先週(9月15日週)の動き:NY金、最高値更新後の3,700ドル台を維持、国内金も最高値を更新後に高値圏で推移 

FRB利下げ期待を映し最高値更新続く

先週(9月15日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げの再開と利下げ幅の拡大あるいは利下げ回数の増加観測から、週前半に買いが先行し、連日史上最高値の更新が続いた。トランプ米大統領によるFRB人事への介入からその独立性に対する懸念もNY金の買い要因に加わっていることも、上値追いのドライバーとなった。

終値ベースでは前週末9月12日以降、9月16日の3,725.10ドルまで3営業日連続で最高値を更新した。一方、取引時間中の最高値は週明け9月15日から9月17日の3,744.00ドルまで3営業日連続で更新された。終値ベースで初めて3,500ドル台に乗せたのが8月29日のことだが、それからわずか10営業日目の9月15日に3,700ドル台に乗せており、9月以降の旺盛な買いを表している。

先週(9月15日週)は9月16~17日の日程で注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれ、予想通り0.25%の利下げが実施された一方、今後の追加利下げに慎重な姿勢を示したことから、NY金は材料出尽くし感もあり、いったんは売られていた。

パウエル議長のFOMC後の慎重発言受け乱高下

実際にパウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、今回の利下げは「リスク管理のための(予防的な)利下げだ」と説明した上で、追加利下げ見通しについては「会合ごとにデータを見て判断する状況にある」とし、慎重な姿勢を示した。ただし、参加メンバーの金利見通し(ドットプロット)によると、年内の残り2回の会合で0.25%ずつ利下げが実施される予想が示されている。さらに今後2年間、毎年0.25%の利下げが実施されるとの予想中央値が示された。

NY金が9月17日の結果発表時に急伸し一時3,744.00ドルと最高値を更新したのは、利下げ回数拡大のヘッドラインにファンドのアルゴリズムが反応したもので、その後のパウエル発言を受け同日中に一時3,679.50ドルまで売られる荒れた展開となった。

最高値更新続く米国株式市場

一方で米国株式市場は利下げ再開とFOMCメンバーによる利下げ回数拡大予想を好感しこのところの上値追いをさらに拡大。先週末9月19日にも主要株式3指数がそろって史上最高値の更新を続け、特に多くの機関投資家が運用にあたり指標としているS&P500種平均は週足の終値で初めて6,600ポイントを突破した。

リスクオン(リスク商品選好)気運の高まりは、この日を含めこのところ発表された一連の米国関連指標に好調なものが多く、それでもなおFRBによる利下げは続くことが、業績を押し上げるとの見方を映している。予想を超える堅調地合いの長期化をもたらしている。パウエル発言の慎重スタンスに反応したNY金に対し株式市場の楽観スタンスという違いが興味深い。一方で、複数回の追加利下げが行われる可能性が高いものの、トランプ政権が期待しているような展開をFOMCが追認したわけでは決してないのは言うまでもない。

NY金、最高値更新後の3,700ドル台を維持

こうした流れの中で先週末9月19日のNY金は、利益確定とみられる売りに上値の重い展開となったものの、NY時間の終盤に買い優勢に転じ水準を切り上げ節目の3,700ドル台を回復した。切り上げた水準を維持し通常取引は3営業日ぶりの反発となり3,705.80ドルで終了。週足は、前週末(9月12日)比19.40ドル(0.53%)高の5週続伸となった。レンジは3,660.50~3,744.00ドルで値幅は83.50ドルと前週に近い水準となった。

国内金も最高値を更新、その後高値圏で推移

一方、国内金価格も週初に最高値更新、その後最高値圏での取引が続いた。米ドル/円相場がFOMC当日に一時145円台を付けるなど乱高下は見られたものの、おおむね147円台を中心に落ち着いた動きとなったことから、NY金の値動きをほぼ反映することになった。

日銀の政策決定については、保有する上場投資信託(ETF)などの市場への売却はサプライズではあったものの、内容が長期にわたるもので市場の反応は限定的だった。

大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、連休明け後の9月16日に付けた取引時間中の1万7646円、および終値の 1万7584円が、それぞれ史上最高値となった。その後は週末にかけ、1万7400円台を維持し週末9月19日の終値は 1万7495円となった。週足は前週末(9月12日)比24円(0.14%)の小幅高で4週続伸となった。レンジは1万7370~1万7646円で値幅は276円と上下の振幅も小さくなり、最高値圏での滞留という状況にある。

なお、週末9月19日のNY金の上昇を映した9月19日のJPX金の夜間取引は一時1万7680円まで付け、取引時間中の最高値を更新している。

今週(9月22日週)の動き:鈍化予想のPCE価格指数、FRB高官の発言、地政学要因にも注目 NY金レンジは3,680~3,750ドル、JPX金1万7350~1万7200円想定

地政学リスクなど不確実性への関心続く

先週のFOMCは、歴史的に見て過去最大規模に政治的プレッシャーが高まった会合と言えたが、同会合の議長でもあるパウエルFRB議長が無難にこなしたという印象の内容となった。むしろ議長の手腕を評価する声もある。FOMCという目先の大きなイベントを通過し、買い一巡で反落と見られたNY金だが、前述のように9月19日の終値は3,700ドル台に復帰し買い意欲の旺盛さを感じさせる展開となった。

取り立てて具体的な買い手掛かりが浮上したわけではないが、東欧では前週(9月8日週)のポーランドとルーマニアへのロシアによる領空侵犯に続き、9月19日にはエストニアへのロシア戦闘機による領空侵犯が発生し、NATO(北大西洋条約機構)軍がすぐに対応しロシア機を退けたと報じられた。

また、10月1日に2026年度入りとなる米国では予算協議の難航が予想されている。トランプ米大統領は10月初めの一部政府機関閉鎖の可能性に言及。財政運営を巡る不透明感も買い要因となったとみられた。

9月19日には金ETF(上場投信)の最大銘柄「SPDRゴールドシェア」の残高が18.9トン増と1日としてはまとまった買いが入った。また9月19日にCFTC(米商品先物取引委員会)が公表したデータでは、マクロ系ヘッジファンドと見られるロング(買い建て)ポジションの増加が目立っていた。中長期のスタンスでの資金と見られることから、切り上げた水準を維持する可能性を感じさせるものといえる。

鈍化予想のPCE価格指数に注目

今週(9月22日週)は9月26日(金)に発表される8月の個人消費支出(PCE)価格指数が注目指標となる。FRBが基調インフレ指標として選好するものだが、食料品とエネルギーを除くコア指数の前月比上昇ペースは市場予想では7月から鈍化した可能性が指摘されている。8月上昇率は前月比0.2%と、7月の0.3%を下回る見通しだ。前年同月比では7月と同じ2.9%と高止まりが続きそうだ。予想通りとなるとNY金には目立った影響はないとみられる。

パウエル議長はじめFRB高官の発言に注目

今週(9月22日週)はFRB高官の発言機会も多い。9月23日(火)のパウエル議長はじめ9月22日には就任したばかりのミラン理事とウイリアムズNY地区連銀総裁、9月25日(木)にはボウマン副議長、サンフランシスコ地区連銀のデーリー総裁などの発言が予定されており、注目したい。こうした中でNY金のレンジは3,680~3,750ドル、JPX金は1万7350~1万7200円を想定している。