「水準そのものよりも動き方を重視」=2024年までの為替介入
2022年の円安阻止介入は、9月の145円程度から始まった。これに対して2024年の円安阻止介入の再開は160円だった。以上のように見ると、2022年と2024年では、円安阻止介入の開始水準が全く違っていた。
ただし、これを米ドル/円の過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)からのかい離率で見ると、実は2022年、2024年とも、介入開始時の5年MAかい離率は3割程度とほぼ同じだった(図表1参照)。
2022年、2024年の為替介入を指揮した当時の神田財務官は、介入の判断基準について、「水準そのものよりも動き方を重視する」などと説明していたが、実際に介入開始水準を見ると両者には大きな差があった。ただ、その一方で5年MAかい離率は、両者ともほぼ同じだった。以上のように見ると、「水準そのものよりも動き方を重視する」という判断基準は、5年MAかい離率などが参考になるのではないか。
これまでの介入判断基準で説明できなくなった2026年
2026年の円安阻止介入が最初に行われたのは160円程度で、2024年とほぼ同じ水準とみられた。一方、この5年MAかい離率は15%程度で、2022年、2024年とは大きく異なっていた。以上のように見ると、2026年の為替介入は、それまでの「水準そのものよりも動き方を重視する」という考えでは説明できないものになった可能性が高いのではないか。
5年という長期ではなく、120日というそれより短い期間の移動平均線からのかい離率で見ても、実は2022年、2024年の為替介入には共通点があったのに対し、2026年のそれは明らかに違った(図表2参照)。以上のように見ると、2026年に入ってからの円安阻止介入の判断基準は、2022年、2024年とは変わった可能性が高そうだ。ではそれはなぜで、その目的は何か。
円の信認維持などに円安阻止の目的が変わった可能性
「水準そのものよりも動き方を重視する」という2024年までの円安阻止介入の判断基準についての当時の神田財務官の説明は、円安の「行き過ぎ」が介入の根拠になっていた可能性を示唆した。これに対して、2026年に入ってからは、基本的に160円を大きく超える円安を容認しないとの判断基準に変わったようだ。これは、「行き過ぎた円安」への対応というだけでなく、円の信認維持を重視する方向へ、円安阻止の介入判断基準が変わった可能性を示しているのではないか。
そしてもう1つ。7月末に行われた円買い介入は、2022年、2024年とは異なり1998年以来の日米協調介入となった。これは、2024年までと異なり、足下の円安は米政府も受け入れ難い状況になった可能性を感じさせるだろう。
2024年までの為替介入は日本単独のものだったのに対し、2026年はその点が日米協調介入などに変わった。これは日本経済への悪影響という観点で「行き過ぎ」を重視した円安阻止から、円の信認の維持や日本以外の米国など他国経済への悪影響も考慮する円安阻止の目的そのものが変化していることを示しているのではないか。
