1ヶ月足らずで139円台から149円台へ

米ドル/円相場は再び150円が視野に入ってきました。9月16日に0.5%の利下げの可能性が急浮上し、米ドル/円相場は139円台まで円高・米ドル安が進行しました。しかし、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で観測どおりに0.5%の利下げが決定されると、材料出尽くしからか米ドル/円相場は上昇、10月10日には149円台まで円安・米ドル高が進行しています。

わずか1ヶ月足らずで米ドル/円相場が底値から10円も円安・米ドル高に進んだ背景には、米経済の強さがあるでしょう。10月4日に発表された9月分の米雇用統計は、予想を大きく上回る強さを見せたことから11月FOMCでの利下げ見送り観測まで浮上、今週週初には利下げ見送り観測が18%程度にまで上昇しました。アトランタ連銀のGDP予測モデル「GDPナウ」の最新の第3四半期のGDP予測は3.2%。株価も高値圏にあり利下げの必要などなさそうにも見えます。

労働市場の悪化を警戒し、やはり11月FOMCでの利下げは実施か

ところが、今週発表された先週分の新規失業保険申請件数は予想を大きく上回る数字でした。失業保険の申請件数が増えているのですから、労働市場の悪化を示すものです。ちょうど先週はハリケーン「ヘリーン」がノースカロライナ、フロリダに上陸したこともあって、その影響ではないか、との指摘もありますが、細かくデータを見るとミシガン州や、オハイオ州、カリフォルニア州などでも失業保険申請が増加しており、ハリケーンの影響だけではなさそうです。

つまり、9月分の雇用統計の好結果は持続するものではなく単月に終わる可能性がありそうです。米9月の消費者物価指数(CPI)がやや強含み、インフレ再燃の芽が出てきたのですが、労働市場の悪化への警戒からやはり11月は0.25%の利下げが行われそうだ、というのが最新の市場のコンセンサスとなっています。11月FOMCの0.25%の利下げ織り込み度は89%まで上昇しています。

米金利上昇は続かず、日本も円安を放置しない

米国の利下げが見送られることなく継続的に実施されるとなれば、足元で勢いよく反発してきた米金利上昇も続かないと考えられます。米ドル/円150円は大台という節目であるだけでなく、下落幅に対しての50%戻り水準でもあり、200SMAや90SMAが重なる水準でもあり、強い抵抗があるということになります。

日本としては岸田政権が退陣を迫られた一つの背景に円安と物価高があったとの指摘もあるだけに、石破政権も過度な円安を放置しないと思われ、すでに加藤財務大臣、神田内閣官房参与などが為替市場へのけん制発言を行っています。

短期的には150円をトライする動きは続きそうですが、150円を突破し再び160円を目指す可能性はあまり大きくはないと考えています。