アマゾン・ドットコム[AMZN]が銅の確保に向け、資源大手リオ・ティント[RIO]と提携

英豪資源大手リオ・ティント[RIO]は1月15日、米西部アリゾナ州の鉱山で採掘した銅をアマゾン・ドットコム[AMZN](以下、アマゾン)に供給し、アマゾンがこれをAI(人工知能)データセンターで使用すると発表した。リオ・ティントはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)向けに2年間の供給契約を締結した。

銅は、送配電網、データセンター、電動化インフラに不可欠な基礎金属であり、AI投資やクラウド拡張が続く中、安定調達の重要性が高まっている素材のひとつだ。アマゾンの動きは、AIデータセンターの建設、運営に必要な電力と重要物資の確保に急ぐハイテク企業の最新事例になる。ただし、今回の銅供給は、アマゾンの需要のごく一部を満たすに過ぎないとされている。

ウォール・ストリート・ジャーナルの1月16日付けの記事「アマゾン、アリゾナ州鉱山から銅購入へ AIで需要急増」によると、この鉱山は、リオ・ティントが低品位の銅鉱床を開発する新手法を実証する場として採掘を再開させたという。新しい鉱山の発見から生産までこぎ着けるには、平均で20年以上かかるそうだ。銅需要が急増している中で、古い鉱山に残された低品位鉱石を活用する動きが出てきた。

今回の取り組みには、米国内で採掘された銅を米国内で消費するというサプライチェーンの短縮の狙いもある。これにより、輸送距離の削減や供給途絶リスクの低下が見込まれる。特にアマゾンは、AWSだけではなく、電子商取引分野における物流網の拡張に伴い、電力需要が急増するという課題にも直面している。

今回の取引の一環として、鉱山での銅抽出工程における回収率を最適化し、生産拡大を支援するため、アマゾンはリオ・ティントにクラウドコンピューティングとデータ分析を提供する。IT大手が単なる購入者にとどまらず、資源上流と協調しながら供給安定を同時に追求する時代に入ったことを示している。

2040年までに世界の銅需要は50%増加か?データインフラ構築による前例のない需要に直面

ロイターの1月16日付けの記事「リオ・ティント、アマゾンのAIデータセンターに銅供給へ」によると、AI分野の成長により、2040年までに世界の銅需要は50%増加すると予測されている。S&Pグローバルが先週発表した調査結果によると、銅需要が急増する一方、生産量は減少し、リサイクルや採掘を増やさなければ、供給量は年間1000万トン以上不足するとの見通しだ。需要全体の25%に供給不足が生じることになる。

銅市場は新たな時代を迎えた。かつては建設業や製造業に結びついた循環的な工業製品と捉えられていたが、デジタルインフラの構築と世界的なエネルギー転換に不可欠な戦略的資産として位置づけられるようになった。ハイパースケールデータセンター、AIコンピューティング施設、クラウドインフラの構築により、従来の電化アプリケーションに匹敵するレベルの銅需要が生み出されたのだ。

代替品によって価格が自然に上限に達する多くのコモディティとは異なり、銅は優れた導電性と熱伝導性を持つため、送電、電気自動車用モーター、データセンターの冷却システムといった高性能用途では代替が困難だとされている。

長年にわたる鉱業への投資不足と鉱石品位の低下という課題がある一方で、データインフラ構築による前例のない需要に直面している。供給が消費の加速に追いつかない「銅の崖」は、在庫の極端に少ない状況と地政学的な備蓄によって、構造的な不足という構図を強めている。

サザン・コッパー[SCCO]ほか米国企業5選、銅価格上昇の恩恵を受けられるか? 

米国株式市場に上場している中で、銅を含む鉱山に関連した主な企業は以下が挙げられる。

【図表1】米国株式市場に上場する主要鉱山関連銘柄
出所:各種データより筆者作成

1952年設立のサザン・コッパー[SCCO]は、米国アリゾナ州フェニックスに本社をおく銅鉱山会社で、世界で有数の銅生産企業である。主に銅の採掘、製錬、精製を行い、製造過程で得られるモリブデン、銀、亜鉛などの副産物も取り扱っている。銅鉱山や製錬所は主にペルーとメキシコに展開し、南米、北米の鉱区を中心に事業を進めている。

サザン・コッパーの最大の特徴は、採掘から精製までを自社で一貫して行う統合型ビジネスモデルだ。これにより、採掘から最終製品までのプロセスを自社で最適化することができ、コスト競争力の高さにつながっている。さらに、製造プロセスで得られるモリブデン、銀、亜鉛などの副産物も利益に貢献しており、収益源が分散されていることもポイントだ。

【図表2】サザン・コッパーの売上高と純利益の推移
出所:決算資料より筆者作成

サザン・コッパーの収益は銅価格に大きく依存しているため、銅価格の下落局面では売上や利益が圧迫されるリスクがあるが、直近の銅市場の状況を考慮すれば、フォローの風が吹いていると言えるだろう。一方で、事業拠点がペルーとメキシコに集中しているため、カントリーリスクや政治リスクが業績や株価に影響する可能性もある。 

米ハイテク企業が戦略的サプライチェーンを構築する主役に

米ハイテク企業が鉱山、資源企業と直接提携するケースは冒頭に取り上げたアマゾンだけではない。すでにテスラ[TSLA]は、EV(電気自動車)用電池向け安定確保を目的に、リチウム、ニッケルの長期調達契約を鉱山企業と直接締結してきた。テスラの電池原材料調達戦略は、単なるコスト安定化を超えた戦略的サプライチェーン統合の例と言える。

EV普及が進む中で、リチウムやニッケルといった電池原材料は需給逼迫が常態化し、価格変動や供給途絶が大きな経営リスクとなっている。こうした状況に対し、テスラは鉱山企業と直接、長期調達契約を結ぶことで、一歩踏み込んだ上流への関与を進めてきた。

具体的には、豪州のピルバラ・ミネラルズとリチウム精鉱の長期購入契約を締結した。ピルバラは世界有数のリチウム鉱山を保有しており、テスラは安定的にリチウム原料を確保できる一方、鉱山側も需要家を長期で固定できるメリットがある。同様に、ニッケルについてもブラジルの資源大手ヴァーレ[VALE]と供給契約を締結している。

米ハイテク企業はいまや「素材を市場で買うだけ」の存在ではなく、鉱山開発、精錬、エネルギー電力まで含めた戦略的サプライチェーンを構築する一主体へと変化している。リオ・ティントとアマゾンの事例はその象徴のひとつであり、今後は長期購入契約、共同投資等が一段と増える可能性が高いだろう。

石原順の注目5銘柄

アマゾン・ドットコム[AMZN]
出所:トレードステーション
テスラ[TSLA]
出所:トレードステーション
リオ・ティント[RIO]
出所:トレードステーション
サザン・コッパー[SCCO]
出所:トレードステーション
フリーポートマクモラン[FCX]
出所:トレードステーション