先週(8月24日週)の金(ゴールド)相場
米ドル建て金価格は、8月21日の4,603ドルから8月28日に4,455ドルへ下落し、週間では約3.2%安となった。CME金先物も同様に下落し、3週続いた上昇が止まった。週半ばには一時4,700ドル付近と3ヶ月ぶりの高値をつけたが、後半に流れが一変し、そこからの下げは5%を超えた。
一方、円建て金価格は、米ドル円が160円台に乗せる円安となり、2.5%安にとどまった。
(金価格は1トロイオンスあたりの価格、金先物は限月満了により、8月21日は8月限・8月28日は10月限。円建て価格はUSD建て×米ドル/円で算出)
値動きの背景:ウォーシュFRB議長のタカ派講演で金利の読み方が「財政リスク」から「引き締め」へ戻った
先週(8月24日週)の金は、米財務省による国債買い戻し増額を背景に週半ばまで上昇したものの、ジャクソンホール会議を受けてFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ観測が再燃し、週末に急落した。米10年実質金利は2.40%から2.42%へ上昇し、ドル指数は98.80から99.68へ0.9%上昇した。
米財務省による長期国債の買い戻し増額は、公式には国債市場の流動性支援を目的とするが、市場では長期金利を抑える措置とも受け止められた。米金利の低下とドルの低迷が続くなか、200日移動平均線の上抜けを契機としたテクニカルな買いも加わり、金は4,700ドル付近と約3ヶ月ぶりの高値圏まで上昇した。
転機となったのは、7月の米PCE物価指数である。前年比3.7%と市場予想をやや上回り、インフレの高止まりが意識されると、金の上値は重くなった。さらに、ジャクソンホール会議でウォーシュFRB議長がインフレ抑制を最優先する姿勢を示したことで、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げ確率は約35%から約60%へ上昇。米金利と米ドルが反発する中、金は急落して4,500ドルを割り込んだ。
米・イラン情勢も金の明確な支援材料にはならなかった。米国の追加制裁がイラン産原油の供給を直ちに制限しないとの見方から原油は下落したが、米国が直接交渉を否定し、イランもホルムズ海峡の通航制限を続けたため反発した。米金融政策への警戒に原油高によるインフレ懸念が重なり、金は安全資産として買われるより、無利息資産として売られた。
需給面の動き:金ETFに巨額の資金流入、投機筋の買い越しは7ヶ月ぶりの高水準
代表的な金ETFであるSPDRゴールド・シェア[GLD]には週間で約7億ドルの資金が流出した。8月24日は約3.4億ドルの流入で始まったものの、その後は流出が優勢となった。前週までの大規模な流入から一転しており、価格の反落と資金の引き揚げが同時に進んだ。
一方、CFTCが8月28日に公表した8月25日時点のデータでは、CME金先物の投機筋(Non-Commercial)のロングは277,159枚、ショートは33,825枚であり、差し引き24.3万枚の買い越しとなった。前週からロングが20,257枚増える一方でショートは888枚減り、ネットの買い越しは2.1万枚拡大となった。
8月19日以降の急上昇に伴って投機筋の追随が確認された。一方、8月28日の急落局面では、それまでに積み上がっていたロングポジションの清算が下げ幅を拡大させた可能性がある。
今週(8月31日週)の注目ポイント
今週の焦点は、9月4日に発表される8月の米雇用統計である。雇用者数や賃金の伸びが市場予想を上回り、前月の雇用減少が一時的だったと確認されれば、ウォーシュFRB議長のタカ派姿勢が裏付けられ、金利とドルの上昇が金を圧迫する。反対に雇用の弱さが続けば、利上げ観測の巻き戻しから金は反発しやすい。雇用統計に先立つウォラーFRB理事の発言が、議長の姿勢を追認するかにも注目したい。
また、米国で8月31日から9月1日に開催されるG20では、ベッセント財務長官ら各国財務相・中央銀行総裁の発言も相場材料となる。世界経済の不均衡や債務問題が議題となるなか、米財政への懸念が長期金利の上昇として表れれば金の重しとなる一方、米ドルへの信認低下に波及すれば金買いを促す可能性がある。
米国はこの場で、イランとの経済関係縮小と二次制裁への協力も各国に迫る構えである。制裁対象は金を含む複数分野に広がり、イランも制裁に協力する近隣国を敵対国とみなすと警告している。各国が米国に同調すればホルムズ海峡を巡る緊張が強まり、金の方向は逃避需要と原油高に伴う金利上昇圧力の綱引きで決まる。
需給面では、急落後の金先物ポジションと金ETFフローを確認したい。手仕舞いが続けば戻りは鈍いが、資金流出が限定されれば押し目買いが下値を支える。
直近の金現物の価格予想レンジとして、上値は4,600ドル、下値は4,300ドルが意識される。
