政策金利は3.50-3.75%に引き下げ、様子見を強めた印象

現地12月10日に米国のFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、政策金利は3.50-3.75%に引き下げられました。声明文では、これまで失業率を「低水準」としていた表現を削除、追加の金利調整については「その程度とタイミングを考慮」との表現に変更し、様子見を強めた印象です。なお、この表現は2024年末にも見られ、その後9月まで据え置きとなりました。今回、決議はマイラン理事が0.5%の利下げを主張、また据え置き主張が2票と見解の乖離も示されています。

3ヶ月に1回の経済予想が示されましたが、前回9月時点の予想と比べて、特に2026年のGDP成長についての上方修正が目立ちます。

【図表1】GDP/失業率
出所:FRBよりマネックス証券作成

同時に物価見通しも公表され、こちらはやや下方に修正されています。

【図表2】物価/コア物価の見通し
出所:FRBよりマネックス証券作成

政策金利は長期見通しの3%に収束する道筋を示す

そして、FRB(米連邦準備制度理事会)当局者による政策金利見通しです。こちらは前回から変化なく、2026年、2027年に1回ずつの利下げによって長期見通しである3%に収束する道筋が示されました。

【図表3】政策金利予想
出所:FRBよりマネックス証券作成

FOMCメンバーの政策金利見通し分布を示すドットチャートでは、まず今回引き下げとなった2025年の政策金利予想について、投票権のない参加者には据え置きを主張する人が相応にいたことが示されています。そして、2026年以降については、中央値では緩やかな利下げが示されるものの、見方は幅広く分かれています。

【図表4】FOMCメンバーの政策金利見通し(黄:ドットチャート、緑:予測中央値、白:金利先物市場の予想、横軸2028年の右側は長期見通し)
出所:Bloomberg

労働市場の軟化やインフレ鎮静化が緩やかな金利低下を促すか

会見でパウエルFRB議長は、雇用への悪影響を抑えるための措置は十分講じた一方、金利水準は物価圧力を抑制し続けるだけの十分な高さを維持しているとの見解を示しています。また、次の政策変更が利下げなのかとの質問に対しては明言を避けつつ、利上げを基本シナリオとしている当局者はいないとも述べています。

短期的な経済状況に基づき適正な政策金利を試算するテイラールールは4%程度であり、その水準を下回る現状は労働市場に配慮された一方、長期的な見通し3%を上回ることで物価抑制が期待される、と解釈されます。

12月10日の米国市場は株高・金利低下で反応しましたが、FOMCが様子見姿勢を強めたことを踏まえると、今回の決定が市場を強く下支えするものとは言い切れません。市場の反応には銀行準備の十分な供給を維持するため、年限の短い米財務省証券の新規購入を承認した面もあるでしょう。

労働市場の軟化や、一時的な要因を含むインフレ鎮静化が緩やかな金利低下を促すと予想します。他方、労働市場の弱さと根強いインフレのどちらをより大きなリスクとみなすかについて、当局者間で見解が割れているのが現状で、その変化が金利を上下に振ることになるでしょう。まずはデータ再開が大きな判断材料となるとともに、新議長がどのようなスタンスを示すかにも注目が集まります。