2025年6月5日(金)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2025年4月分速報
【1】結果:所定内給与は改善が見られるも実質賃金は4ヶ月連続でマイナス
2025年4月の名目賃金は、前年同月比2.3%増と前月3月(改定値)から横ばいとなりました。市場予想も下回り、伸び悩みがうかがえる内容です。一方、基本給にあたる所定内給与は、同2.2%増と前月(改定値)から伸びが加速しました。サンプル替えの影響を除いた共通事業所ベースの所定内給与は、0.5ポイント伸びが加速し、所定内給与は持ち直す結果となりました。
4月の実質賃金は、前年同月比1.8%減と4ヶ月連続でマイナスの推移となりました。ヘッドラインのCPI(消費者物価指数総合)にてデフレートされた実質賃金は同1.3%減となっています。依然としてコメを中心とした食料の価格高騰がインフレを押し上げており、実質賃金はマイナスでの推移が続いています。
【2】内容・注目点:所定内給与は一部産業に出遅れ
4月の所定内給与は前月から持ち直す結果となりました。実質ベースでは、依然マイナスでの推移が続いているものの、ここから夏にかけて春闘での賃上げが反映されれば、名目・実質ともに上昇基調での推移となるでしょう。
一般労働者の個別の産業に目を向けると、運輸・郵便や卸売・小売といった一部の産業において出遅れが確認されます。シクリカルなセクターであることから業績に準じて、給与の伸びが減速することが考えられるものの、これらの産業は人手不足が指摘されることもあり、人材獲得のためには給与を魅力的な水準にする必要があると考えられます。
春闘の回答速報ベースでは、主に大企業を中心にこれらの産業でも賃上げが確認できるものの、中堅~中小企業においても同程度の賃上げが達成できるかと言えば、懐疑的な部分があり、全体的な底上げの観点からこれらの産業が持ち直していくかに注目しています。
【3】所感:サービス関連の物価が上昇基調 トレンド続けば金融政策正常化に前進
ここ数ヶ月の実質賃金を低下させているインフレは、コメを中心とした食料が主因となっていますが、足元ではサービス関連の物価指標が、日銀がターゲットとする2%の周辺で堅調に推移しています。上述の通り、一部の産業においては賃金の出遅れが見られますが、全体としての企業向けビジネス・消費者向けビジネスそれぞれのサービス物価は堅調です。そのことからも賃金への波及が予想され、この点では2026年の賃上げもある程度の水準が期待できるでしょう。
現時点ではサービスを中心としたインフレとは言えないものの、これらの指標が2%近辺で底堅く推移する際には、金融政策の正常化への確度は高まっていくものと考えられます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
