モトリーフール米国本社、 2024年5月26日投稿記事より

新製品「Copilot+ PC」が6月にも発売

株式市場全体が上昇する中、マイクロソフト[MSFT]の株価は5月21日に過去最高値を更新しました。前日の5月20日にマイクロソフトの新キャンパスで開かれたイベントで、人工知能(AI)向けに設計されたウィンドウズPCの新製品を紹介しました。

Copilot+ PCと名付けられた新製品は、Microsoft Surfaceの他、Acer、ASUS、デル・テクノロジーズ[DELL]、HP[HPQ]、レノボ、サムスン電子といった製造パートナーの協力によって開発されました。価格は999ドル~、早ければ6月18日に発売される予定です。

マイクロソフトは2024年1-3月期(2024年6月期第3四半期)の決算発表の中で、Copilot in Windowsが今や、2億2500万台近いWindows 10およびWindows 11 PC上で利用可能になったことを明らかにしました。これは前期比で2倍に相当します。Copilotは、AIを搭載したマイクロソフトのチャットボット・アシスタントで、Microsoft 365アプリなどに対応しています。5月20日付のプレスリリースは次のように述べています。

Copilot+ PCは、これまでで最も高速でインテリジェントなWindows PCです。驚異的な40 TOPS(Trillion Operations Per Second、毎秒1兆回の演算)超を実現するパワフルで新しいシリコン、1日中使えるバッテリー駆動時間、最先端のAIモデルへのアクセスにより、Copilot+ PCは他のPCではできなかったことを可能にします。Recall(リコール)機能により、PCで見たものを簡単に見つけて記憶できるほか、Cocreator(コクリエイター)を使用して、デバイス上でほぼリアルタイムでAI画像を生成し、編集できます。また、40を超える言語から英語に音声を翻訳するライブ・キャプションを使用して、言語の壁を越えることもできます

AIを搭載したPCの開発は、業界にとって大きなプラス材料です。なぜなら、これはAI搭載チップの需要を支え、ユーザーの生産性を向上させ、開発者や家電メーカーにチャンスをもたらすからです。決算発表の中でマイクロソフトは、エヌビディア[NVDA]やアドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]製に加え、自社開発した「ファーストパーティシリコン」を含む、多様なAIアクセラレータを提供していると述べました。

あらゆるレイヤーでAI収益化

マイクロソフトは、エヌビディアのような純粋なAI銘柄とは言えないかもしれません。しかし、マイクロソフトは非常に多くの方法で新技術を収益化しているため、間違いなく最も多層的なAI機会を提供していると言えます。

PC市場だけでなく、マイクロソフトはAzure OpenAIを通じて、インテリジェント・クラウド事業にもAIを組み込んでいます。フォーチュン500企業の65%超がAzure OpenAIサービスを利用しています。

GitHub Copilotは、驚異的なスピードで成長し続けています。2024年度第2四半期に、GitHub Copilotの登録者数は前期比30%増加し、有料登録者数は130万人に達しました。しかも、この成長は第3四半期に加速し、有料登録者数は35%増の180万人となりました。

マイクロソフトは、Copilot Studioを通じて、カスタマイズされたAIアシスタントも提供しています。Copilot Studioのユーザー数は前期比175%増加し、3万を超える組織がこのサービスを利用しています。Power Platformも類似の企業向けツールで、AIを活用したアプリを構築するために使われます。直近四半期で、Power Platformを利用する組織の数は33万を超え、この中にはフォーチュン100の半数を超える企業が含まれます。Power Appsは、Copilotを使ってユーザーがアプリ設計コードを書くのを支援します。Power Appsの月間アクティブユーザー数は2500万人を超え、前年同期比で40%を上回る伸びとなっています。

直近数回の決算発表で重要なことは、マイクロソフトが事業全体でAIを急速に収益化していることです。

潤沢な資金力も強み

クラウド・コンピューティング、企業向けおよび消費者向けのソフトウェアやハードウェア、ゲーム、ソーシャルメディアなど、マイクロソフトはさまざまな顧客と関わる、幅広い接点を有しています。多くのエンドマーケットで業界をリードする地位にいることに加えて、同社の最大の強みは誤差の幅が小さいことにあります。

AI企業やハイテクセクター全体は、いずれ循環的な景気後退に直面するでしょう。そうなった時、景気に関係なく投資を続けられるだけのキャッシュフローとバランスシートを持つ企業は、さらに強くなって再浮上するはずです。マイクロソフトほど、景気後退に耐え、そこから恩恵を受けることのできる企業はありません。

2024年3月末時点において、同社のバランスシート上の現金、現金同等物および短期投資は800億ドル強、長期負債は427億ドルでした。

売上高、純利益、営業利益率は、いずれも10年ぶりの高水準となっています。過去12ヶ月純利益は862億ドルであり、配当金213億ドルと自社株買い168億ドルの合計額を2倍しても余りあるほどです。そのため、有機的成長に対して積極的に投資し、戦略的買収を行い、配当を引き上げ、自社株買いを行う余裕は十分にあります。

マイクロソフトの支払配当金は米国企業の中でもトップクラスであり、また株式報酬を上回る金額を自社株買いに充てています。同社は現在、発行済み株式数を減らし、株式報酬による希薄化を抑制しようとしています。同時に、自社株買いや配当を通じて株主に報い、長期的成長のために投資しながら、景気後退に耐えるために必要なものも備えています。

年率10.9%成長で可能

2018年8月、アップル[AAPL]は米国企業として初めて、時価総額1兆ドルを達成しました。また、エヌビディアは2024年だけで時価総額が1兆ドル超増加しています。

マイクロソフトの足元の時価総額は3兆2000億ドルで、世界で最も価値のある企業です。株価は過去11年間で1100%以上上昇しています。複利成長の力を考えれば、2035年までに時価総額が10兆ドルに到達するのに、これほどの成長は必要ありません。

マイクロソフトの時価総額が今後11年間で10兆ドルに達するためには、年率でわずか10.9%の成長があれば十分です。これを実現するための方法はいくつかあります。

最も単純な方法は利益成長です。理論上、株価収益率(PER)が変わらなければ、株価は利益成長率と同じペースで上昇します。

マイクロソフトの現在のPERは37.2倍です。利益が10%増加した場合、PERが低下しなければ株価は10%上昇します。ここで筆者の予想ですが、自社株買いも考慮すると、マイクロソフトの1株当たり利益(EPS)は、今後11年間にわたって年平均15%程度の成長が見込まれます。しかし、成長性や投資家の楽観的な見方が冷え込めば、バリュエーションが低下する可能性もあります。

向こう11年間の利益成長率を年平均15%と仮定すると、マイクロソフトのEPSは現在の11.54ドルから54ドルになります。さらに11年後のPERを30倍と仮定すると、株価は1620ドルとなり、マイクロソフトの時価総額は12兆ドル強となります。

つまり、PERが低下したとしても、年間EPSが10%台前半~中盤で成長すれば、2035年までに10兆ドルは達成可能ということです。なお、マイクロソフトの12ヶ月EPSはこの1年間に19.2%増加しています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Daniel Foelberは、アドバンスト・マイクロ・デバイシズの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアドバンスト・マイクロ・デバイシズ、アップル、HP、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。