2025年2月の香港株、ディープシークショックを機に大きく上昇

2025年2月3日(月)終値~2月28日(金)終値までの中国株の騰落率は、上海総合指数+2.8%、香港ハンセン指数+13.5%となり、特に香港ハンセン指数が大きな上昇となっています。香港ハンセン指数が上昇している要因としては、香港市場に多く上場しているテンセント(00700)やアリババ(09988)といった時価総額の大きい中国テック株が、1月末のいわゆる「ディープシークショック」から大きく上昇してきたことが挙げられます。

ディープシーク(DeepSeek)は、ヘッジファンドや機関投資家などの市場参加者にとって、長年株価が下がり続け、割安に沈んできた中国株へ再参入を決意するための、インパクトのある触媒だったと考えられます。ディープシークの技術や今後の懸念点といったことは問題でなく、投資家にとって、これをきっかけに中国株全体を買い直す良い口実になったと考えるべきと思います。

ディープシーク登場以降の世界市場を見渡すと、明らかに趨勢が変わってきています。最も上昇しているのが香港市場です。中でもハンセンテック指数は大きく上昇。同指数は1月24日終値から2月28日終値まで、+19.5%の上昇と突出します。

習近平主席がアリババの馬氏ら著名起業家と会談、締付け終了のサインか

そして、2月17日には北京で重要な会合がありました。習近平国家主席がアリババの共同創業者である馬雲氏のほか、美団の王興氏、小米集団の雷軍氏を含む企業の代表者と会談し、民営経済の発展を促す方針を強調する演説を行いました。

この会合には、ロボットスタートアップ Unitree の王興興氏、ディープシーク創業者の梁文峰氏、そしてハイテク技術の国産化を担う華為技術(ファーウェイ)創業者の任正非氏、テンセントの馬化騰氏、BYD(01211)の王伝福氏なども出席しました。習主席は Unitree の王氏、任氏、アリババの馬氏と握手したとも伝わっています。半導体製造、電気自動車からAIまで、さまざまな業界を代表する企業、中国のビジネス界で最も有名な人物たちが集まったということでしょう。

この会合の狙いとしては、背景に米国の関税政策と中国包囲網が進められるなか、中国経済の大きな部分を担うテック企業へ寄せる中国指導部の期待があると思われます。中国指導部が寄り添う姿勢を見せたことで、長い間軽視されてきた民間ハイテクセクターへの締付けは終了したと考えられます。株価にとっても重要で、この日が長期的な意味で中国テック株のターンアラウンド日となった可能性もあるでしょう。このターンアラウンドはディープシークによって開始されたのですが、2024年秋のように一時的な急騰劇に終わらず、長期的に強力に後押しするものではないかと考えます。

香港株へのマネーの思惑は、下落していたPER改善への期待感か

振り返れば、中国テックセクターの負のターンアラウンドは2020年秋に起こりました。2020年、アリババの共同創業者である馬氏は上海での講演で国家金融セクターと規制当局に対する非難を行い、北京のトップ当局者を怒らせました。数日後には、当時世界最大の市場デビューであったFZ世界最大のモバイル・オンライン決済プラットフォームAlipay(アリペイ)、世界最大のMMF余額宝(ユエバオ) 、信用評価システム芝麻信用を運営するアリババ・グループの金融関連企業アントグループのIPOを中止させてアリババに対する攻撃を開始。そこからハイテクセクター全体への締付けへと発展していきました。

このターンアラウンドを起点にアリババ株は天井から下がり続け、2021年には他のハイテク株全体に影響が及んでいきました。この間ハイテク企業の決算は急激に悪化したわけではありませんが、業績や財務基盤がいくら良くても株価は下がり続けました。EPS(1株あたり利益)が上がっても、市場からの評価(投資家の機運)であるPERが下がり続けては、株価は下がらざるを得ません。株価はEPSとPERの掛け算なのです。

今回の2月17日の会合では、習主席が具体的にハイテクセクターに特別な指針を示したわけではないと思います。しかし、このような会合が設けられたこと自体が、鄧小平氏がかつて行った南巡講話のように、今後の指針を示す象徴的な出来事になるのではと考えます。

国は経済を支える必要があり、中心となる彼らを支援するということです。そうなれば、下がってきたPERはマインド改善によって切り上がっていく、というのが今、香港株に入っているマネーの思惑でしょう。横ばい気味のEPSと急速に切り上がるPERの掛け算で株価は上昇するのです。