歴史的に低い水準にあるスプレッド

・株式市場が堅調な中、クレジット市場も過熱している。様々な債券のスプレッドを比較すると、米国の投資適格債、グローバル投資適格債、新興国債券、ハイイルード債などのスプレッドが歴史的に低い水準にある。特に新興国債券はマイナスになっており、国債よりも金利が低くなっている。これはリスク資産の人気が非常に高まっていることを示しており、株式市場のPERが過熱しているのと同様の状況である。

・リスクオン状況となる背景に潤沢なマネーサプライがある。主要国のマネーサプライは2023年が底となりその後はサイクルに入っている。この伸びをけん引しているのが中国であり、中国の株式も民間主体で買われ上昇している。また、日本、米国、欧州も金融緩和を進めており、リスク資産の支えとなっている。

デフォルト率は高止まり、今後の金融緩和で改善の可能性

・クレジット市場のファンダメンタルズとして、デフォルト率の推移をみると、米国のクレジットサイクルは現在悪いところにある。デフォルト率が高止まりしているものの、今後の金融緩和によりサイクルが改善する可能性がある。一方、グローバルのデフォルト率は先んじて改善傾向にあり、ファンダメンタルズは悪くないと言える。

・銀行関係者に聞き取りを行ったところによると、融資態度は引き締められているものの、2024年以降は緩和方向に向かっている。実際の融資の前年比も伸び始めており、今後も伸びていく期待がある。銀行だけでなくプライベートクレジットも含めると、さらに緩和している可能性がある。ただし、スプレッドはすでに歴史的低水準にあり、よい状況を先取りしているため、さらにクレジット投資をするためには追加の材料が必要である。

・短期金利とテーラールールが示唆する水準をみると、総じて適正水準は今よりも低いとみえるが、そこまで乖離しているわけではない。市場は年内1~2回の利下げを含め、断続的な利下げを期待しているが、このような大幅な利下げは、過去にはほとんどの場合、リセッションを伴っていた。それはリスク資産の支えになるかどうか、注意が必要である。

・金利水準自体はボックス圏の中にある。ただしこれだけスプレッドが縮小していると、リスク面で注意が必要である。環境がよい時こそ、国債のような安全資産に目を向けることも必要である。