはその後の株価上昇はかなり限定的になる傾向がみられます。
足元では、トランプ米大統領の支持率が低水準にあることなどから、中間選挙に向けた共和党の選挙戦には不透明感があります。9月に実施されたReuters/Ipsosの世論調査では、トランプ米大統領の支持率は32%まで低下しています。過去のデータからは、中間選挙後から翌年3月の年度末にかけて株価が上昇しやすいという「中間選挙後の株高アノマリー」が確認でき、今回も年末から年度末に向けた株価の支援材料として注目されます。
ただし、中間選挙で現職大統領の所属政党が下院の多数派を失ったケースでは、その後の日経平均株価の上昇が限定的だったことには留意が必要です。したがって、今回の中間選挙後の株高の程度を考えるうえでは、選挙を通過することだけでなく、共和党が下院の多数派を維持するのか、それとも失うのかも重要なポイントとなりそうです。
