2026年2月9日(木)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2025年12月分速報

【1】結果:実質賃金はマイナス幅が大幅に縮小も前年同月比0.1%と12ヶ月連続でマイナス

2025年12月の名目賃金は、前年同月比2.4%増と前回11月(改定値)から0.7%ポイント伸び、伸びが加速しました。同3.2%を見込んでいた市場予想には届かなかったものの、基本給にあたる所定内給与や特別給与が持ち直し、2%半ばの伸びとなりました。所定内給与も同2.2%増と前月(改定値)から0.3%ポイント伸びが加速し、サンプル替えの影響を除いた、共通事業所ベースの所定内給与は同2.1%増と概ね横ばい圏での推移となっています(図表1)。

【図表1】毎月勤労統計調査2025年12月速報値結果
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、所定内給与は事業規模5人以上、調査産業計

名目賃金が再び2%台に浮上したことに加え、物価の減速から実質賃金は前年同月比0.1%減とマイナス幅を大きく縮小しました。また、ヘッドラインの消費者物価指数(総合指数)にて試算された実質賃金は同0.3%増とプラス転換となりました。従来の実質賃金を試算する際に用いられる消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合指数)は同2.4%上昇と11月から0.9%ポイント伸びが鈍化しました。一方、12ヶ月連続でのマイナスとなり2025年は年間を通して実質賃金が伸び悩みました(図表2)。

【図表2】実質賃金の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合)はマイナス表示

【2】内容・注目点:先行きで物価は減速基調が続く見通し

実質賃金は物価の減速もあり、プラス圏をうかがう水準となりました。名目賃金は、ボーナスや一時金といった特別給与が加算された指標であり、家計の日々の収支には基本給である所定内給与が実質ベースで増加していくことが重要でしょう。実際に、その実質所定内給与も、プラス圏をうかがう水準までマイナス幅が縮小しています(図表3)。

先行きでも物価は一時期よりは減速して推移する見込みであり、折しも衆議院選挙で大勝した高市内閣にとって、追い風となる実質賃金のプラス転換が目前と言えます。

【図表3】所定内給与の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、調査産業計、実質所定内給与は消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合指数)にて算出

実際に先行きでは物価の減速基調は続き、実質賃金の押し上げに寄与していくと考えています。1つには物価高の主要因であった食品価格は既にピークアウトの傾向が見られることです。また、足元で為替の円安推移を原因とした輸入物価の上昇が懸念されていますが、グローバルな原油安基調がそれを相殺することで輸入物価も低位での推移が想定されるためです(図表4、5)。

そして、夏ごろにかけては春闘の賃上げが賃金指標に表れると想定され、ここまでのところ2025年度と同程度の賃上げが見込まれることから、この点も実質賃金プラスに寄与するものと考えられます。

【図表4】消費者物価指数、食料品関連指標の推移(前年同月比、%)
出所:総務所よりマネックス証券作成
【図表5】原油価格と円ベース輸入物価指数の推移(前年同月比、%)
出所:日本銀行、ブルームバーグよりマネックス証券作成

【3】所感:実質賃金プラスにより消費主体の経済に期待

上述の理由で、筆者は実質賃金のプラス転換が春ごろからみられるのではと考えています。物価の減速は変動性の高い食品やエネルギーが主因であることから、ある程度ブレる可能性は高いものの全体的な基調は、物価の減速と賃金の底堅い上昇がベースシナリオと言えるでしょう。ここ数年は名目ベースでの成長や株高を享受できたものと言えます。

一方で実質賃金がマイナスであったことからわかるように、マクロレベルでの実質雇用者報酬はコロナ以前の水準を下回っているのが実情であり、消費主体の経済を目指すうえでは、物価対比でプラスとなる収入の伸びが必要でしょう(図表6)。マクロ環境としても実質賃金プラスが目前であり、選挙を経て政権基盤の安定化が図られた今、賃金と消費がけん引する日本経済への移行が期待されます。

【図表6】実質雇用者報酬の推移(季節調整値)
出所:内閣府よりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太