モトリーフール米国本社、 2024年6月2日投稿記事より

逆張りで石油株へ投資

ウォーレン・バフェット氏は、市場に反して動く逆張り投資家です。同氏が率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]は、市場で人気のない業界や、まるで注目されていない分野の企業の株式も頻繁に購入しています。

その一例として、石油株への投資を拡大しています。例えば、石油大手のシェブロン[CVX]やオクシデンタル・ペトロリアム[OXY]です。

シェブロン:ヘス[HES]買収実現ならば成長加速

バークシャー・ハサウェイは1億2300万株近いシェブロン株を保有しており、これは190億ドル超に相当します。現時点で5番目に大きなポジションであり、ポートフォリオの6.6%を占めています。

ところが、シェブロンの株価は過去1年間に低迷しています。S&P500指数はもちろんのこと、ライバルのエクソン・モービル[XOM]などの同業株を大きくアンダーパフォームしています。最大の要因は、同業のヘス[HES]の大型買収について投資家が懸念していることです。発端は、南米ガイアナ沖合のスタブローク海底油田の開発を手掛ける合弁事業でヘスが保有する30%の権益について、合弁に参加しているエクソンが先買権を主張したことです。シェブロンは、エクソンの主張には何のメリットもないと考えています。

ヘスの株主は先日、全額株式交換による530億ドルの買収案を承認しました。しかし、エクソンとの仲裁裁判に決着が付かない限り、シェブロンが取引を完了させることはできず、それは早くても2025年になるとみられます。

ヘスの買収によって、すでに強固なシェブロンの成長性は一段と強化される見通しです。1バレル当たり石油価格を、現在の80ドル前後より保守的に平均60ドルと仮定すると、シェブロンのフリーキャッシュフローは2027年にかけて年率10%を上回るペースで成長が見込まれます。ヘスの買収が実現し、石油価格を平均約70ドルと仮定すると、フリーキャッシュフローは2027年までに2倍に増加すると予想されます。さらに、この買収によって、生産量とフリーキャッシュフローの成長は2030年代まで持続する可能性もあります。

仲裁裁判でエクソンに勝てば、シェブロンの株価は上昇するはずです。しかし、仮に裁判に負け、結果的にヘスの買収を断念せざるを得なくなったとしても、シェブロンに問題はなく、フリーキャッシュフローは増加が見込まれます。同社は積極的な自社株買いプログラムと増配を通じて、フリーキャッシュフローの多くを株主に還元する計画です。自社株買いについては、石油価格が60~70ドルの場合、同社は発行済み株式の3~6%を毎年消却することが可能です。また、シェブロンは過去5年間に同業他社を上回るペースで増配しており、配当利回りは4%超とすでに高水準にあります。

オクシデンタル:2024年に22%の増配

バークシャー・ハサウェイはオクシデンタルの株式2億4800万株超(発行済み株式の28%)を保有しており、150億ドル超に相当します。これは、シェブロンに次いで6番目に大きなポジションであり、ポートフォリオの4.1%を占めています。

オクシデンタルも、成長率を高めるために大型買収を行っています。2023年には、シェールオイル開発のクラウンロックを現金と株式交換により120億ドルで買収することで合意しました。オクシデンタルは、この買収によって年間のフリーキャッシュフローが10億ドル増加すると見込んでいます。こうした見通しも後押しとなり、同社は2024年に入って22%の増配を決定しました。

フリーキャッシュフローの増加に加え、クラウンロックはオクシデンタルのポートフォリオ強化につながります。日量約17万バレル相当の利益率の高い生産量と、低コストの未開発採掘拠点1,700カ所が追加される見通しです。これにより、オクシデンタルは45億~60億ドルの非中核資産を売却することができます。

クラウンロックの他にも、オクシデンタルにはいくつかの成長ドライバーがあります。石油以外の資産から得るフリーキャッシュフローは、2026年までに10億ドル増加する見通しです。具体的には、パイプライン運営会社ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズへの投資から得られる分配金の増加、川中事業における契約の満了、債務返済に伴う支払利息の減少、化学事業(OxyChem)への成長投資などです。一方で、新たな油井の掘削による既存事業での石油・ガス生産量の増加にも、継続的に投資しており、原油価格がプラスに推移すれば、石油事業からのフリーキャッシュフローも増加が見込まれます。

フリーキャッシュフローが増加すれば、オクシデンタルは債務の返済、配当の引き上げ、自社株買い(バークシャー・ハサウェイが保有する優先株を含みます)に充てることができます。債務の返済や優先株の買い戻しは、普通株主への価値移転が進むことを意味します。普通株主への現金還元の増加に加え、オクシデンタルは今後数年間で力強いリターンを生むだけの材料を持っていると思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Matt DiLalloはバークシャー・ハサウェイ、シェブロンの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、バークシャー・ハサウェイ、シェブロンの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はオクシデンタルの株式を推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。