日経平均は戻り基調から一進一退へと推移してきました。前回のコラム「【日本株】ハイテク産業のビタミン「レアアース」とは?中国依存からの脱却と注目の日本企業」で言及した「まだ慎重」という懸念通りの展開になっている印象です。4~6月期決算の開示も一巡したため、上昇相場への回帰にはまだしばらくの日柄調整が必要とのスタンスを継続したいところです。

ただし、日柄調整に影響を与えるカタリストとして、日米の金利動向や、中間選挙を意識した米国の政策などには注目が必要です。長期的な成長シナリオと短期的な調整を区別し、しっかりと時間軸を分けた投資戦略で相場に臨むべきフェーズにあるとの考えは変わりません。ただし、ニュースの流れを見極める必要があると考えます。

相次ぐ自然災害。「防災」への備えを再認識する

今回は「防災」をテーマに取り上げてみましょう。9月1日は「防災の日」でした。103年前のこの日は、10万人を超える死者・行方不明者を出した関東大震災が発生した日です。防災関連は過去に何度かテーマとして取り上げていますが、防災への備えを再認識する意味も込めて、改めてこのテーマを再訪してみたいと思います。

実際、ここもとは「数十年に一度」とされる大きな災害が増加しているよう感じています。先日発生した「令和8年熊本地震」はその一例でしょう。甚大な損害を招いた「平成28年(2016年)熊本地震」はわずか10年前のことです。その傷が癒えぬ前に「追い打ち」的に起きた地震は、災害の恐ろしさと容赦のなさを雄弁に物語っていると言えるでしょう。

この時に記録した震度7(激震)は気象庁の定める震度階級では最大のものですが、実はこの10年で震度7が観測されたのは5回を数えます(それ以前では、阪神・淡路大震災、東日本大震災があるのみ)。それだけ大きな地震が頻発しているということです。しかも、そのうち3回は熊本で観測されています。

今後も、大規模な被害が予想される南海トラフ地震は時間の問題とみられています。また、凶暴さを増している大雨被害やコロナ禍のような感染症の流行も警戒すべき時代となってきました。2週間ほど前にも千葉で、先日も富山・石川・福井で記録的豪雨が発生しています。被災された方々に衷心からのお見舞いを申し上げます。そして、自然災害への事前・事後の準備はまさに喫緊の課題であると改めて痛感しています。

新設される「防災庁」が担う、司令塔としての役割

そうした中で、防災に関しては大きな進展がありました。防災庁です。2026年7月に防災庁設置法案が国会で可決され、11月には正式に発足する予定となりました。防災庁は災害時の司令塔を担うのはもちろん、復旧・復興時の支援や平時における事前防災においても積極的な役割が期待されています。

より具体的には、災害時に得た教訓や気づき・反省をノウハウに昇華し、自然災害を未然に防ぐことはできないまでも、耐性や復旧力を高めることに注力することが主な役割になるはずです。これらの効果・貢献を直接的に見ることは難しいのですが、時間的にも資金的にも、社会的影響という点でも、人・モノ・カネの効率的な配分が、被害規模の抑制や復興の加速につながるだろうことは想像に難くありません。災害はいつやってくるかわからないものです。防災庁には着手できるところからどんどん対応を進めていただきたいところです。

被害を抑制し、復興を助ける「事前防災」に焦点を当てる

では、防災関連ではどのような企業の活躍が期待できるでしょうか。焦点を当てるべきは事前防災領域でしょう。災害発生時や復旧復興時は、緊急対応や疲弊した被災地経済への影響を考えると、経済合理性は完全に二の次となります。企業の継続的・持続的な活躍期待は、事前防災領域に絞って考えるのが妥当でしょう。

その事前防災は、主として社会インフラに注目したハード領域、事前の備えや動線確保、意識改革などのソフト領域、物資の備蓄や家具転倒防止など家庭や個人の防災準備という「自助」領域に大きく分類できます。とすれば事前防災において、おそらく企業が貢献できる領域は、ハード領域とソフト領域となるはずです。防災庁が司令塔として参画することで、これら領域の事前防災がスムーズに進む体制を整えられるようになると期待します。

ハード領域:インフラ強靭化・電線地中化を支える企業群

ハード領域では、建物の耐震診断の徹底、耐震改修、道路・港湾・橋梁といったネットワークの強靭化、避難所環境の充実などが主な柱となることでしょう。これらは国や地方自治体が主体となって担ってきましたが、ノウハウや知見に地方間で格差が生じていたり、重複や統一性を欠いたアプローチもこれまでは少なくありませんでした。今後は防災庁が司令塔となることでグランドデザインが明確で効率的かつ効果的な施策が迅速に打たれると予想します。

関連銘柄としては、ショーボンドホールディングス(1414)、ライト工業(1926)、前田工繊(7821)、横河ブリッジホールディングス(5911)、東亜建設工業(1885)、若築建設(1888)、五洋建設(1893)、ニチレキ(5011)など、地盤改良などの特殊土木企業やインフラ補修工事企業群がリストアップされてくるでしょう。

電設工事大手の関電工(1942)、きんでん(1944)、中電工(1941)、通信工事大手のエクシオグループ(1951)、コムシスホールディングス(1937)などの電線地中化関連も事前防災という観点では非常に重要と考えます。

ソフト領域:防災DXや高度な情報分析を担う企業群

ソフト領域では、DXの活用が主軸と予想します。災害が一旦発生してしまうと、電力の供給不安や通信網寸断が起きる可能性は大きく、そうした状況への備えには事前にどれだけ綿密に避難・救援動線の確立や復旧復興の最適化シミュレーション、情報伝達システムを準備しておくかがカギとなります。地盤強度や土地の形状、人流などの高度な事前情報分析は必須でしょう。

関連銘柄としては、能美防災(6744)、ウェザーニューズ(4825)、ミライト・ワン(1417)、応用地質(9755)、アジア航測(9233)、ドーン(2303)、建設技術研究所(9621)、構造計画研究所(4748)などの防災DX関連や地質・地形・空間データ関連、警告システム関連企業群が挙げられます。

さらに、復旧復興時にはニシオホールディングス(9699)、カナモト(9678)、ワキタ(8125)などの建機レンタル企業も重要な役割を担うはずです。そして事前防災の最後の領域として、個人ベースで「自助」としての事前準備も併せて行っておくべきでしょう。来てほしくない災害ですが、回避できないこともまた確実なのですから。