中国当局が積極的に市場支援策を打ち出すも、中国株は下げ止まらず
2023年末~2024年2月5日までの中国本土市場・香港市場の騰落率ですが、上海総合指数は-9.2%、香港ハンセン指数は-9.0%と大幅な下落となっています。
実はこの期間、中国当局からは市場支援策が打ち出されています。中国国務院(内閣)は1月22日に、李強首相が主宰する常務会議の場で、「市場を安定させるため、強力かつ有効な対策を講じる」との方針を明らかにしました。また、1月29日には何立峰副首相が資本市場の安定を図るため、上場企業への支援を強化するよう呼びかけたとの報道もありました。
しかし、中国株は下げ止まらず、パニック売りのような急落も見られました。中国証券管理監督委員会も矢継ぎ早に株価てこ入れ策を発表。1月28日には特定の株式を対象として、空売り目的の貸し出しを禁止する措置を発表しました。これにより、戦略的投資家は今後、ロックアップ期間中に株式を貸し出すことが禁止されました。また、ロックアップ規制を逃れようとする動きを取り締まるとも表明しています。
さらに、中国当局は2月4日に資本市場の安定を維持し、市場の異常な変動を断固として阻止すると表明。また、悪質な空売りやインサイダー取引などの違法行為を厳しく取り締まると付け加えました。そして、2月5日には株式担保のリスク回避に向け注意深く監視を行い、効果的な対策を講じると表明しています。
しかし、厳しい経済見通しに加え、レバレッジをかけていた投資家の売りや「スノーボール(雪球)」と呼ばれるデリバティブでのテクニカルな売り要因、さらには米中対立の激化(米国の上下両院の超党派グループが一部の中国バイオテクノロジー企業が米連邦政府と契約することを禁じる法案を提案するなど)といったリスク要因が積み重なっている状況で、株価はまだ下げ止まりの兆候を見せていません。市場は、中国当局の対応がまだ十分ではないと感じている様子で、今後はさらなる強力な市場支援策が発表されるかどうかに焦点が移ります。
旧正月明け後の株価動向に注目
なお、この期間に発表された主な中国の経済指標を確認すると、2023年12月の鉱工業生産が前年比6.8%増(市場予想6.6%増、前月実績6.6%増)、固定資産投資が年初来で3.0%増(市場予想2.9%増、前月実績2.9%増)、小売売上高が前年比7.4%増(市場予想8.0%増、前月実績10.1%増)、2024年1月の中国国家製造業PMI(購買担当者景気指数)は49.2(市場予想49.3、前月実績49.0)、中国国家非製造業PMIは50.7(市場予想50.6、前月実績50.4)、Caixin中国製造業PMIが50.8(市場予想50.8、前月実績50.8)、Caixin中国サービス業PMIが52.7(市場予想53.0、前月実績52.9)と全体的に弱い推移となっています。
需要が低迷し、デフレ圧力がかかっている状態です。このような経済指標を見ても、経済を再起動させるような大胆な金融緩和や大規模景気刺激策が求められるところですが、これまで習近平政権がとってきた経済対策を見れば、そのような対策が出る可能性は低いと見られる状況です。
ただ、株価が急落している理由の1つは旧正月の長期連休が迫っていることもあると思います。2024年は2月10日が春節で、中国本土市場は2月9日から2月16日までが休場となり、香港市場は2月12日~2月13日までが休場になります。
一般的に中国株市場では旧正月前は株価が下がりやすい傾向があります。長期連休中に株価に大きな変動が出るようなニュースが出た場合、対処しきれないからです。特に株価が現在のように急落している中では、清算売りも増えそうです。
もちろん、株価が実際に反転するまでは様子を見た方が賢明と考えられますが、旧正月前に大底を打って旧正月明けから反転するシナリオも想定の1つとして考えておいても良いかもしれません。