世界最大級のIPO、まずは理想的な滑り出し
スペースX(スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ・コーポレーション)[SPCX]は6月12日に上場しました。公開価格は135ドル、初値は150ドル。その後も株価は2営業日連続で上昇し、6月17日には一時的に5%下落したものの、終値は191.82ドルとなりました。
公開価格から見ると、わずか数営業日で+42%のリターンです。仮に上場初値の150ドルで買った投資家でも、+28%のリターンを得た計算になります。
今回のスペースXのIPOは、調達規模、時価総額、そして市場の注目度という点で、世界最大級のIPOでした。それだけ大きな案件でありながら、上場後も株価が力強く推移したことを考えると、まずは「大成功のIPO」と言ってよいでしょう。
今回のスペースXのIPOは、まさに現代版の「アメリカン・ドリーム」そのものです。創業者イーロン・マスク氏の個人資産も1.1兆ドルを超えたと言われています。社内では約4,400人の従業員が億万長者になったとされ、夢のある成長企業に早くから参加した人々が大きな果実を手にしたという意味で、今回の上場は単なる資金調達ではなく、米国資本市場のダイナミズムを象徴する出来事だったと言えるでしょう。
また、上場後に投資した投資家にもすでに含み益が出ており、IPOとしては理想的な滑り出しとなっています。では、ここからスペースXの株価はどのように推移していくのでしょうか。
今後、スペースXの株価を動かす4つの材料
今後予定されているアナリストによるリサーチカバレッジ開始、主要インデックスへの採用可能性、既存株主の売却解禁、そしてオプション取引の開始といったイベントを確認しながら、ここからの株価の方向性を考えてみたいと思います。
主要インデックスへの採用可能性
短期的な株価材料として、まず注目すべきは株価指数への採用です。
現時点で想定されている指数採用に伴う買い需要は、6月19日のFTSEラッセルおよびCRSP指数で約50億~90億ドル、6月26日のMSCIで約30億~60億ドル、そして7月6日のNASDAQ100で約150億~200億ドルと見られています。
つまり、7月6日までに合計で約220億~270億ドル規模の機械的な買い需要が発生する可能性があるということです。指数に採用されれば、それに連動する投資信託やETFは、原則としてスペースX株を組み入れる必要があります。これは需給面では大きな追い風になります。
ただし、こうしたイベントは市場で事前に織り込まれやすく、実際に採用された後には「材料出尽くし」として一時的に売られる可能性もあります。なお、S&P500については、現時点で80億~120億ドル程度の買い需要が予想されていますが、これは2027年以降のイベントになる可能性が高いとみています。
アナリストによるリサーチカバレッジ開始
もう一つの材料は、アナリストによるリサーチカバレッジ開始です。通常、IPO後およそ25日で主幹事証券を中心に調査レポートが出始めます。6月12日上場を起点にすれば、7月8日前後にカバレッジ開始が相次ぐ可能性があります。これほど注目度の高い大型IPOでは、初期レポートは比較的前向きな投資判断から始まる可能性があり、目標株価、スターリンク加入者数、宇宙AIデータセンターの潜在市場などが、投資家の評価軸になっていくでしょう。
オプション取引の開始
加えて、火曜日からオプション取引が始まった点は重要です。今後、週次オプションの品ぞろえがそろえば、マーケットメーカー、ヘッジファンド、個人投資家の参加が増え、株価の上昇にも下落にも動きが増幅されやすくなります。
目先、オプション市場で上方向のコールが下方向のプットより高く評価されている点は、投資家が「下落リスク」よりも「上昇を取り逃すリスク」を恐れていることを示します。これは典型的なFOMO(Fear Of Missing Out)相場、「乗り遅れることへの恐怖」相場と言えます。
既存株主の売却スタート
一方で、既存株主の売却スケジュールは逆風になり得ます。
ロックアップ解除とは、社員や初期投資家など、一定期間売却できなかった株主が株を売れるようになることです。今回ロックアップ解除で、夏から秋にかけて売りが増える可能性があるとされています。
スペースXでは、多くの社員や初期投資家が大きな含み益を抱えています。長期の成長性を信じる株主が多い一方、資産分散、納税、生活設計のために一部売却する動きが出ても不思議ではありません。
スペースXへ投資するリスクは大きい、それでも
では、スペースXへの投資のリスクについて考えてみましょう。スペースXの投資リスクは、非常に大きいと見るべきです。それは、同社が挑戦しているのは、これまで誰も商業ベースで成し遂げたことのない、宇宙・通信・AIをつなぐまったく新しいインフラ事業だからです。
第一のリスクとしては、バリュエーションは通常の売上高倍率では説明しにくい水準にあることです。
第二に、スターシップ、スターリンクV3、宇宙AIデータセンター、半導体開発には莫大な資金が必要です。
第三に、宇宙AIデータセンターには、放射線、冷却、保守、軌道上安全性、通信遅延、規制という技術的・制度的課題があります。
第四に、イーロン・マスク氏への依存、テスラやxAIとの関係、各国政府との契約や安全保障上の判断も株価を動かします。
それでも、スペースXは、宇宙輸送、通信、AI、半導体、エネルギーを一つの構想の中でつなげようとしている稀有な企業です。この株に投資するということは、単に来期利益を買うことではなく、10年単位で宇宙インフラの覇者になれるかに賭けることです。
どのような姿勢でスペースXに投資すべきか――壮大なビジョンに長期的に向きあう
では、スペースXに、私たちはどのように投資すべきなのでしょうか。
投資方法としては、最初から大きく買いに行くよりも、時間を分散しながら少しずつ買っていく方が合理的ではないかと思います。人間の習性として、株価が大きく上がった日は、どうしても焦って買いたくなります。「今買わなければ、もう買えなくなるのではないか」と感じてしまうからです。しかし、そこで感情に任せて一気に買うのではなく、少し冷静になることが大切です。
スペースXには今後も、指数採用イベント、アナリストによるリサーチ開始、ロックアップ解除前後の需給、スターシップ試験の結果、規制当局の判断など、株価を動かす材料が連続して出てきます。だからこそ、一度に買うのではなく、複数のタイミングに分けてポジションを作っていく方が、冷静で、結果的にも良い投資判断につながるのではないかと思うのです。
期間としては、3ヶ月から1年程度をかけ、イベントごとに少しずつ買い増していく。そのような姿勢が、スペースXのようなボラティリティが非常に高い(価格の上下の振れ幅が大きい)スーパー成長株には適していると考えています。
先日、アメリカのテレビ番組で興味深いインタビューを見ました。スペースXの上場当日に株主になった米国の個人投資家に対して、記者が「いつ売るつもりですか」と尋ねたのです。すると、その男性は、「自分も持ち続けるが、自分の孫の代にも持たせたい」と答えていました。非常に象徴的な言葉だと思います。
ラスト・フロンティアと呼ばれる宇宙ビジネスは、まさに今、本格的に始まったばかりです。スペースXに投資するということは、「来年の決算が良さそうだから買う」という目先の投資ではありません。スペースXが、そしてイーロン・マスク氏が実現しようとしている壮大なビジョンに、長期で参加するということだと思います。その時間軸は、決して2~3年ではありません。むしろ20年、30年という単位で考えるべきものではないでしょうか。
したがって、スペースXは生活資金やポートフォリオのコア資産として持つ銘柄ではなく、「未来成長枠」として位置づけるのが妥当だと思うのです。短期的な株価の上下に一喜一憂するのではなく、非常に長い視点で投資を検討することが大切だと考えています。
