「譲渡損益」で確定申告が必要なケースは?

米国株取引では、税金の扱いについて、日本株取引と異なる点がいくつかあります。

「為替差損益」は日本株取引の場合と事実上同じ

まず「譲渡損益」についてみていきましょう。譲渡損益は、日本居住者は米国では非課税の扱いとなっているので、日本株取引の場合と事実上同じとなります。

一般口座もしくは源泉徴収なしの特定口座で生じた譲渡所得であれば、原則として確定申告が必要です。一方、源泉徴収ありの特定口座で生じた譲渡所得の場合、確定申告は不要です。なお、源泉徴収ありの特定口座で利益が生じた場合でも、過年度の損失と損益通算するなど、確定申告した方が有利な場合もあります。

また、他の譲渡損益含め、年間トータルで損失となった場合は、確定申告をすることにより、翌年以降最大3年間にわたって損失を繰り越し、翌年以降の利益と相殺することができます。損失の繰り越しのための確定申告は、源泉徴収ありの特定口座の場合でも必須となるため注意しましょう。

【図表1】譲渡損益にかかる確定申告の要否
※注1:上記は原則的な取り扱いで、例外規定もあり
※注2:譲渡損益は1年間の総合計
出所:各種公表資料より筆者作成

NISA口座での注意点

NISA口座の場合、譲渡所得は非課税となります。損失が生じた場合はなかったこととなり、NISA口座以外の口座(特定口座、一般口座)で生じた利益との相殺などはできません。

また、NISA口座で生じた利益も非課税のため、NISA口座以外の口座で生じた損失と相殺することもできません。そもそも確定申告は対象外ですので、損失の翌年以降の繰り越しもできないことになっています。

米国株の配当金、「外国税額控除」で二重課税を解消

配当金の場合、基本的には二重課税に

譲渡所得と異なり、配当金の場合は、米国と日本のそれぞれで課税されます。まず、日本の居住者に対して米国で配当金の10%(※)が源泉徴収され、その後日本国内で、米国での源泉徴収後の配当金について20.315%が源泉徴収されます
※米国の普通株の場合。その他銘柄によっては10%ではない場合があります

例えば1ドル=150円で、配当金として200ドル受け取ったとしましょう(円換算で30,000円)。まず米国にて20ドルが差し引かれ、180ドルが残ります。そして、この180ドル(×150円=27,000円)に対し、日本国内で20.315%(5,485円)が差し引かれ、手元に残るのは21,515円です。円換算した配当金30,000円に対し、およそ28.3%が源泉徴収されることになるのです。

【図表2】配当金にかかる税金の取り扱い
出所:各種公表資料より筆者作成

「外国税額控除」で二重課税を解消できる

このように、配当金に対しては米国と日本のそれぞれで課税がされることになります。これを「二重課税」と呼びます。この二重課税の状態を解消する方法として、「外国税額控除」という仕組みが設けられています。

所定の書類を添付して確定申告することで、日本での所得税額から、外国で課税されている税額を差し引くことができるのです(ただし控除限度額があり、全額控除できない場合もあり)。すでに源泉徴収にて課税は完了しているので、確定申告をしなくてもお咎めはありません。ただし確定申告をしないと、外国税額控除を受けることができないため、米国と日本との二重課税は解消されずに残ってしまいます。
 
外国税額控除を受ける場合、配当金についても申告が必要となりますが、これを総合課税で行うか、申告分離課税で行うかについても検討が必要です。株式の譲渡損失と配当金を損益通算するのであれば申告分離課税ですし、他の所得が大きい人も、申告分離課税が有利な場合があります。それ以外にも個々人によりどちらが有利かは異なりますので、シミュレーションしたうえで有利な方を選択するようにしてください。

NISA口座での注意点

なお、NISA口座で米国株の配当金を受け取る場合は取り扱いが異なるため、注意が必要です。NISA口座の場合、配当金は非課税となりますが、これは日本国内における税金のみです。NISA口座であっても、米国での税金(10%の源泉徴収)は発生します。

そして、そもそもNISA口座で受け取った配当金は、確定申告ができないため、米国にて源泉徴収された税金について、確定申告により外国税額控除の手続きを取ることができません。つまり、NISA口座の場合は、配当金の10%は必ず税額として徴収されることになるのです。

「為替」の税金の扱いは?

為替差損益、別途手続きは必要なし

米国株取引では、「為替」も絡んできますが、為替の税金はどのような扱いになっているかも知っておく必要があります。実は米国株含め、外国株の取引においては、為替差損益は譲渡所得や配当所得に含まれることになっているため、為替について別途特段の手続きは必要ありません。

例えば1ドル=100円の時に100ドルの株を100株(計1万ドル・100万円)買ったケースで考えます。株価は100ドルで変わらないものの、1ドル=150円となった時にこの株を全部売却したら、売却額は1万ドルですが、円安になっているので円ベースでは150万円となります。この結果、利益(150万円-100万円=50万円)の構成要素は全額為替差益となりますが、これは譲渡所得として扱われることになるのです。

なお、外貨建てMMFについても譲渡損益や分配金に為替差損益が含まれますので、為替について別途考える必要はありません。ただ、外貨預金については為替差益があれば「雑所得」として課税対象となるため、原則として確定申告が必要となります。