先日、日経平均は久々に7万円台を回復しましたが、依然として一進一退の状況にあると受け止めています。政策金利の引上げなど、当面のイベントは無事通過したものの、米国金利の上昇懸念やそれに伴う為替相場の不安定さなどが引き続き相場の重石となる一方、AI・半導体の期待も根強いという印象です。
その中でちょっと気になるのは、金利上昇効果もあり、投機・投資的色彩の濃い資産で一部に市況軟化が散見され始めたことです。これはインフレ沈静化の兆しとも言えますが、対応を間違えれば経済をオーバーキルさせる可能性が出てきたとも言えます。
今後は米国中間選挙も相場に大きな影響を与えるカードとして急浮上してきます。このコラムでは先行き慎重な見方をこれまで提示してきましたが、引続き調整局面が続くと割り切っておきたいところです。
「こどもNISA」の口座受付スタート、対象は投資信託のみ
今回は「親子で学ぶ投資」をテーマに取り上げてみましょう。2026年10月より、17歳以下の子どもを対象とした新しいNISA、「こどもNISA」の口座受付が各証券会社で順次始まりました。「こどもNISA」そのものは2027年1月からのスタートですが、子ども本人の口座開設、さらには親権者等(口座管理者)の証券口座も同一証券会社内に必要となるケースもあるため、口座開設は少し早めの受付になったようです。
「こどもNISA」は通常のNISAと同様、配当やキャピタルゲインが非課税となり、最大600万円が保有限度額となります。ただし、対象は投資信託のみとなり、個別株の購入はできません。
通常のNISAは2026年7月時点でおよそ2800万口座が開設され、その保有残高は2025年末で36.8兆円に上ります。投資信託ではNISAが全体残高の7割を、個別株でも全体残高の4分の1をそれぞれ占めるなど、NISAはまさに市場全体を大きく活性化させた立役者となりました。
「こどもNISA」はこの枠を子どもにも広げ、投資資金の流入加速と同時に、若年から投資を身近に感じてもらう一助となる役目を担うことになります。
投資信託の「その先」へ。個別株投資も視野に入れた親子の会話が投資リテラシーの向上に
しかし、本当に投資を学ぶには、やはり個別株に関する知見の習得が不可欠でしょう。「こどもNISA」の対象となる投資信託の存在意義は、運用をその道の専門家に任せられるという点にあります。専門家が集めた資金を設定条件の範囲内で分散投資し、リスクの最小化、リターンの最大化を狙う責務を負うという仕組みです。これは確かに投資入門者向け金融商品としては効果的ですが、個々の企業の持つダイナミズムがどう企業価値(≒株価)と連動するのか、実感するには至りません。
投資リテラシーの向上には、なぜこの企業の株価は上昇したのか、いつ買うべきでいつ売るべきか、などの自問自答が必要であり、そのためには個別株の注視がいかに重要であるかは論をまたないでしょう。子どもが投資を学ぶきっかけは投資信託で十分と考えますが、より投資に興味をもった子どもならば(「こどもNISA」では購入できませんが)個別株にも投資してみたいと考えることは今後十分にあり得ると予想します。
もちろん、子どもが数多くの上場企業からいくつかの銘柄をピックアップするのは容易ではありません(大人でも難しいのですから)。当然、口座管理者となる親権者等の指導の下で、となるはずです。そこで親と子どもでなされる様々な会話こそが、投資リテラシー向上の王道になるのではないでしょうか。
大人が知っておくべき注意点。暦年贈与の活用と親の「NG行動」
なお、暦年贈与の非課税限度額は110万円です。「こどもNISA」の年間限度枠60万円をフルに使っても、理論上はさらに50万円の資金を個別株投資に拠出してもまだ贈与の非課税枠内に収まることになります(NISAのメリットはありませんが)。
「こどもNISA」や上記のような子ども主体の個別株投資においても、建付け上は親権者等が子どもに資金を贈与し、その(子どもが所有している)お金を子どもが自ら運用する形式になります。親は子どもに指導はできますが、投資を決めるのは子ども自身であり、運用後の資金も子ども自身の用途に使われることが前提となるのです。決して親が都合よく解釈し、自身の事実上のNISA枠拡大などに使うことは許されません。くれぐれもご注意ください。
ただし、これはなかなかによく考えられたシステムで、お金を若年層に積極的に移すという側面があります。資金が若い人に回り、それらが消費活性化や教育、投資、ひいてはその次なる世代の子育てなどに積極的に充当されるような仕組みが確立すれば、お金が回ることで経済活性化に繋がり、日本の潜在成長力引上げ効果も期待できます。こうした仕組みは長期的に日本経済の足腰を強くしていくものと言えるでしょう。
お菓子、ゲーム、テーマパーク…子どもが直感的に経済を学べる身近な銘柄群
では、子どもが投資したいと考える個別銘柄はどのようなものでしょうか。当然ながら、子どもにとって身近なものから始めるのがふさわしいと考えます。例えば玩具やゲーム、トレカ、漫画、菓子、家族で出かける食事やテーマパークなどです。
子どもであることを考え、これらの領域で取引単価が30万円以下の企業群をピックアップしてみると、玩具・ゲーム領域ではブシロード(7803)、サンリオ(8136)、スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)などが、漫画・アニメ・エンタメ領域では東映アニメーション(4816)、オリエンタルランド(4661)などが挙げられます。
お菓子・食事関連ではカルビー(2229)、カンロ(2216)、森永製菓(2201)、不二家(2211)、モロゾフ(2217)、壱番屋(7630)などが挙げられます。
投資を通じて、自分の好きなものを扱う企業の商品を消費すると、株主としてもメリットが出てくるというサイクルに気づけば、投資リテラシーにとどまらず、経済はどういうものなのかも直観的に理解できることでしょう。
筆者が教えている大学でも、学生に「損失覚悟でも株主になりたい企業はあるか」と問えば、彼らはやはり子ども時代にお世話になった上記のような企業群を軒並み挙げてきます。子どもは実はしっかりといろいろ見ているのです。「こどもNISA」そのものが相場を牽引するテーマになる可能性は大きくありませんが、こうした企業群には根強いちびっ子ファンによる下支えが期待できるのではないかと考えます。
