2024年12月20日(金)8:30発表
日本 全国CPI2024年11月

【1】結果:11月のインフレはエネルギーが寄与し前月から拡大

【図表1】2024年11月の全国消費者物価指数の結果
出所:総務省よりマネックス証券作成

2024年11月の全国消費者物価指数は、主要3指標ともにおおむね市場予想通りの結果となりました。コアCPIである生鮮食品を除く総合指数が、市場予想比から0.1ポイント高い、前年同月比2.7%となり3ヶ月ぶりに拡大となりました。

【図表2】コアCPIの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成

ヘッドラインである総合指数とコア指数の2指標は政府による電気・ガス補助金による効果が縮小したことが前回10月からの拡大要因となっています(図表2)。コアコアCPIとされる生鮮食品・エネルギーを除く総合指数は、前年同月比2.4%上昇と前月から0.1ポイントと小幅に拡大となりました。コメが引き続き高く、生鮮食品を除く食品や交通・通信に分類される自動車保険料等が上昇に寄与しました。

【図表3】コアCPI構成品目 前年同月比上昇・下落品目数の割合(レンジ別、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成
※下落は前年同月比で0%未満

上昇・下落品目をみるとコアCPIを構成する522品目のうち11月は389品目が上昇、36品目が下落、97品目が変わらずとなりました。物価上昇率ごとに内訳を確認すると、2024年春頃からは下落品目は20%未満、0~2%上昇している品目が35%、2~4%上昇している品目と4%以上上昇している品目は20%強でおおむね横ばいの様子がうかがえます。

【2】内容・注目点:次回の実質賃金は再びマイナスとなる公算が高い

コアCPIは、エネルギーが寄与し上昇が拡大する結果となりました。政策効果の剥落によるもので、来月12月分のデータもエネルギーは同程度の寄与が予想され、コアインフレは2%後半での推移が予想されます。

実質賃金の算定に用いられる持ち家の帰属家賃を除く総合指数は前年同月比3.4%と前回10月から0.8ポイント拡大となりました(図表4)。名目賃金は上昇基調にあるものの今回の結果をもとにすると、来月公表される11月の実質賃金は再びマイナス圏に陥る可能性が高いと考えられます。

【図表4】賃金と物価の推移(前年同月比、%)
出所:総務省、厚生労働省よりマネックス証券作成

一方で12月はボーナスシーズンでもあり実質プラスの期待が高まることから、向こう数ヶ月はプラス圏とマイナス圏を行き来するような推移となるでしょう。

昨日12月19日、日銀の金融政策決定会合後に開かれた植田総裁の会見で、賃金の見極めに関して言及がありました。次回会合は1月23日・24日に実施されますが、その時点で指標ベースの賃上げを確認できる可能性は低く、一方で2025年度の春闘の動向等が利上げの判断材料になるものと考えられます。

【3】所感:コアコアCPI、期待インフレはターゲットに近い、利上げの材料は春闘の動向

足元は食品やエネルギーが全体の物価上昇をけん引している様子がうかがえるものの、変動性の高い品目を除いたコアコアCPIは底打ちの兆しがあり、財やサービスが緩やかながら上昇してきていると推察されます(図表5)。

【図表5】コアコアCPIのトレンド(%)
出所:総務省よりマネックス証券作成
※*は年率換算値

短観ベースの期待インフレ率も全産業では前年比2.4%と、ある程度、物価目標に沿った見通しとなっており(図表6)、全体を見れば利上げできる環境は整っていると思われます。

【図表6】日銀短観 全産業1年後の物価見通し(%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

一方で12月19日の植田総裁の会見から、賃金上昇の持続性とそのベースとなるコアコア品目(主にサービス)のインフレ基調に対して、利上げの形で腰を折らないことが重要視されているように感じています。そのため利上げへの判断材料として、向こう1ヶ月は春闘に関連する情報とそれに対する企業のリアクションに注目が集まると考えられます。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太