モトリーフール米国本社、2024年9月16日 投稿記事より
バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]はS&P500の年平均トータルリターンの2倍近くを株主にもたらす
バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]のCEOであるウォーレン・バフェット氏は、史上最も偉大な投資家の1人とみなされており、それを裏付ける実績があります。
1965年にバークシャー・ハサウェイの経営権を取得してから2023年末までの間に、バークシャー・ハサウェイは年率19.8%の複利リターンを株主にもたらしてきました。これは、同期間のS&P500種指数の年平均トータルリターン10.2%の2倍近くに相当します。この年率リターンを58年という長期にわたって複利で計算すると、パフォーマンスの差は目を見張るものがあります。58年間に生み出したバークシャー・ハサウェイのリターンは、S&P500種指数の140倍にもなります。
そのため、バフェット氏がバークシャー・ハサウェイのポートフォリオに変更を加えると、投資業界全体が注目します。
バフェット氏が2大保有銘柄を売却する理由とは
バフェット氏は1つの投資アイデアに多額の資金を投じることに、何のためらいもありません。
例えば、同氏は2016~2018年の間にアップル[AAPL]株を大量に購入し、約360億ドルを投じました。アップルのポジションは一時、バークシャー・ハサウェイの株式ポートフォリオの約50%に達しましたが、バフェット氏は最近になってアップル株を売却しています。2024年第2四半期には750億ドル相当を売却し、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオに占める割合は約半分になりました。
バフェット氏はアップル株を売却した理由について、現行の法人税率を利用するためと述べています。2017年の税制改革で法人税率は現行の水準に引き下げられましたが、この減税措置は2025年末に期限を迎えるため、2026年以降は法人税率の引き上げが予想されます。しかし、節税だけを理由にその資産価値を大きく下回る価格で売却するのは理にかなっていません。バフェット氏がアップルのポジションの縮小を決めたことは、同氏がアップル株について、適正な価格であるか、せいぜい本質的価値に対してわずかに過小評価されていることを示唆しています。
バークシャー・ハサウェイのもう1つの大きな保有銘柄は、バンク・オブ・アメリカ[BAC]です。バフェット氏はバンク・オブ・アメリカ株を、2011年に優先株に投資したことで得たワラントを通じて取得しました。これにより、同氏は2017年に、バンク・オブ・アメリカの普通株を1株7.14ドルという割安な価格で大量に購入することができました。同氏はその後も、バンク・オブ・アメリカ株を追加購入しています。
バンク・オブ・アメリカは、かつてはバフェット氏にとって2番目に大きなポジションでしたが、こちらも売却し始めており、第3四半期に入ってから72億ドル相当を売却しています。理由は、アップル株を売却したものと同じだとみられ、現行の低い法人税率が期限を迎える前にバークシャー・ハサウェイの利益にかかる税金を今払っておこうと考えているようです。なお、バフェット氏による最近のバンク・オブ・アメリカ株の平均売却価格は1株当たり40ドルを超えており、購入価格の約6倍に相当します。
バフェット氏が最近売却している銘柄は、アップルとバンク・オブ・アメリカだけではありません。実際に同氏は、過去7四半期にわたって株式の売却が購入を上回っており、第3四半期のバンク・オブ・アメリカ株売却を考えると、この四半期が終わった時点で四半期ベースの売り越し記録は丸2年となりそうです。
しかし、バフェット氏はこれらの売却代金をどうしているのでしょうか。実のところ、同氏はある超安全な投資先に資金をつぎ込んでおり、その投資先はバークシャー・ハサウェイの投資ポートフォリオ全体の50%に近づきつつあります。
バフェット氏が3,000億ドルを賭ける投資先とは
バフェット氏は、株式を売却して得た資金を米国財務省短期証券(Tビル)に振り向けています。これは償還期限が1年以下の(割引)国債です。バフェット氏は、特に6ヶ月以内に満期を迎えるものを好んでいます。2024年上半期に、バークシャー・ハサウェイの国債保有額は940億ドル増加しました。
第2四半期末時点で同社は、総額2,770億ドルのTビルと現金を保有しています。株式を売却したとはいえ、同社の中核事業は毎四半期約120億~130億ドルの営業キャッシュフローを生み出し続けています。加えて、保有している国債から約35億ドルの利息を受け取っています。これらを合計すると、バークシャー・ハサウェイのTビルのポジションは(バフェット氏がここ2ヶ月半の間に、買収したいと思う魅力的な企業を見つけられなかったと仮定すると)3,000億ドルに近づいています。
参考までに、公開されている資料によると、バークシャー・ハサウェイの株式ポートフォリオは3,000億ドル強の時価となっています(本稿執筆時点)。つまり、国債ポジションだけで、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオ全体の半分近くを占める可能性があります。
バフェット氏は短期のTビルを好み、長期国債には投資しません。同氏はバークシャー・ハサウェイの最新の四半期決算報告の中で、「十分な流動性を維持することが最も重要であるとの考えは変わらず、短期投資に関しては利回りよりも安全性を重視している」と書いています。満期の長い債券は通常、高い利回りを提供しますが、より大きな金利リスクを伴います。市場金利が上昇すれば、満期の短い証券よりも債券の価値は下落します。
最近では、短期証券にはさらなるメリットがありました。イールドカーブが逆転しているため、長期債よりも短期債の方が利回りが高くなっていたためです。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)が間もなく利下げを実施すれば、短期金利は長期金利よりもより早く低下し、結果的にバークシャー・ハサウェイが得る金利収入は大幅に減少することになります。
バフェット氏は、2024年初めに開かれたバークシャー・ハサウェイの株主総会の際に、利回りに関係なく国債を大量に保有することに問題はないと示唆していますが、金利が低下すれば、別の投資先に魅力を見いだすかもしれません。
個人投資家はバフェット氏に追従するべきか
バフェット氏は、時価総額1兆ドルの大手複合企業を率いる立場にあります。投資資産は6,000億ドルを上回り、投資に回せる保険フロート(加入者から集めた保険料のうち、保険金としてまだ支払われていない部分)を含めればもっとあります。ただバークシャー・ハサウェイに大きな影響をもたらし得る投資先は、それほど多くありません。
その点、平均的な個人投資家ははるかに有利な立場にあります。さまざまな投資先に、好きなように投資できます。バフェット氏の行動や資産配分は、株式市場にかつてほど掘り出し物が多くないことを示唆しているかもしれませんが、足元の環境でも検討に値する優れた銘柄はたくさんあります。
現在、現金の貯蓄利回りは、過去長らく見ないほど魅力的かもしれませんが、一貫して最も高いリターンを生み出してきたのは、株式への長期投資です。市場のタイミングを計り、絶好のタイミングを見極めて大量の現金を投じることは、一般の個人投資家がやるべきことではないでしょう。バフェット氏でさえ、強気相場であれ、弱気相場であれ、どのような市場環境でも投資し続け、株式を購入するタイミングを分散させ、一貫して購入し続けるべきだと提案しています。
バフェット氏の動きに追従したい欲求にあらがうのは難しいかもしれませんが、同氏は平均的な投資家とは少し違うゲームをしていることを忘れてはいけません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。バンク・オブ・アメリカは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。元記事の筆者Adam Levyはアップルの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アップル、バンク・オブ・アメリカ、バークシャー・ハサウェイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。