先週(10月27日週)の動き:NY金は週前半に3,900ドル割れを試すも後半は底堅さ示すJPX金は2週続落も月間ベースでは8ヶ月連騰
週前半に3900ドル割れを試す動き
先週(10月27日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週足は前週末比141.3ドル(3.41%)安で2週続落となった。
前週10月22日の大幅反落(1日で250.3ドル安、過去最大の下げ幅)の余韻の残る中で、週初めの2日間は売りが先行する流れが続いた。週明け早々に伝えられたのは米中貿易摩擦を巡り双方妥協が成立し、緊張緩和見通しとのニュースだった。米政府機関の閉鎖が長期化し主要な経済指標の発表がない中で、地政学要因が金市場に及ぼす影響が強まっている。10月25、26日の日程で、マレーシアで開かれていた米中閣僚級協議は大筋で合意。米トランプ大統領が11月1日から課すとしていた、中国製品に対する100%追加関税は回避と伝わった。
週明けから売り先行の流れが続き、10月27日に一時4,000ドル割れを見ていたことから、上昇加速時とは逆に10月28日には目先筋の売りが膨らみ、下げ方向のモメンタムが発生した。一時3,901.3ドルまで安値を見るところまで水準を切り下げた。残高増が目立っていた金EFT(上場投信)にも、大量の売り戻しが見られた。
ただし、さすがに10月20日の取引時間中の過去最高値(4,398ドル)から約500ドル(約11%)の下げとなったことから、売りが一巡すると安値拾いの買いに反発し10月28日は3,983.1ドルで終了した。大きく水準を切り下げた安値からの戻りは、テクニカル分析が示唆する目先の底打ちのシグナルを印象付けた。
意見の相違伝えられたFOMCとパウエルFRB議長のタカ派発言
下値の堅さは、その後のNY金にはネガティブな材料に対する反応からも感じ取ることができた。
まず先週(10月27日週)最大の注目イベントだったFOMC(米連邦公開市場委員会)に対する反応がある。10月29日、FOMCは大方の予想通り0.25%の利下げを決め政策金利(FFレート)は3.75~4.00%となった。利下げは賛成10、反対2で決定した。反対票を投じたのは政策スタンスの両極に位置するメンバーだった。一人は0.5%の利下げを唱え、もう一人は据え置きを唱え反対票を投じた。こうした中で市場を動かしたのは、FOMC終了後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見だった。
議長は、「今回の会合では12月にどのように対応すべきかを巡って強い意見の相違があった。12月追加利下げは既定路線ではない。そう呼ぶ状況からは程遠い。政策はあらかじめ決められた道筋に沿って進むものではない」と述べた。この発言内容は、インフレがFRBの目標を上回る水準で高止まりする中、追加緩和を巡るFRB内部での緊張を反映したものと言える。
週後半は底堅さを印象付けたNY金
次回12月の会合での利下げには慎重姿勢、つまりタカ派的スタンスと受け止めた市場では、米国債は売られ利回りは急伸し、米ドルも主要通貨に対し全面高となり、NY金は一時3,928.30ドルまで水準を切り下げ、時間外取引は3,941.70ドルで終了した。発言を受け短期金融市場が織り込む12月利下げ確率(フェドウォッチ)は、会合前には100%に近かったが約60%に低下した。FOMC結果判明前に終了していた通常取引は利下げを織り込み4,000.7ドルと4営業日ぶりに反発となっていたが、実質的には4営業日続落と言えた。
それでも翌10月30日には安値拾いの買いに4,015.9ドルと4,000ドル超に復帰した。この日は、韓国にて米中首脳会談が持たれ、閣僚協議で合意していた項目を正式合意し、米中通商摩擦の緩和観測が支配的になった。その影響は週末と月末が重なった10月31日に表れNY金は反落したが、米中両国間の懸案を棚上げしたに過ぎず、長期的な摩擦は継続するとの見方がNY金を底支えした。
NY金、月間ベース3ヶ月続伸
前述したように週足は前週末比141.3ドル(3.41%)安で2週続落となった。レンジは3,901.3~4,123.8ドルとなり値幅は222.5ドルと過去最大規模となった前週(376.80ドル)からは小さくなったものの、荒れた(ボラティリティの大きな)展開に違いはない。なお10月は月間ベース(月足)で前月末比123.3ドル(3.18%)高で3ヶ月続伸となった。
JPX金、月間ベース8ヶ月続伸
NY金の下げを受け国内金価格も週足で続落した。ただし、米ドル/円相場が週末にかけて2円超円安に傾いたことからNY金の下げ率は相殺されることになった。
大阪取引所の金先物価格(JPX金)の10月31日の終値は2万250円となり週足は前週末272円(1.33%)安で2週連続の下げとなった。レンジは1万9413~2万648円で値幅は1235円となった。NY金と同様に前週2581円からは大きく縮小したものの、値動きの荒い状況が続いている。
月間ベースでは10月は前月末比1629円(8.75%)の続伸となった。これで3月以降8ヶ月連続の上昇となる。なお、日銀は10月29~30日に開いた金融政策決定会合でも大方の予想通り金利据え置きを決定した。
今週(11月3日週)の見通し:米政府機関閉鎖継続の中でADP全米雇用報告に注目、FRB高官の利下げを巡る発言に注目 NY金3,960~4,060ドル、JPX金1万9700~2万400円を想定
米政府機関閉鎖により、民間部門の関連データに注目
今週(11月3日週)は本来であれば月初のため米労働指標を中心に重要指標の発表が続くイベント週だが、米政府機関の閉鎖が1ヶ月を超え長期化する中で、雇用統計他の発表は未定になっている。よってFRB高官も言及しているが、民間部門の関連データが注目指標となる。
すでに11月3日には10月のISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数が発表され、48.7と拡大と縮小の分岐点50ポイントを割れ、8ヶ月連続の縮小圏となった。生産指数は2.8ポイント低下して48.2と、過去3ヶ月で2度目の縮小を記録した。生産の弱さが人員抑制につながっており、雇用指数は9ヶ月連続で縮小圏にとどまった。ただ縮小ペースはやや鈍化した。注目点は仕入れ価格指数が1月以来の低水準となったこと。関税の影響がピークアウトしたとの指摘もある。
11月5日(水)には10月のADP全米雇用報告(民間部門の雇用者数)、11月6日(木)には10月のISM非製造業景況指数の発表が予定されており要注目となる。
FRB高官の発言に注目
FRB高官の発言機会も多く予定されている。すでに触れたように12月利下げ継続に対し慎重発言が増える中で注目したい。なかでも11月4日(火)のボウマン理事、11月6日(木)ウォラー理事、ニューヨーク地区連銀ウイリアムズ総裁、セントルイス地区連銀ムスリム総裁の発言に注目している。
こうした中でNY金は4,000ドルを固める値動きが続きそうだ。NY金のレンジは3,960~4,060ドル、JPX金は1万9700~2万400円を想定している。
