S&P500は週間で+0.93%上昇、ナスダック100は+2.6%上昇

先週(6月15日週)の米国株市場は、地政学リスクへの警戒が和らぐなかで投資家心理が改善し、S&P500指数は週間で+0.93%上昇、ナスダック100は+2.6%上昇しました。

相場をけん引したのは、大型テクノロジー株と半導体株です。さらに、景気敏感株や小型株にも買いが広がり、市場全体としては「慎重さは残るものの、再び前向きなムードが戻った一週間」だったと言えます。

背景にあるのは、米国とイランを巡る緊張緩和への期待です。両国の枠組み合意を受けて原油価格が下落し、原油高によるインフレ再燃への懸念がいったん後退しました。原油価格が落ち着けば、ガソリン価格の上昇圧力も和らぎます。これは消費者心理にも企業業績にもプラスに働きやすく、株式市場に安心感を与えました。

政治的な評価は分かれるものの、株式市場が最も重視しているのは、最終的には企業業績です。地政学リスクが和らぎ、原油価格が落ち着けば、企業利益への下押し圧力も小さくなるとの期待が広がります。

ウォーシュ新体制によるFRBの変化、情報発信は対話型からデータ重視か

一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策を巡る警戒感はまだ残っています。長期金利が4%台半ばで推移する局面では、高い成長期待を織り込んでいる高PER銘柄ほど、短期的に株価が大きく動きやすくなります。この点には注意が必要です。

今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)で注目されたのは、ケビン・ウォーシュ新議長のもとで、FRBの情報発信のスタイルに変化が見え始めていることです。パウエル前議長の時代は、市場との対話を重視し、利上げや利下げの道筋を比較的丁寧に示す傾向がありました。

これに対し、ウォーシュ議長は、先行きの政策をあらかじめ細かく示す「フォワードガイダンス」を控え、インフレや雇用など実際の経済データを見ながら判断する姿勢を強めています。

これは投資家にとって、やや不透明感が増す変化です。今後はFOMCのたびに、市場の受け止め方が大きく揺れる可能性があります。その結果、金利や成長株の値動きが一時的に大きくなる場面もありそうです。

ただし、この変化を「利下げを否定している」と見る必要はありません。むしろ、行き過ぎた利下げ期待をいったん落ち着かせ、インフレがしっかり沈静化するまでは慎重に判断する、という現実的なメッセージと捉えるべきでしょう。

AI相場の第2幕、半導体から「インフラ全体」への広がり

先週(6月15日週)の相場の主役は、引き続きAIと半導体でした。

AI向け投資は、エヌビディア[NVDA]のGPUだけにとどまりません。ブロードコム[AVGO]のカスタム半導体、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]のAIアクセラレーター、マイクロン・テクノロジー[MU]の高性能メモリー、さらに光通信、電力設備、冷却装置などへ広がっています。

つまり、AI相場はすでに「半導体だけの物語」ではありません。いまは「AIデータセンターを支える産業全体の物語」へと広がっています。

ゴールドマン・サックスの予想では、巨大クラウド企業であるハイパースケーラーの設備投資は、2026年に7570億ドル、2027年に9200億ドルへ拡大すると見込まれています。アマゾン・ドットコム[AMZN]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、メタ・プラットフォームズ[META]などがAI向けの計算能力を増強し続ける限り、AIインフラ需要は底堅いと考えられます。

「AIを語れる企業」から「AIで稼げる企業」の選別へ

ここで重要なのは、AIの恩恵がハイパースケーラーや半導体企業だけにとどまらないことです。

現在は、巨大テクノロジー企業がAIインフラを作っている段階です。しかし、次の段階では、一般企業がAIを実際のビジネスに取り入れていく局面に入るでしょう。多くの企業は、まだAI活用の初期段階にあります。今後、AIによって業務効率が上がり、利益率が改善すれば、株式市場の上昇は一部の大型テクノロジー株だけでなく、より幅広い業種へ広がる可能性があります。

これは、今後の米国株を見るうえで非常に重要です。

これまでのAI相場は、エヌビディア[NVDA]や一部の大型テクノロジー株にけん引されてきました。しかし、AIが金融、医療、製造、物流、小売、サービス業などへ広がっていけば、相場の裾野はさらに広がります。AI相場は、「AIを作る企業」から「AIを使って稼ぐ企業」へと主役が広がる段階に入っているのです。

一方で、AI関連株なら何でも買われる局面は、徐々に終わりつつあります。市場がこれから注目するのは、AI投資が実際に売上、利益率、キャッシュフローにどれだけ結びつくかです。

つまり、ここからは「AIを語れる企業」ではなく、「AIで稼げる企業」が選別される局面です。

大型テクノロジー株は、強いキャッシュフロー、圧倒的な競争力、そしてAI投資を継続できる財務余力を持っています。そのため、米国株市場の中心であり続ける可能性は高いと考えられます。

ただし、金利との関係は無視できません。金利低下は成長株に追い風ですが、金利上昇はバリュエーションの高い銘柄にとって調整要因になります。2022年の金利急上昇局面で、成長株が大きく下落したことは、いまも投資家が忘れてはいけない教訓です。

今後の決算では、売上高の伸びだけでなく、AI向け設備投資が将来の収益につながるのか、フリーキャッシュフローを過度に圧迫していないかが重要になります。

AIの普及には、半導体だけでなく、電力、送配電網、冷却設備、通信インフラが不可欠です。したがって、投資家の視線は半導体から周辺インフラへ広がっています。AIの本当の投資機会は、GPUそのものだけでなく、そのGPUを動かすデータセンター、電力、ネットワーク、冷却、メモリー、ソフトウェアまで含めたエコシステム全体にあると考えます。

スペースXの超大型IPOでインデックス投資家が知っておくべきこと

スペースX株価が大きく動きやすい理由

IPO関連では、スペースX[SPCX]への関心が続いています(参照:「億万長者を生んだスペースX IPO――次に株価を動かす4つの材料」

スペースXのIPO価格は135ドル、上場後の高値は225ドル、週末時点では185ドル前後となり、時価総額は約2兆ドルに達しました。上場初週としては非常に力強いデビューであり、株式だけでなくオプション取引にも大きな関心が集まっています。

ただし、流通株比率が小さいため、需給によって株価が大きく動きやすい点には注意が必要です。オプション取引が活発になると、オプションの売り手がヘッジ目的で株式を買う必要が出てくる場合があります。その買いが短期的な株価上昇をさらに加速させることもあります。

これは人気IPOに見られやすい需給要因であり、企業価値そのものとは分けて考える必要があります。

また、今後はロックアップ解除も注目点です。初期株主や従業員が株式を売却できるようになれば、短期的には売り圧力が強まる可能性があります。超大型IPOは投資家心理を明るくする一方で、人気IPOに資金を振り向けるため、既存の成長株やAI関連株の一部を売却する動きが出ることもあります。

スペースXが指数に採用された場合の影響は?

スペースXの指数採用については、ナスダック100やラッセル系指数への採用期待は高い一方、S&P500については、ルール上すぐに採用される可能性は低く、2027年以降の話になるとみられています。

仮にナスダック100に採用されれば、指数連動型の投信やETFから機械的な買い需要が発生しやすくなります。ただし、指数に占める比率が極端に大きくならない限り、インデックス投資家全体への影響は限定的です。

したがって、S&P500やナスダック100に連動する投資信託へ長期投資している投資家は、個別企業のIPOイベントに過度に振り回される必要はありません。

指数投資の本質は、特定企業の短期的な人気に乗ることではなく、米国企業全体の利益成長に長期で参加することです。

今週(6月22日週)の注目ポイント、マイクロン・テクノロジー[MU]決算とAIラリーの持続性

今週(6月22日週)以降の焦点は、金利、原油、米ドル円、そして企業業績です。FRB関係者の発言、インフレ指標、雇用関連指標が、利下げ期待を強めるのか、それとも金利高止まり観測を再び強めるのかを確認する必要があります。

決算発表で特に注目されるのは、マイクロン・テクノロジー[MU]です。発表は、2026年6月24日(水)の米国市場引け後が予定されています。

見るべきポイントは、HBM(高帯域幅メモリー)の需要、DRAM価格、AIデータセンター向けメモリー需要、そして粗利益率の見通しです。

今回のマイクロン決算は、AIラリーの勢いがまだ続いているのかを確認する重要イベントです。半導体株だけでなく、AIインフラ全体への投資家心理にも影響を与える可能性があります。

全体として、米国株市場は地政学リスクの後退を受けてリスクオンの流れを取り戻しつつあります。ただし、金利、原油、企業業績の見極めは引き続き重要です。AIと半導体は相場の中心であり続けていますが、これからは「AIで実際に利益を生み出せる企業」がより厳しく選別される局面に入っていくでしょう。