日経平均は日柄調整が続いています。直近は金利上昇ピッチの加速や中東情勢の混迷が続くとの観測の台頭が株価の更なる重石になってきていると言えるでしょう。前回のコラム「【日本株】相次ぐ自然災害と向き合うために改めて見直したい「防災」への備え。ハード・ソフト両面で活躍が期待される日本企業」で「日柄調整に影響を与えるカタリスト」として挙げた「日米の金利状況」「中間選挙を意識した米国の政策」などは、まさに懸念していたとおり、注目度がにわかに高まってきた印象です。

引き続き、長期成長シナリオと短期調整でしっかりと時間軸を分けた投資戦略で相場に臨むべきとのスタンスを継続したいところです。特に当面は、成長銘柄ながら大きく調整の入った銘柄の物色に多くの時間を割いておきたいと考えます。

税制改正大綱が閣議決定、食料品の消費税が1%へ

今回は「消費減税」をテーマに取り上げてみましょう。10月上旬に招集が予定されている臨時国会において法案が可決すれば、日本の消費税史上初となる消費減税が決定します。2026年1月の衆院総選挙でほとんどの政党が公約として掲げた消費減税ですが、それがついに実現し、2027年4月より食料品の消費税率がこれまでの軽減税率8%から1%へ引き下げられることになります。

消費減税に対しては、代替財源への不安やそれに伴う財政規律の悪化観測、その結果としての金利上昇や円の国際的信認低下といった懸念の声も多く聞かれました。これらは極めて真っ当な懸念ではあるのですが、各政党もそれらを理解したうえで選挙で減税をうたってきたはず。そのうえで有権者が選択したという事実もまた重く、最終的には諸物価高騰対策としての政治的判断ということなのでしょう。

当然、政府・日銀は、この減税が日本版トラスショック(2022年、当時の英首相による安易な減税策が金融危機に発展した英国金融市場の混乱)を招くことのないよう、しっかり舵取りをするという責務を負うことになります。今後の株式市場でも政府・日銀の対応や債券市場の反応は折に触れて大きく注目されるものと予想します。そのうえで、このコラムではそうした財政・金融的視点は横に置き、消費減税が実体経済に及ぼす直接的な影響を整理しておきたいと思います。

「消費減税」は日本経済にどう影響する?限界消費性向とGDP押し上げシナリオ

消費減税はマクロ的には経済活動にプラスと考えられます。今回の消費減税規模はおよそ4.8兆円ですが(給付金の影響を含む)、これまで税金として国・地方によって召し上げられていたこれだけのお金が最終的には消費者の手元に残ることになるためです。ここから幾らかは貯蓄や借金返済に充当されるとしても、追加消費余力が増すことは間違いありません。

例えば限界消費性向(実際に消費に回った割合)として、減税分の40%が追加消費に向けられれば、実質GDPを0.3%程度押し上げる計算になります。2026年の実質GDPは0.8~0.9%の伸びというのが民間機関の予測となっていますから、これは決して小さいインパクトではないと言えるでしょう。

また、消費されずに貯蓄・借金返済に廻ったお金も消費者の心理的余裕につながることは確かでしょう。数年単位で見ればどこかで実消費に向かう可能性は十分あり、やはり景気の押上げ要因になると考えます。

一方で、減税分の景気インパクトはもっと小さいという意見もあります。過去に実施された定額減税や給付金における限界消費性向は2割前後だったという調査結果が出ており、これを参考にすれば、上述の限界消費性向の前提は楽観的過ぎる、というわけです。

実際にどうなるかはわかりませんが、「銀行に知らないうちに精算後の金額がドンと入ってきた」過去のケースと、「(飲食品なので)日々の消費局面で減税が意識される」今回とを比較すると、どうも過去のパターンを当てはめて考えるのには無理があるとも個人的には感じています。そもそも消費減税は史上初です。過去を学ぶのは重要ですが、先入観に縛られることはリスクでもあると考えます。

「年4万円のゆとり」が家計にもたらす変化

より具体的にイメージしてみましょう。総務省調査によると、日本における全世帯の月当たり平均食費は約6.7万円です(2023年)。これには軽減対象とならない外食費が含まれていますので、2人以上世帯の月当たり平均外食費約1.6万円を差し引いた5.1万円というのがおよその食料品・飲料の消費額と考えることができます。軽減税率が1%に引き下げられると、単純計算でざっくり3,300円(≒年4万円)の支出減という計算が可能です。月単位では減税メリットをさほどは感じない規模ですが、年間4万円となるとかなりインパクトがあるという印象にならないでしょうか。

上記試算で用いた限界消費性向40%は、このうち1.6万円が追加消費に向かうという前提でした。さて、読者の皆さんの場合は、どのくらい追加消費に資金を振り向けることになるでしょうか。

追加消費はどこへ向かう?身近なお菓子・スーパー・外食の注目企業

注目は、この追加消費がどこに振り向けられるのか、という点です。まず考えられるのは飲食品への追加消費でしょう。減税効果は年数万円とはいえ、日々の支払い減が少しずつ手許に残るという構造です。おそらく消費者はさほど減税を意識しないため、減税分で一気にまとまった買い物を試みるケースは少ないのではないかと想像します。現実には、「思ったより出費が少なくて済みそう」ということで、ちょっとした嗜好品や少し良い食材を手に取る、あるいはカジュアルな外食に行こうというのが主流になるのではないでしょうか。

すると対象企業群としては、明治ホールディングス(2269)、江崎グリコ(2206)、カルビー(2229)、カンロ(2216)、森永製菓(2201)、湖池屋(2226)、不二家(2211)、亀田製菓(2220)、みのや(386A)といったお菓子関連企業が挙げられます。

さらに、イオン(8267)、神戸物産(3038)、ライフコーポレーション(8194)、ハローズ(2742)、フジ(8278)、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H.)(3222)、ブルーゾーンホールディングス(417A)、JMホールディングス(3539)などの食品スーパー。

そしてすかいらーくホールディングス(3197)、FOOD & LIFE COMPANIES(3563)、日本マクドナルドホールディングス(2702)、サイゼリヤ(7581)、王将フードサービス(9936)、ゼンショーホールディングス(7550)などのカジュアルな外食チェーン店の名前が挙がってきます。

外食は消費減税対象ではないため、減税対象となる中食・内食との価格差の拡大は逆風となります。一方で、消費者が外食に求めるのは価格だけでなく、非日常体験や、そのお店ならではの味でもあるはずです。そうした外食企業には実は追い風になるのではと想像しています。