2025年9月1日(月)8:50発表
日本 法人企業統計2025年4~6月期
【1】結果:企業業績は伸び悩み 大企業が顕著
財務省が発表した四半期別法人企業統計では、2025年4~6月期の企業売上は、前年同期比0.8%増と小幅ながらプラスとなり、17期連続で拡大となりました。売上については、製造業・非製造業ともに過去1年と比較しても伸びの減速がうかがえ、利益に関しては製造業が為替影響やトランプ米政権下における通商政策が下押しに寄与し、大幅な減益となりました。設備投資は、全産業でみると前年同期比7.6%増と市場予想の同6.1%を上回り、前の期(2025年1~3月期)から伸びが拡大しました。
資本金レンジごとに売上・経常利益を比較すると、大企業が(資本金10億円以上)が伸び悩んだことがわかります。対照的に中堅(1億~10億円)・中小(1,000万~1億円)は、売上は小幅な増収であるものの、利益は確保した様子がうかがえます。
【2】内容・注目点:労働分配率の低さが際立つ
今回の法人企業統計では年度ベースのデータも公表され、最新の2024年度の付加価値額や人件費が公表されました。労働分配率とは、企業が生み出した付加価値(営業利益+人件費+支払利息等+動産・不動産来借料+租税公課)に対して人件費が占める割合、つまりはどれほど人件費に回したかを示す指標です。図表3をみると、2024年度も大企業・中小企業ともに労働分配率が低下する結果となりました。企業規模に比例し、労働分配率の水準に差があるものの、コロナ禍以降では規模を問わず下落トレンドがうかがえます。
一方で労働生産性(上述の付加価値を人員で割ったもので、1人当たりの付加価値額)の伸び率をみると、コロナ以降では毎期1人当たりの付加価値額が拡大しており、本指標からは生産性の向上がみられます。また、過去と比較しても長らく停滞感のあった生産性の伸び率も、直近では5%強と一定の強さがうかがえます。生産性が向上している一方で、労働分配率が低下している状況は、企業が従業員に相応の還元をしていないとみられる材料と言えるでしょう。足元では、実質賃金がマイナスの状況が続いている中で、問題は高いインフレ状況にあると言えますが、賃金のほうも上昇余地があると考えられます。
【3】所感:設備投資は底堅い 不確実性の改善次第で上昇か
ソフトウェアを除く設備投資(図表5、水色)は、前期比0.2%増と前の期の1~3月期から伸びが減速しました。本指標はGDPの2次速報にて用いられることから、堅調であったGDPの設備投資も修正が入る可能性が指摘できます。ソフトウェアを含む設備投資(図表5、黄色)は、前期比ベースでは若干の減速が見られた一方で堅調さがうかがえます。外部環境の不確実性が高まる中で、企業は比較的内部への投資といえるソフトウェア投資にシフトしたと推察されます。設備投資は、トランプ米政権に振り回された4~6月期も底堅い内容となり、徐々に不確実性の霧が晴れていけば、上昇基調に推移していくと考えられます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
