8月相場の振り返り、3つの要因が支えた堅調な相場

8月の米国株市場は、非常に堅調でした。月間ではS&P500が2.6%、ナスダック100が4.2%上昇し、FANG+指数は8.6%上昇しました。なかでも、大型テクノロジー株の強さが際立ちました。

市場を支えた要因は、大きく3つあります。

第1は、企業業績です。第2四半期決算は事前予想を大幅に上回り、企業の収益力が改めて確認されました。

第2は、良好な需給環境です。ETFへの資金流入は、年間ベースで過去最高をうかがうペースが続いています。また、企業が承認した自社株買いの金額も、8月までの累計で過去最大となる1兆ドルを超えました。

第3は、市場内部の健全なローテーションです。半導体株が一時的に調整しても、資金は市場の外へ流出せず、それまで売られていたソフトウェア株などへ移りました。利益確定売りを、上昇に乗り遅れていた投資家の買いが吸収する形となり、この資金循環が市場全体の底堅さにつながったと見ています。

こうした8月の強さを踏まえたうえで、ここからは9月相場をどう見るべきかを考えます。

米国株が弱含む9月をどう見るか?

結論から言えば、現在の金利上昇には注意が必要ですが、現時点で米国株式市場を過度に悲観する必要はないとみています。

確かに、米国株には「9月は弱含みやすい」という季節性があります。しかし、相場を判断するうえで本当に重要なのは、季節性だけではありません。現在の株価トレンド、企業業績、金利、投資家の資金フロー、企業の自社株買い、そして地政学リスクを総合して見る必要があります。

1928年以降、9月のS&P500は約53%の確率で下落し、平均騰落率は約マイナス1.2%です。年間を通じて、9月は歴史的に最も弱い月です。

ただし、これはあくまで長期平均であり、2026年も必ず下落するという意味ではありません。より重要なのは、9月初めの時点でS&P500が200日移動平均線を上回っているか、下回っているかです。過去のデータでは、この位置関係によって9月の値動きが大きく異なります。2026年は200日移動平均線を上回った状態で9月を迎えています。したがって、相場の基調は崩れておらず、典型的な「弱い9月」とは前提条件が異なります。

時期として特に注意したいのは9月後半です。この2週間は、過去のデータで下落確率が約54%と、年間で最も上昇しにくい時期とされています。短期的な値動きには慎重さが必要です。

金利上昇は本当に「経済のブレーキ」になるのか?

世界的に債券利回りが上昇しています。背景にあるのは、巨額の財政赤字、膨張する政府債務、政府の利払い費増加への懸念です。加えて、原油価格の高止まりがインフレ圧力となり、主要中央銀行が金融引き締めを続けるとの見方につながっています。

もっとも、現在の金利水準が、直ちに投資や経済活動を大きく阻害するほど高いとは考えていません。金利は世界金融危機以前の水準へ戻っていますが、これは危機後の異例な低金利から正常化している側面もあります。

米国では、第2四半期の名目GDPが前年同期比6.6%増、第2四半期の企業業績も二桁成長です。これに対し、米10年国債利回りは直近4.80%です。つまり、現段階では名目成長率と企業利益の伸びが、金利水準を吸収できる余地があります。

仮に10年債利回りが5%を超えれば、利回りを求める投資家の需要が入りやすくなるとみています。また、市場が不安定化した場合、米財務省が満期1年以内の財務省短期証券、いわゆるTビルの発行を増やし、その資金を活用して長期国債を買い戻すなど、市場安定化策を講じる可能性もあります。

相場最大の支えは「企業業績」とAI需要の底堅さ

相場の最大の支えは、企業業績です。第2四半期のS&P 500企業利益は、事前予想の前年同期比23.2%増を大きく上回り、最終的には33.5%増に達する見通しです。企業の収益力が、投資家の想定以上に力強いことが確認されました。

その象徴が、エヌビディア[NVDA]の決算です。売上高をはじめ、主要項目はいずれも市場予想を上回り、申し分のない内容でした。会社側は2027年度について約7割の増収見通しを示しています。さらに、ジェンスン・フアンCEOは、メモリーなどの供給制約が解消すれば、成長余地は一段と大きくなるとの見方を示しました。

今回の決算が市場にもたらした最大の安心材料は、AI需要が一時的なブームではなく、そう簡単には終わらないと改めて確認できたことです。8月のマーケットを支えてきた企業業績の力強さを、エヌビディアが象徴的に示した決算発表だったと考えています。

10月第2週ごろから本格化する第3四半期決算では、市場は企業利益が前年同期比24%増加すると予想しています。前回の決算と同様に、発表が進むにつれて利益見通しの上方修正が続くかどうかが、年末相場を左右する重要なポイントです。ただし、企業経営陣が事前予想を慎重に設定するなど、投資家の期待値を巧みにコントロールしている点も考慮する必要があります。

ここ数年、S&P500の上昇を押し上げてきた最大の要因は、企業業績というファンダメンタルズです。足元では利益の伸びが株価の上昇率を上回っているため、株価が上昇しても、バリュエーションに極端な割高感は生じていません。

需給面も良好です。個人投資家からの資金流入が続き、企業が承認した自社株買いはすでに1兆ドルを超えています。したがって、業績と資金フローの双方が株価を下支えしていると考えます。

気になる政治リスク、それでも年末相場に期待できる理由

一方で、イランを巡る地政学的な緊張は解消されていません。また、トランプ米大統領が市場の想定外の行動に出れば、株式市場が一時的に不安定化する可能性があります。

したがって、9月は「季節性が弱いから売る』のではなく、金利上昇が企業利益の前提を崩していないか、原油高がインフレを再加速させていないか、政策や地政学の不確実性が投資家心理を悪化させていないかを確認することが重要です。

政治面では、中間選挙を巡る不透明感があります。市場では「民主党が下院、共和党が上院で多数派になる」との見方があります。議会のねじれは短期的にはヘッドラインリスクになりますが、中長期的には政策の急激な変更を抑えるため、必ずしも株式市場に悪いとは限りません。

さらに、12月は歴史的に約7割の確率で上昇しており、年間でも上がりやすい月です。9月に調整があったとしても、企業業績の見通しが崩れなければ、一時的な下げにとどまり、年末に向けて再び業績を評価する展開になる可能性が高いとみています。私は引き続き、2026年末のS&P500について8,000ポイントを目標としています(8月3日付記事「【米国株】S&P500、2026年の年末8,000ポイントへ上方修正。ただし、上昇は一筋縄ではいかないか」 参照)。

現時点でリスクがあるとすれば、それは8,000ポイントに届かないことよりも、むしろ8,000ポイントという目標自体が控えめになる可能性ではないかと考えています。