政策金利の現状維持を決定、展望レポートでは成長見通しを下方修正
日本銀行は、5月1日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%程度で維持することを全員一致で決定しました。
同時に年4回示される「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)が公表されました。成長見通しは2025年度が対前年度比1.1%から0.5%へ、2026年度が同1.0%から0.7%へ下方修正されています。主因は各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の減速です。
成長ペース鈍化は、原油価格下落とともに、物価見通しの下振れ要因となっています。今回は見通し期間を2027年度まで1年延ばしたうえで、「見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移」との文言を維持しており、実質的に物価目標の実現時期が1年先送りになっています。
なお、物価のリスクバランスは「2025年度と2026年度は下振れリスクの方が大きい」と指摘し、2025年度は「上振れリスクの方が大きい」とした前回から修正されています。

利上げの先送りには言及せず/日米の実体経済を見極めることが一層重要
会合結果の公表直後、市場は円安・金利低下で反応しました。日米間では関税交渉とあわせて円安是正圧力にも注目が集まるなか、それをサポートする利上げスタンスに大きな変更はないとの見方もありましたが、今回の先行きに対する慎重姿勢の明確化を受け、その見方にも修正圧力がかかっています。
その後の会見では、関税により物価が足踏みし、見通しの達成が後ずれすることは認めたものの、利上げの先送りには言及しませんでした。円安基調が続けば日米交渉に影響する可能性もあり、そこまで踏み込まない姿勢となったのでしょう。関税政策による影響や状況の改善を慎重に見極める構えです。
政策次第で見通しが変化する可能性が高く、正常化に向けた動きはいったん仕切り直しです。こうしたスタンスは低金利継続という点で市場に安心感を与える一方、当面は関税政策の行方に左右されやすい状況が続くとみられます。「緩やかに回復」基調にある国内景気も、米国経済の動向次第で変動しやすく、今後は日米の実体経済を見極めることが一層重要となります。