2024年10月18日(金)8:30発表
日本 全国CPI2024年9月

【1】結果:ヘッドライン、コアともにエネルギーの低下が寄与

【図表1】2024年9月全国消費者物価指数の結果
出所:総務省よりマネックス証券作成

2024年9月の消費者物価指数は、概ね市場予想通りの結果となりました。ヘッドラインの総合指数、コア指数(生鮮食品除く総合指数)は、エネルギーの鈍化が寄与し、前月から大きく低下しています。

エネルギーは、8-10月分に適用される酷暑乗り切り緊急支援策によるもので、同施策の効果はマイナス0.55ポイント、下押ししていると試算されています。

コアコアCPI(生鮮食品・エネルギー除く総合指数)は、前回8月から0.1ポイント上昇し、主には生鮮食品以外の食料がわずかにプラスに寄与するも、サービス含めその他の品目は横ばいで、前回8月から0.1ポイントの上昇となっています。

【図表2】消費者物価指数の推移(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:コアCPIはエネルギー以外の寄与は変わらず

CPI指標は、鈍化が確認される内容でした。主な要因は、政府支援策によるエネルギーの下押し寄与によるもので、コアCPIのその他の要素は寄与度で見ると、横ばいであることがわかります(図表3)。エネルギーの政策効果は10月使用分(CPIの公表値としては、11月発表分)までとなっています。そのため、次回10月のCPIも鈍化、エネルギー政策は指数への下押し寄与が予想されます。

【図表3】コアCPIの寄与度分解(前年比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成

一方で注目したいのは期初の価格改定が、次回のCPIにどの程度現れるかです。帝国データバンクの食品価格改定調査(※)によれば、10月の食品値上げは2,911品目に及び、4月を上回る年内最大の値上げラッシュとの調査が発表されています。

また、値上げ理由として原材料が主因ではあるものの、人件費を理由とする企業が2023年から大きく増加していることも示されており、コストプッシュだけの価格転嫁とはいえないでしょう。同調査では主要食品を対象としていますが、人件費率の高いサービス価格も同様に期初の価格改定が実施されていることに期待したいと思います。
(※)「食品主要195社」価格改定動向調査―2024年10月

【3】所感:基調的な物価は鈍化傾向、10月の価格改定で底打ちとなるか

11月発表(10月分)のCPIは、10月に実施された価格改定がどこまで反映されるか注目ですが、少なくとも上昇要因となるでしょう(もしくはエネルギーの下押し寄与と相殺されて横ばい)。先行きのインフレは日銀、市場予想ともに鈍化が予想されています(図表4)。

【図表4】コアCPIの先行き予想(前年比、%、10月18日時点)
出所:日本銀行、Bloombergよりマネックス証券作成

また、日銀の政策判断の1つの判断材料となる、基調的な物価上昇に関する3指標は8月時点の数値でいずれも2%を下回っており、趨勢的にも鈍化傾向がうかがえます(図表5)。

【図表5】日銀 基調的なインフレ率を捕捉するための指標(前年比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

10月の価格改定により、底打ちの兆しが見えれば、先行きのインフレ予測とも整合的かと思われますが、一方でその価格改定が思うように進まなかったケースでは、この基調的な物価を捉える指標もさらに低下する可能性があり、日銀の利上げへのハードルはさらに高くなることも念頭に入れておくべきでしょう。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太