2024年まで円防衛の「最後の砦」となってきた円買い介入

2022年以降150円を超えて急拡大した米ドル高・円安を終わらせる役割を担ってきたのは日本の通貨当局による米ドル売り・円買い介入だった(図表1参照)。2022年10月の151円、2024年7月の161円という米ドル高・円安のピークは、ともに米ドル売り・円買い介入をきっかけに刻まれたものだった。

【図表1】米ドル/円と為替介入(2022年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

その意味では、為替介入はこれまで円防衛の「最後の砦」との位置づけになってきた。ではそれは今回も変わらず、日本の通貨当局が米ドル売り・円買い介入に動けば円安は止まるだろうか。

2024年までの円安と大きく異なる投機筋の関わり方

今回の円安が、為替介入をきっかけに一段落した2024年までの円安と大きく異なるのは投機筋の関わり方だ。ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、2024年までの円安は、投機筋の円売りが急拡大する中で起こったものだったのに対し、今回は全くそうではなかった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

短期売買を行う投機筋の円売り主導の円安の場合、当局の円買い介入によって1日で5円程度と大きく円高に戻すことができれば、大きく円売りリスクをとっていた投機筋が損失拡大を回避するために円買い戻しに転換することで円安を止めることができた。

これに対して今回の場合、円買い介入で一時的に円高に戻しても、これまで円売りリスクをとっていない投機筋は損失拡大の懸念が高まるわけではないので、それだけで円買い戻しを拡大するかは疑わしい。逆に、投機筋がなお余力の大きい円売り拡大に動くようなら、円買い介入は結果として投機円売りの「火に油を注ぐ」役割となってしまう危険さえあるだろう。以上のように見ると、円買い介入が円防衛の「最後の砦」になってきた2024年までの状況と今回は違いそうだ。

金利差縮小でも円高へ反応せず=「長期金利上昇=円安」、財政懸念の円売りか

円買いの為替市場介入とともに、2022年以降の円安局面でそれが一段落するきっかけになったのが金利差円劣位の縮小だった。2022、2023年と2年連続で米ドル高・円安は151円で一段落したが、これは日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大の一巡、縮小への転換と基本的に一致していた(図表3参照)。ところが、この関係が2024年以降崩れ始め、そして2025年後半から両者はほとんど逆方向への動きとなった。

【図表3】米ドル/円と日米金利差(2020年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

なお、2023年頃までの米ドル/円と日米金利差の関係からすると、2025年末には125円程度まで米ドル安・円高に戻してもおかしくないほど日米金利差は縮小した。ところが実際には160円近くまで逆に米ドル高・円安再燃となった。

このように日米金利差では説明できない2025年後半の米ドル高・円安を、ある程度説明できそうなのは日本の長期金利上昇だった(図表4参照)。日本の長期金利、10年債利回りは2%の大台を超えて大きく上昇したが、これは日本の財政リスクへの懸念を受けた結果との説明が多い。その意味では、日本の長期金利上昇と連動したような円安は、日本の財政リスクへの懸念を受けた円売りの影響が大きいということになるだろうから、円安を止めるためには財政懸念の払しょくが必要ということになる。

【図表4】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2026年度予算案へ厳しい評価が揃った全国紙社説=財政懸念払しょくできず?

この財政懸念払しょくのタイミングとして注目されたのが、高市政権による2026年度当初予算案だった。しかし、一般会計総額122兆円と過去最大規模に膨らんだ予算案について、2025年12月27日付け大手全国紙の社説は、「責任の視点欠く過去最大の予算案」(日本経済新聞)、「『責任ある』はどこに行った」(毎日新聞)、「財政運営に危機感持て」(朝日新聞)、「市場の信頼を得る努力尽くせ」(読売新聞)と、揃って厳しい評価となった。

以上のように見ると、2026年度予算案での財政懸念払しょくはできなかったようだ。そして日銀利上げという金利差円劣位縮小でも円安は止まらず、さらに円買いの為替介入でも円安終了が懐疑的になってきた可能性がある。その意味では、高市政権が自らのイニシアティブで円安を止めるのは難しくなっているのかもしれない。