クラウド市場全体を上回るハイテク大手の成長率

半導体集積回路(チップ)は1958年頃に発明され、ムーアの法則に沿って約2年ごとに性能が2倍になってきた。初期は60個ほどのトランジスタ搭載だったが、現在は数十億個が可能である。スマートフォンが普及したのも、この技術進化によるものだ。

世界は現在、3度目となるAIブームに湧いている。AI技術は1950年代に1つの分野として確立されて以来、流行と衰退の波を繰り返してきた。過去2回のブームの時はコンピューターがソフトウェアを動かすのに十分な性能を持っていなかったが、今では大量のデータと非常に強力なコンピューターによって、AI技術を実現することができるようになった。

アマゾン・ドットコム、アルファベット、マイクロソフトで全体のシェアの6割以上

AIに対する爆発的な需要を背景にクラウドサービスも拡大が続いている。シナジーグループが2025年11月に公開したデータによると、クラウドインフラサービスの売上高は2025年9月末時点で1070億ドル(前年同期比28%増)だった。そのうち、クラウド大手3社のアマゾン・ドットコム(以下アマゾン)[AMZN]、グーグルを傘下に持つアルファベット[GOOGL]、マイクロソフト[MSFT]で全体のシェアの6割以上を占めている。

【図表1】2025年Q3のクラウド市場のシェア
出所:シナジーグループのデータより筆者作成

以下は、クラウド事業を手がけるアマゾン、マイクロソフト、アルファベットが発表した直近のクラウド事業の売上高成長率を比較したものである。マイクロソフトのクラウド事業は前年同期比39%増、アマゾンのAWSは24%増だった。一方、グーグルクラウドの売上高は176億6,400万ドルと(前年同期比48%)一年前に比べて5割近く伸びた。

企業による生成AIプラットフォームや自社開発チップを含むAIインフラへの投資、利用が急増している。2026年1月には、アップル[AAPL]が次世代AIモデルにグーグルのAIモデル「ジェミニ」を基盤として採用すると発表した。グーグルのサンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)によると、ジェミニアプリの月間利用者は7億5000万人を超えたという。

マイクロソフトとグーグルのクラウドサービスは市場全体の伸びを上回るスピードで成長している。アマゾンの成長率が市場全体と同程度であることも含めると、ビッグ3のシェアは引き続き拡大することが想定される。

【図表2】クラウドビッグ3のクラウド事業の売上高の伸び率の推移
出所:各種データより筆者作成

キャッシュフロー・マトリックスから見るビッグテック各社の「収益」と「投資」のバランス

最近、世界の株式市場は主にハイテク株が中心となって調整局面を迎えている。これまでハイテク銘柄が牽引してきた上昇相場も、大きな転換期に差し掛かっている印象だ。この動きは、各企業が2026年の設備投資計画を発表した時期から始まっている。その背景にあるのは、AI関連投資への期待と現実の乖離への不安が、下落要因として挙げられる。

主要4社の2026年の設備投資額は100兆円規模に膨らむ可能性

ビッグテック各社は2026年も莫大な額の設備投資を行う計画だ。2月6日付の日本経済新聞の記事「米巨大IT設備投資、2026年は100兆円規模に 株式市場は過剰投資を懸念」によると、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、マイクロソフトの主要4社の2026年の設備投資額は100兆円規模に膨らむ可能性があるという。

はたして、それに見合うだけの具体的な利益のリターンがあるのか、そして、それは投資家の期待したスピードに追いついているのか、相場が疑心暗鬼になっている。そこで、以前も紹介したキャッシュフロー・マトリックスで3社の「稼ぎ」と「投資」のバランスを確認しておこう。

【図表3】アマゾン・ドットコムのキャッシュフロー・マトリックス
出所:決算資料より筆者作成
【図表4】アルファベットのキャッシュフロー・マトリックス
出所:決算資料より筆者作成
【図表5】マイクロソフトのキャッシュフロー・マトリックス
出所:決算資料より筆者作成

アマゾンについては「投資期」と「安定期」の狭間にある年もあったが、グーグル、マイクロソフトに関してはいずれも「安定期」にあり、儲けの範囲内で投資をおこなっているため、過剰なレバレッジをかけずに投資資金を賄うことができていると推測される。アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは決算発表の電話会見において、クラウド事業のAWSに関して「需要は強く、(新たな設備を)設置し次第、収益化している」と、投資が収益に結び付いていることを強調した。

「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(OBBBA)」法案による税制優遇が背景に

背景にあるのはトランプ政権で可決された「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案(OBBBA)」だ。OBBBAの主な狙いの一つは、米国において有形生産のための国内投資を促進することである。この税制変更で、米国に設備投資を行う多くの企業の税負担軽減が期待される。

設備投資などの対象資産について、投資後すぐに一定割合を即時償却できる「ボーナス減価償却」制度が恒久化することが明記された。2025年1月19日以降に取得、サービスインした対象となる資産について100%即時償却が可能だ。この改正により、企業の設備投資、減価償却戦略には大きな自由度とインセンティブが生まれた。

OBBBA法案で米国の製造拠点や設備投資に対する税制優遇が恒久化されたことで、米国における生産体制の経済合理性は格段に高まった。100%即時償却の適用によるキャッシュフロー改善効果は莫大であり、ハイテク企業が莫大な設備投資計画を明らかにしたことを理由づけるものである。

一方で、税制によって過剰な投資が先行する可能性もある。AI市場が期待通りのペースで拡大しなければ、OBBBAの恩恵を最大化しても、投資過多が重荷に転じるリスクは避けられない。大胆な税制の改正が市場を歪めているかもしれないという現状も念頭に入れておきたい。

石原順の注目5銘柄

アマゾン・ドットコム[AMZN]週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年2月17日時点)
マイクロソフト[MSFT]週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所: マネックス証券ウェブサイト(2026年2月17日時点)
アルファベット[GOOGL]週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所: マネックス証券ウェブサイト(2026年2月17日時点)
メタ・プラットフォームズ[META]週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所: マネックス証券ウェブサイト(2026年2月17日時点)
エヌビディア[NVDA]週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所: マネックス証券ウェブサイト(2026年2月17日時点)