日本を含む全世界株に低コストで手間なく分散投資ができるのが「全世界株式型のインデックスファンド」です。NISAでは米国株価指数「S&P500」連動ファンドと並んで人気があります。
しかし、人気があるからと言って、「全世界株式型のインデックスファンド」が全ての人に適した投資商品というわけではありません。相対的にリスクの低い債券は含まず全て株式に投資、日本株は数パーセントと、ほぼ海外株で占めるため為替変動リスクも大きくなります。
自分のリスク許容度を超えて、全世界株式型に投資をしている投資家や逆に、全世界株式型では物足りないという投資家もいらっしゃるかもしれません。
今回は、全世界株式型に投資するだけでいいのか、全世界株式型や他の投資対象を組み合わせた方がいいのか、一緒に考えていきたいと思います。
そもそも「全世界株式型」の中身とは?米国株が6割を占める背景
世界の株式市場をカバーする株価指数には「FTSE Global All Cap Index」(以下、FTSE GACI)と「MSCI All Country World Index」(以下、MSCI ACWI)の2種類があります。
両指数ともに、ポートフォリオを構成する国の比率は非常に似ています。リターン・リスクもほぼ同じです。違いがあるとすれば、FTSE GACIは小型株を含み、銘柄数が約1万と多いことです。その結果、世界の株式市場カバー率が高く98%となっています。MSCI ACWIは小型株を含まず、銘柄数は約3,000、世界の株式市場カバー率は85%で先進国23ヶ国と新興国24ヶ国に投資をしています。
業種配分や組み入れ上位銘柄は次のようになっています。
一番多い業種は「情報技術」。組み入れ上位10銘柄は米国の主要テック企業「マグニフィセント7」(アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA]の7社)が並びます。2024年12月末時点で、2,647銘柄で構成されていますが、上位10銘柄だけで全体の約24%を占めています。
読者の中には、全世界株式型インデックスファンドは全世界の株式に均等に投資していると思っている人もいたかもしれません。実際は図表1のとおり、日本株は数%、米国だけで60%を占めています。米国株が多い理由は、米国が世界経済の中心で長らく成長してきているからです。
全世界株式型は、米国以外の先進国・新興国も40%組み込んでいるので、S&P500のように米国だけに集中するよりも分散投資効果を期待できるでしょう。
とは言え、米国株の割合が多いのは事実です。米国集中のリスクを減らしたいと考えるならば、米国以外の先進国株を増やす、日本株を増やす、新興国株を増やすなどするのが良いでしょう。値動きを抑える目的ならば、株だけに投資するのではなく、債券やREITなど値動きの異なる資産にも投資をするというのが王道です。
ただそもそも、リスク資産の中だけで資産分散を考えるのではなく、資産全体で考えるべきです。総資産に占める無リスク資産(預貯金・国債)の比率を増やすならば、リスク資産は100%株でも良いという考え方もあります。
今回は「株」への投資を前提として、工夫していくことを考えていきます。
「通貨地域分散を考慮したい」→「日本株型」「除く米国型」
通貨や地域分散を考慮しながら資産増を狙うならば、全世界株式型に追加して日本株型に投資するのが1つの選択肢でしょう。
日本の株価指数には「日経平均株価」と「TOPIX」がありますが、分散投資効果を意識するならTOPIX連動ファンドがおすすめです。なぜなら、日経平均株価は225銘柄にしか分散投資できないからです。
TOPIXであれば、約2,100銘柄に分散投資したのと同様の効果が得られます。日本の上場企業は約4,000あるので、完全に網羅しているわけではありませんが、日経平均株価よりも多くの銘柄に間接的に分散投資ができます。
分散投資効果は、30銘柄を超えてくると上がりづらいという分析結果もあります。しかし、上がりづらいとはいえ、上がることは事実ですので、投資先を分散するほどリスクを抑えて堅実に増やす効果が高まると言えるでしょう。
実際のリスク・リターンで比較した場合、どちらが優位なのでしょうか。一例として「eMAXIS Slim国内株式(日経平均)」「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」のリスク・リターンの実績を確認してみましょう。
リターンを見ると、大差はないのがわかります。しかし、リスク効率の指標「シャープレシオ(リスク調整後収益率)」を見ると、TOPIXに軍配が上がります。シャープレシオは、「ファンドがリスクに見合った収益を上げているのか」を評価するための代表的な指標で、この数値が大きいほど、そのファンドが安定的に収益をあげていたことを示します。
米国株以外の比率を高めたいということならば、FTSEグローバル・オールキャップ(除く米国)インデックス(円換算ベース)に連動することを目標とする投資信託に投資するという選択肢もあります。
「下落耐性を上げたい」「値上がり益&分配金狙い」→「高配当株型」「連続増配株型」
暴落や下落相場への耐性を上げたい、値上がり益&分配金を狙いたいということであれば、「高配当株型」「連続増配株型」に投資するという選択肢もあります。
高配当株とは、株価に占める配当金の割合(配当利回り)が高い銘柄を指し、配当利回りが3%を超えると高配当と言われます。高配当株に分散して投資するのが「高配当株型」です。
企業は主に業績好調なときに配当金を増やす「増配」を行うことがあります。業績好調が継続的に続く企業の場合は、増配を何度も繰り返します。期を空けずに連続して増配する銘柄は、「連続増配株」「連続増配銘柄」と呼ばれます。連続増配株に分散して投資するのが「連続増配株型」です。
高配当株や連続増配株は市場の下落に比較的強いのがメリットです。相場全体の下落に合わせて値下がりはするものの、いち早く下落から回復する傾向にあります。下落・停滞相場の間も定期的に分配金がもらえるのも、心の安定剤になります。
「全世界株式型+高配当株型・連続増配株型」で攻めと守りのバランスを踏まえた投資戦略も面白いでしょう。
分配金をもらう目的であるなら、債券型やREIT(リート)型も候補になりますが、値上がり益も狙うならば「高配当株型」や「連続増配株型」などがベターです。
「積極的にリスクを取りたい」→「米国テック株集中型」「新興国株型」
全世界株式型のパフォーマンスでは物足りないと考えている人もいるかもしれません。その場合は、MSCI ACWIやS&P500のパフォーマンスを凌駕する、米国テック株集中型ファンドに投資するという選択肢があります。
また、米国テック株集中型のパフォーマンスよりは見劣りしますが、今後伸びてくる地域として「新興国株型」も候補でしょう。中でも「インド株型」は最近人気があるようです。
米国テック株系の株価指数には「NASDAQ100」「SOX」「NYSE FANG+」などがあります。
NASDAQ100はナスダック証券取引所に上場している銘柄のうち、金融業を除く時価総額上位100社で構成された株価指数です。
SOXは「フィラデルフィア半導体株指数」といって、米国株式市場に上場する主要な半導体関連銘柄で構成された株価指数です。インテル[INTC]やエヌビディア[NVDA]、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]など30銘柄が組み入れられています。
NYSE FANG+はフェイスブック(メタ・プラットフォームズ)・アマゾン・ネットフリックス[NFLX]・グーグル(アルファベット)[GOOGL]の頭文字からなる「FANG」4銘柄とアップル、エヌビディア、マイクロソフト、ブロードコム[AVGO]、クラウドストライク・ホールディングス[CRWD]、サービスナウ[NOW]の計10銘柄で構成された株価指数です。
インド株の代表的な株価指数には「Nifty 50指数」があります。こちらはインドのナショナル証券取引所に上場している代表的な50社の株式で構成されています。
上述の指数を連動目標としているETFでリスク・リターンを比較したのが下表です。
5年(年率)のトータルリターンで比べると、Nifty 50<MSCI ACWI<S&P500<NASDAQ100<半導体株価指数<NYSE FANG+の順に高くなっていることがわかります。リスク効率を見ると、米国テック株系は良くて、インド株は正直微妙なところです。
各株価指数の値動きがどうなっていたのかもグラフで確認してみましょう。2024年1月2日を100として、指数化して表示しています。
目立ってわかるのが、半導体株価指数とNYSE FANG+の値動きが激しいことです。NYSE FANG+に関しては、2024年10月以降大きく右肩上がりを続けていることも面白いですね。MSCI ACWIやS&P500のパフォーマンスを大きく引き上げているのは、マグニフィセント7が主要因であることがわかります。直近、半導体株価指数とNifty 50はパフォーマンスが伸び悩んでいる点にも注目です。
なお、全世界株式型には米国株が6割入っているので、全世界株式型に加えて米国テック株集中型にも投資する際は、より米国株偏重になることは留意してください。全世界株式型の特徴やリスク・リターンを踏まえ、ご自身の目的・リスク許容度にあわせて投資対象を組み合わせてみてはいかがでしょうか。