2024年5月14日(火)21:30発表(日本時間)
米国 生産者物価指数(PPI)
【1】結果:総合・コアPPI、いずれも市場予想・前回結果を上回るも前回結果は下方修正
4月の米生産者物価指数(PPI)は、前年比+2.2%と前回結果(+1.8%)を上回る結果となりました。また、物価動向の風向きを確認できる前月比ベースでは+0.5%と物価の伸びの速度に加速が見られます。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPPIは前年同月比で2.4%、前月比で0.5%となり、いずれも市場予想と前回結果を上回りました。一方で、前回3月分の結果は、総合・コア指数ともに下方修正されています。
【2】内容・注目点: サービス価格が全体の伸び牽引。PCEコア算出に用いられる項目に要注目
PPIとは
米PPIとは、生産者物価指数のことを指し、原材料や製品を対象として生産段階での財・サービス価格変動を測定しています。
例えば、机などの家具で考えると、企業が机という商品を生産するために仕入れる木材や金属などの原材料の価格変動を測定するのがPPIであるのに対し、CPIは最終的に消費者が机を購入する際の価格変動を測定します。
必ずしもそうとは限らないものの、一般的に、企業が仕入れる原材料の価格変動が最終的には消費者が支払う価格に反映されることが多いため、米PPIは米CPIの先行指標として注目されています(図表2)。
PPI、インフレ高止まりの先行きを示唆
今回4月のPPIの結果は、前回結果・市場予想を上回り、インフレ高止まりの先行きが示唆されます。
図表3の通り、内訳(前月比)をみると、サービス価格が前月比+0.6%を記録し、2023年7月以来の大きな上昇となり、PPIの伸び全体の約4分の3に寄与しました。また、サービス価格の中身を詳しく見ると、宿泊費(+2.4%)やポートフォリオ管理費(+3.9%)が上昇した一方で、航空運賃(-3.8%)や外来医療費(-0.1%)は下落しました。
これらの項目は、FRBが金融政策の判断においてインフレ指標として採用しているPCEコア価格指数の算出に用いられるとされているため、金融政策の動向を予想する上では特に注目が必要です。今回の結果は、強弱まちまちといえ、市場予想を上振れしたヘッドラインの数値が与えるインパクトを和らげるものとなりました。
一方で、財価格も+0.4%と、前回3月の下落から一転、上昇となりました。ガソリン価格の高騰(+5.4%)を筆頭としたエネルギー価格の上昇(+2.0%)によるものです。エネルギー価格の高騰は、運送や流通など様々な業界への波及が心配され、資源価格の高騰を背景としたインフレ懸念が続きます。
【3】所感:PPIは強弱まちまちな結果でほぼノイズ。5月15日CPI・小売売上高に注目
PPI公表後は見出しの数値が市場予想を上振れしたことから、インフレ懸念による利下げ観測後退で米金利は上昇で反応しました。しかし、その後は前回3月分の結果が下方修正されたことや、PCEコア価格指数の算出に用いられる項目の内容が強弱まちまちだったことから過度なインフレ警戒が和らぎ米金利は下落に転じました。
同日開催されたイベントの中でパウエル議長は、今回のPPIの結果について、「過熱気味であるとまでは言えない、強弱ミックスだ」と述べており、市場の反応をみても今回の結果は相場の方向性を大きく変える結果ではなかったといえるでしょう。
5月15日(米国時間)には米CPI(消費者物価指数)と米小売売上高が同時に公表されます。市場ではどちらも鈍化が予想されており、結果に注目です。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐