先週(5月4日週)の振り返り=GW中も介入の可能性、ただ155円割れには至らず
GW中も米ドル反発局面では介入の可能性
4月30日に日本の通貨当局が2024年以来の米ドル売り・円買い介入に出動したとみられたことをきっかけに、米ドル/円は160円台から155円台まで急落しました。その後、158円近くまで反発すると、日本のゴ-ルデンウィーク(GW)中にもさらに1~2回介入があったとみられましたが、155円を割り込むまでには至りませんでした(図表1参照)。ではそれはなぜなのでしょうか。
原油と米金利の下げ渋りで155円割れず
イラン危機の中で、とくにホルムズ海峡の封鎖により原油供給への懸念が広がると、原油価格は急騰し、米金利も値動きの激しい原油価格に反応するようになりました(図表2参照)。その原油価格は、イラン戦争の終結期待から反落する場面もありましたが、なおWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)は100米ドル前後という高値圏での推移が続き、このため米金利も下げ渋る動きが続きました。
こうした中で、日米金利差(米ドル優位・円劣位)の縮小も小幅にとどまりました(図表3参照)。米ドル/円が155円割れに至らず、下げ渋る展開となった背景としては、原油価格の下げ渋り、それを受けた米金利の下げ渋りの影響が大きかったのではないでしょうか。
投機の円売りが大きく後退=円売り取引の損失拡大懸念
一方で、160円までの米ドル高・円安を主導した要因の一つと見られた投機筋の米ドル買い・円売り取引は大きく後退した可能性があります。代表的な投機筋であるヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、5月4日時点の売り越しが6万枚となり、1週間前の10万枚から大きく縮小しました(図表4参照)。
ヘッジファンドの米ドル買い・円売りポジションの損益分岐点の目安は120日MA(移動平均線)とみられており、5月8日時点で157.1円程度です(図表5)。これを参考にすると、介入をきっかけとした米ドル/円の急落により、ヘッジファンドの米ドル買い・円売りポジションは損失拡大の懸念が浮上した可能性があります(図表5参照)。こういったことから、投機筋は米ドル買い・円売り取引の縮小を余儀なくされたということではないでしょうか。
今週(5月11日週)の注目点=高市・ベッセント会談で「投機の円売り」も議題
トランプ訪中、CPI発表など注目材料目白押し
今週(5月11日週)は、ベッセント米財務長官が来日し、5月12日に高市首相などとの会談が予定されています。また5月14日からはトランプ米大統領が訪中する予定です。そして米国の経済指標では、原油価格急騰に伴うインフレ再燃が懸念される中で、4月のCPI(消費者物価指数)やPPI(生産者物価指数)発表が注目されるところでしょう。
この中でベッセント財務長官と高市総理の会談について、一部では投機的円売りも議題になると報じられました。事実であればかなり異例と言えそうですから、その行方は大いに注目されるのではないでしょうか。
2024年までの円安阻止政策から変わった可能性=米国が強く関与
日本の通貨当局は2026年4月末から、2024年以来となる円安阻止介入を再開しました。ただし、介入を開始した米ドル/円の水準を5年MAとの関係などで見ると、これまでとは大きく異なっています(図表6参照)。これは、今回の円安阻止政策は、日本単独で行った2024年までの対応から大きく変わっている可能性を感じさせるものです。
介入の前段階とされる「レートチェック」が1月23日に行われ、結果として米国の通貨当局も「レートチェック」を行ったことで日米協調による円安けん制の形となりました。これについて一部で、日本からの要請ではなくベッセント財務長官が主導したものと報じられました。これらを踏まえると、円安阻止政策は2024年までの日本単独から、米国も強く関与し、ある意味ではむしろ米国主導に変わっている可能性もあるでしょう。
そうした中で、ベッセント財務長官と高市総理らとの会談で投機的円売りも議題になるとされています。円安の要因として、日本の低金利や財政規律への懸念も指摘されますが、ある財務相関係者はベッセント氏がそれらの見直しの必要性も直接指摘する可能性があるとの見方を示しました。円安阻止で日米の利害が一致し、それをむしろ米国が主導しているなら、必要な時には日米協調による米ドル売りの介入に踏み込むかも注目されるところでしょう。
今週(5月11日週)の米ドル/円予想レンジは153~158円
以上を踏まえると、ベッセント来日を受けて、円高が一段と広がる可能性もあることから、今週の米ドル/円は153~158円で予想したいと思います。
