先週(2月10日週)の振り返り=上下に大きく振れた米ドル/円

日米金利差米ドル優位が拡大で、米ドル高・円安に

先週の米ドル/円は上下に大きく振れる展開となりました。まず週央にかけては155円近くまで比較的大きく米ドル高・円安へ戻し、その後は152円割れ近くまで米ドル安・円高となりました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年12月~)
出所:マネックストレーダーFX

このような先週の米ドル/円の動きは、基本的には日米金利差に沿ったものでした。週央にかけて米ドル高・円安になったのは、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言や米1月CPI(消費者物価指数)の結果を受けて米金利が大きく上昇し、日米金利差米ドル優位が拡大したことに連れたものだったでしょう(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年9月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ただその後米金利が低下に転じ、特に2月14日に発表された米1月小売売上高が予想よりかなり弱い結果で米金利が一段と低下、金利差米ドル優位も大きく縮小すると、それに沿った形で米ドル安・円高が広がったわけです。

日米金利差米ドル優位縮小には、日本の金利上昇の影響も大きかったでしょう。日本の長期金利、10年債利回りは、基本的には米10年債利回りの影響を受けますが、1月末頃から米10年債利回りからかい離してほぼ一本調子の上昇が続きました(図表3参照)。こうした異例の日本の金利上昇が、日米金利差米ドル優位・円劣位縮小をより大きくしている面があると考えられます。

【図表3】日米の10年債利回りの推移(2024年7月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

異例の日本の金利上昇の背景には、例えば米貿易赤字縮小を目指すトランプ政権からの円安是正のための利上げ早期化圧力などもあるのかもしれません。こうした中で、日米10年債利回り差米ドル優位・円劣位は、2月14日には2024年12月初め以来の水準まで縮小してきました。当時の米ドル/円は150円を下回っていたので、金利差との関係を考慮するとさらに米ドル安・円高に向かってもおかしくなくなってきたのかもしれません。

CFTC統計における投機筋の円ポジションが影響

ただ、その中で円の「買われ過ぎ」懸念が出てきた点は1つ要注意でしょう。ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは2月11日時点で5.4万枚の買い越し(米ドル売り越し)となりました(図表4参照)。低金利の円は、基本的に買い越しが5万枚以上に拡大すると「行き過ぎ」懸念が強まり、先週一時155円近くまで円急反落となったのも、「買われ過ぎ」の反動が一因だった可能性があります。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

今週(2月17日週)の注目点=米インフレ再燃か景気減速か

これまで米金利上昇してきた理由

米金利は先週上下に大きく振れる展開となりました。その背景には、米1月CPIが予想より強い結果となったことなどからインフレ再燃の懸念がある一方で、その後発表された米1月小売売上高は逆に予想を大きく下回り景気減速の兆しもあり、金利の方向性が定めにくくなっているということがあるのではないでしょうか。

なお、定評のあるアトランタ連銀の経済予測モデルのGDPナウは、小売売上高の発表の後に、第1四半期の米GDP伸び率予想を、それまでの2.9%から2.3%へ下方修正しました。インフレ再燃への懸念から米金利は上昇に向かうのか、それともいよいよ景気減速の可能性が浮上し米金利は低下に向かうのか。

ただ、トランプ大統領の経済政策のリスクを織り込む形ですでにこれまで米金利は大きく上昇してきたのではないでしょうか。その上でさらに米金利上昇が続くかどうかは、個人的には懐疑的です。

むしろトランプ大統領の経済政策を織り込む取引の一部には、ここに来て修正が広がっている痕跡もあります。CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、カナダドルの5通貨で試算)は、買い越しがトランプ大統領の就任式前には33万枚まで拡大しましたが、先週にかけて22万枚まで縮小しました(図表5参照)。

【図表5】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドルが「買われ過ぎ」となったのは、トランプ大統領の経済政策では米金利が上昇するとの見込みが大前提と考えられ、その意味では典型的な「トランプ・トレード」の1つと思われますが、その見直しが広がってきたわけです。米経済には、インフレ再燃のリスクがあるものの、「トランプ・トレード」の見直しということを考えると、「米金利上昇=米ドル高」には自ずと限りがあるのではないでしょうか。

今週の米ドル/円、149.5~153.5円を予想する理由

以上を踏まえると、なお米金利の方向感が定めにくい中で上下に振れやすい状況は続きそうですが、基本的には「米金利上昇=米ドル高」の限界を確認しながら、徐々に米ドル安・円高へ向かう可能性が高いとの考え方から、今週の米ドル/円は149.5~153.5円で予想します。