米国企業による自社株買いが過去最高水準に達しています。2025年5月8日付の日本経済新聞では、「米企業の自社株買い、過去最高水準 戻り相場を演出」と題した記事が掲載され、株式市場の戻り相場を支える要因として、企業の積極的な自社株取得が取り上げられました。

企業が自社株を買い戻す目的は、株主への利益還元や株価の下支えにとどまらず、資本構成の最適化やROE(自己資本利益率)の向上など、多岐にわたります。成長投資の一巡後に余剰資金をどう活用するかは経営判断の核心であり、自社株買いは株主への姿勢を示す有効な手段といえます。こうした背景から、自社株買いは米国市場において今後も注目されるテーマとなりそうです。

そこで今回は、S&P500構成銘柄の中から、直近1年間に自社株買い取得額が多かった上位15社を紹介します。

なかでも突出しているのがアップル[AAPL]です。年間で約1,000億ドルもの自社株買いを実施しており、その規模は米国企業の中でも群を抜いています。潤沢なキャッシュフローを武器に、継続的かつ安定的な株主還元を実現している点は、同社の強みといえるでしょう。

これに続くのがアルファベット[GOOGL]で、約610億ドルの自社株を買い戻しました。さらにエヌビディア[NVDA]が約400億ドル、メタ・プラットフォームズ[META]も約290億ドルと、メガテック企業が上位を占めています。いずれも好調な業績を背景に、株主還元にも積極的な姿勢を見せています。

また、金融セクターではジェイピー・モルガン・チェース[JPM]やウェルズ・ファーゴ[WFC]が上位にランクインし、それぞれ200億ドル超の自社株買いを実施しました。エネルギー関連でもエクソン・モービル[XOM]やシェブロン[CVX]がランクインしており、セクターを問わず幅広い企業で株主還元の動きが強まっていることがうかがえます。

還元手段の内訳に目を向けると、配当性向自体は相対的に抑えられている企業も多い一方で、自社株買いを含めた総還元性向では100%を超える水準に達している銘柄も目立ち、総じて米国企業の株主還元意識の強さがうかがえます。

S&P500株価指数構成銘柄の自社株買い取得額(直近1年)が大きい上位15銘柄はこちらからチェック