先週(11月3日週)の動き:NY金週足小幅に反発、値動きは安定へ、国内金価格も変動幅縮小 米株式と連動目立ったNY金 FRB高官の慎重発言続く
先週(11月3日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週間ベースで小幅に反発した。米連邦政府の一部機関の閉鎖が続き、10月の雇用統計など主要経済指標の発表がない環境の中で、いわば手探り状態の売買が続いた。その中で手掛かり材料の参考指標とする民間機関が発表した米労働市場のデータはまちまちとなった。一方、市場では複数予定されていたFRB(米連邦準備制度理事会)高官の講演など発言内容、とりわけ利下げ見通しに関心が集まった。
また、これまで異例の強気相場が継続されてきた米株式市場では、アップル[AAPL]やアマゾン・ドットコム[AMZN]をはじめとするマグニフィセント・セブンと呼ばれるビッグテック銘柄の高バリュエーションに対する警戒感が高まり、売り優勢の流れに転じ、下げが目立ったことは金市場にも影を落とすことになった。米株式市場では政府機関の閉鎖が長期化し、実体経済への影響が表面化するとともに、企業や消費者心理に悪影響が及び始めていることも売り手掛かりとなっている。
NY金、荒れ相場は一巡し安定戻る
こうした環境の中で11月7日のNY金は4,009.8ドルと節目の4,000ドル台を維持して終了した。前週末比では13.3ドル(0.33%)高の反発となった。11月4日の終値3,960.5ドルは終値ベースでは10月3日以来1ヶ月ぶりの安値となった。
10月20日週の急落を境に値動きの荒い状態が続いて来たNY金も、ポジション(持ち高)整理の売りも一巡したとみられる。実際に先週(11月3日週)は1日当たりの中心限月(Active-Month、12月物)の出来高も10万枚(1枚=100トロイオンス)台まで減少し通常ペースに戻っていた。直近ピークは10月17日の56万9847枚だった。
レンジは3,935.7~4,043.1ドルで値幅は107.4ドルと前週の222.5ドルから半分の水準となった。これらのデータはNY金の動乱相場が一巡したことを表している。
12月利下げに慎重姿勢目立つFRB高官発言
先週(11月3日週)の注目点として挙げたFRB高官の発言だが、利下げ継続に対し総じて慎重なスタンスが目立った。10月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見にてパウエルFRB議長は、内部の見解の相違に言及し、次回12月の会合での利下げは既定路線にあらずとして、利下げを前のめりに織り込む市場に警告を発していた。
11月3日、シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、現時点では労働市場よりインフレの方を懸念していると述べた。同日、トランプ米大統領から解任通告を受け係争中のクックFRB理事は9月以降初めて公の場で発言した。ブルッキングス研究所で行った講演で、「いつものように、毎回の会合で入手される経済指標に基づき政策スタンスを決めていく」とし政策変更もあり得る「ライブ会合」になるとの考えを示した。また、サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は、12月利下げの是非に関してFRBは「予断を持たずに判断する」ことが必要との認識を明らかにした。
また11月6日には、クリーブランド地区連銀のハマック総裁が、金融政策を通じてインフレに下押し圧力をかけ続けるべきだとの見解を示した。インフレは過度に高く、米金融当局にとっては労働市場の弱さよりも依然として大きなリスクだとしている。
一方、米トランプ大統領に指名され9月のFOMCから参加しているミランFRB理事は11月3日、金融政策は依然として景気抑制的だとし、大幅利下げを引き続き主張していく考えを示した。
利下げ慎重論はNY金には売り要因だが、12月会合は別として、大勢的な流れは利下げ方向との見方から目立った反応は見せなかった。
米株式と連動性目立つNY金の背景
前述したように先週(11月3日週)はビックテック銘柄を中心に株安が進んだ。その際にNY金も連れ安となる動きを見せたのが目を引いた。当欄では8月下旬から10月半ばに掛けてのNY金上昇加速の背景として、欧米投資マネーの流入加速を取り上げてきた。NY金と米株式が同時進行的に最高値を更新してきたが、投資家の中にはビッグテック銘柄の買いとともにヘッジ目的でNY金の買いを進めていた向きも多かったとみられた。
その巻き戻しとも言えるNY金の売りが見られたのが、先週(11月3日週)の大幅株安に際してのNY金の下落だった。欧米投資マネーに主導される金価格の値動きは、上下双方に流れが急変することが多いのは経験則と言える。やや大きめの株安にともないNY金には利益確定売りが優勢となる状況が見られており、折に触れこうした傾向が表れそうだ。それでも先週のNY金の3,950ドル割れを含む下値には、買いが入っており調整局面にあるものの中長期ベクトルは依然として上向きと捉えている。
JPX金の値動きも沈静化
週初めの11月3日が祝日となった関係で4営業日となった国内の取引は3週続落となった。米株安によるリスクオフ環境が米ドル/円相場では1円程度円高方向に押し上げたことが、国内金価格には押し下げ要因となった。それでも大阪取引所の金先物価格(JPX金)の週末11月7日の終値は2万87円と節目の2万円台を維持して終了した。
週足は前週末比163円(0.8%)安の3週続落となった。高値は10月31日JPX夜間取引で付けた2万380円、安値は11月5日の1万9632円(レンジ1万9632~2万380円)で値幅は748円となった。NY金の取引が落ち着きを取り戻すとともにJPX金の上下動も3週連続で縮小している。
今週(11月10日週)の動き:主要経済指標発表見送りの中で米議会動向とFRB高官発言に注目 NY金は3,980~4,100ドル、JPX金は1万9940~2万900円のレンジを想定
先週(11月3日週)は米国にて注目の選挙(11月4日投開票のニューヨーク市長選、ニュージャージー、バージニア両州の知事選)が終了したことで、米国議会の予算協議も妥協の余地が生まれるとの見方から、政府機関の閉鎖解消に対する期待が高まっていた。実際に週末11月7日には上院民主党が年末に失効が迫る医療保険補助金の延長要求を1年間に修正する譲歩案を提議し、市場では与野党歩み寄りの楽観観測が広がった。双方の上院議員は先週末ワシントンに残り折衝中とされるが、日本時間の11月10日午前11時時点で米上院にて予算案は合意には至っていない。
米連邦政府機関の一部閉鎖でここまで2ヶ月分の雇用統計が発表されていない。今週11月13日(木)の10月米消費者物価指数(CPI)、11月14日(金)の10月米小売売上高、同生産者物価指数(PPI)はいずれも注目指標だが、現場でのデータ収集も止まっている関係で発表延期が続く可能性が高いとみられる。政策見通しで意見の割れが伝えられているFRBが、ますます深刻なデータ不足に直面する状況を示している。ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁は11月9日英紙フィナンシャルタイムズのインタビューで、次回12月のFOMCでの政策判断について「非常に難しいかじ取りになる」と述べたとされる。
こうした中で今週も経済指標以外が注目点となる。まずは米議会の合意の有無。さらにFRB高官の発言内容に注目したい。12日(水)のニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁、アトランタ地区連銀のボスティック総裁、13日(木)のセントルイス連銀のムサレム総裁の発言に注目している。
米議会動向もNY金に影響すると見られる中でNY金は3,980~4,100ドル、JPX金は1万9940~2万900円のレンジを想定している。
