総資産1億7000万円、会社員の平均年収を超える年間520万円の配当収入を得ている兼業投資家なのなのさん。高配当株を中心に運用し、2008年以降は15年連続で黒字を達成。過去10年間の年平均資産増加率は19%と好成績を上げています。今回は、気になる銘柄選びのポイントや保有銘柄、利益が出ない時期でも投資を続けられた理由などをうかがいました。

●なのなのさんプロフィール●
投資歴20年以上の兼業投資家。関西の大学院を修了後、新卒でプライベートエクイティ投資の会社に入社。約9年働いた後、メーカーに転職し、現在に至る。大学1年から株式投資を始め、当初6年間は赤字だったが、投資対象を高配当株メインにしてからは好成績に。X(旧Twitter)フォロワー数は4万7000人超。著書に「月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える『爆配当』株投資」(KADOKAWA)。

中学時代に株式投資に興味を持ち、大学1年でスタート

――株式投資に興味を持ったきっかけを教えてください。

株式投資に興味を持ったのは中学生の時です。当時、セガ・エンタープライゼス(現セガ)の「メガドライブ」というややマイナーなゲーム機を持っており、新聞の証券欄でその会社名(セガ・エンタープライゼズ)を見つけて、株価の値動きをチェックするようになりました。

――ご家庭内で投資につながるような話題や、お金のことに関心を寄せる機会は多かったのですか?

私の親は投資をしておらず、家庭内で投資に関する話題が出ることもありませんでした。投資に興味を持ったのは、個人的な気質によるところが大きいと思います。ただ、プロ野球選手の打率やホームラン数などの数字の動きを追うことは好きだったので、株価の値動きを確認しているうちに、「いずれは株式投資をしたい」と思うようになりました。

――実際に株式投資を始めたのは大学1年とのことですが、元手資金はどのように準備されましたか?また、どんな銘柄を買われたのですか?

お年玉やアルバイトで貯めた30万円から準備しました。初めて買った銘柄は商船三井でした。具体的にどのような事業をしている企業なのかはまったく知らず、マネー誌の袋とじ企画で紹介されていたという理由で購入しました。その当時は1株180円ほどだったので、1,000株購入して約18万円だったと思います。

市場センチメントと逆の行動で大きな利益に

――ご著書の中で「大学時代の株式投資の成績は惨憺たるもの」とありましたが、投資をやめずに続けられたのはなぜでしょうか?

大学1年で株式投資を始めてから6年間、運用益がプラスになることは一度もありませんでした。「PER(株価収益率)が低いほうが割安」と書かれていた書籍を読んで、東証2部(当時)の割安株を買ったりもしていましたが、結局株価が上がらないままの銘柄も多くありました。

それでも株式投資を続けたのは、単純に株式投資が好きだったからです。企業の売上げや利益、ビジネスモデル、社会情勢などから将来の株価を予測することに魅力を感じていました。私にとって、株式投資は趣味であり、ゲームのようなものでもあります。

――これまでの投資ヒストリーの中での成功談や失敗談を教えてください。

成功談としては、トランプショックやコロナ禍などの株価暴落時に、積極的に買い入れを行ったことで、結果として大きな利益を得たことです。普段から、10銘柄ほどを株価が下がったらいつでも買いたい銘柄としてウォッチしており、相場全体が下がったタイミングでそれらの銘柄を購入したのです。

この経験から、市場センチメントと逆の行動をすることの重要性について学びました。

一方、失敗だったと思うのは、学生時代、暴騰していた丸山製作所(6316)をナンピン売りしてアルバイト以外の収入がないにも関わらず10万円単位で損失を出したことです。買いにしても売りにしても、トレンドに逆らった売買をしてはいけないと考えるようになりました。

高配当銘柄選びの4つの条件と、現在の注目銘柄

――高配当銘柄選びの基準について教えてください。

私が高配当株銘柄を選ぶ際に基準としているのは、①配当利回4.0%以上、②右肩上がりの成長、③増配傾向、④PER18倍以下、という4つのポイントです。

①配当利回4.0%以上
高配当株投資を始めた当初は、「配当利回り4.0%以上」のみを条件として銘柄選びをしていました。ですが、この条件のみで選んだ銘柄は、同業他社に比べて決算の内容が良くないなど、劣後する銘柄が多いことが気になりました。

②右肩上がりの成長
そのため、「右肩上がりの成長」という条件を加えました。売上高、営業/経常利益が右肩上がりに伸びている銘柄を選ぶのですが、何期連続といった基準は設けていません。証券会社の業績推移情報を見て、右肩上がりかどうかを確認しています。

③増配傾向
「増配傾向」については、増配傾向にある銘柄は業績が右肩上がりで株価も上昇する傾向が高く、今後も増配を続けることが期待できるので銘柄選びのポイントにしています。

④PER18倍
そして最後の「PER18倍」は、株価が割高ではない銘柄を選ぶための条件です。業績(収益)に対して株価が割高な銘柄は、業績が良くならなければなかなか株価も上がりません。また、配当利回りが4%でPERが18倍だとその銘柄の配当性向(当期純利益のうち、配当金の支払いに向けた割合)は72%と計算でき、PER18倍を超える高配当銘柄の配当性向は高くなると言えます。配当性向は50%を超えるとやや高めだと考えています。

――この4つの条件はどうやって見出したのでしょうか?

どうすれば投資成績が上がるのかを考え、トライアンドエラーを繰り返しながら条件を加えていきました。この4つの条件で銘柄選びをするようになったことで、投資成績は安定的にプラスとなりましたので、悪くない手法だとは思ってはいます。ただ、まだ確信を得るまでには至っていません。他にも良い条件はないかと考えながら、日々試行錯誤を繰り返している段階です。

――現在保有されている中で特に注目している銘柄はありますか?

西部技研(6223)や日本エスコン(8892)、沖縄セルラー電話 (9436)などに注目しています。

このうち西部技研は、本社が福岡県にあり、半導体関連企業の進出で盛り上がる「シリコンアイランド九州関連銘柄」と言えます。EV電池や半導体工場向け製品を扱っているので、今後の成長も期待できます。2023年12月期末の受注残が前年比185%と大きく伸びていることも要注目だと考えています。

次に日本エスコンですが、業績好調なことはもちろん、親会社の中部電力によるTOBが行われれば、株価上昇が期待できる銘柄です。ただし、販売用不動産の取得に積極的なために、営業キャッシュフローが赤字であることや、自己資本比率は低めで借入金が多いなどの心配材料もあります。不動産市況の動向も要注意です。

沖縄セルラー電話は、売上高も利益も右肩上がりが続いているうえ、22期連続で増配中と、安心して保有できると考えられる銘柄です。

ほとんど注目されていない銘柄に投資

――兼業投資家としてご多忙な中、投資に関して毎日行うルーチンなどがあれば教えてください。

朝と昼休み、通勤電車の帰り、帰宅後に30分~1時間程度、投資に関する情報収集を行っています。日経新聞を読む、保有銘柄の株価をチェック、Xでの情報収集などがメインです。

――投資の指針にしている座右の銘や書籍はありますか?

座右の銘は「人の行く裏に道あり花の山」です。個人投資家の間で話題になっている銘柄はできるだけ避けるようにし、ほとんど注目されていない銘柄を買うようにしています。注目されていない銘柄のほうが、市場で注目が集まった時の株価の伸びしろが大きいからです。

書籍は『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』(日経BPM)が、投資に関する基本的な考え方や、銘柄選びについてわかりやすく書かれているので、投資を始めて間もない人には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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※本インタビューは2024年5月10日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。