金融プレイヤーの参入が進んだ2023年、ビットコイン半減期を控えた2024年も見通しは明るい

2023年は暗号資産市場が最悪期を脱し、その裏では金融プレイヤーの暗号資産関連事業への参入が進んだ年だった。金融市場では世界的なインフレ鈍化が着実に進み、米国金利のピークアウトもようやく兆しが見えてきた。また米国でブラックロックがビットコインの現物ETFを申請し、その承認に向けた期待が高まった。このような中でビットコインは年初から100%を超えるパフォーマンスとなり、足元では1BTCあたり560万円台まで高騰している(2023年10月までの相場振り返り)。

2024年はバブルの周期イベントとして意識されるビットコインの半減期(4回目)を4月頃に控え、暗号資産市場が次の大きな上昇トレンドに突入することが期待される。今回も半減期アノマリーが続くかどうかはさておき、以下の3つの観点で暗号資産、ビットコインの見通しは明るいと考えている。

・各国の暗号資産規制がスタート

・金融市場のお金が流入する

・web3は組み込み型で普及する

各国の暗号資産規制がスタート

各国地域の暗号資産規制の状況
出所:公開情報よりマネックス証券が作成
※△は2024年以降に施行予定

テラショックやFTXショックの反省を踏まえ、2023年は各国で暗号資産規制の整備が進められた。EU圏では、暗号資産関連サービス業者に対するライセンス制や消費者保護、AML/CFT(Anti-Money Laundering / Countering The Financing Of Terrorism、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与防止対策)などを定めた、暗号資産に関する包括的な規制案「Market in Crypto Assets(通称:MiCA)」が議会において承認された。また金融大国である英国と香港、シンガポールにおいても同様に暗号資産規制の方針が発表され、規制面で海外に先行していた日本では2023年6月に改正資金決済法によってステーブルコインに関するルールが新たに定義された。

一方、米国では暗号資産規制が不透明な状況が続いている。2023年には米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)による暗号資産関連業者の取り締まりが強化され、コインベースやバイナンス、クラーケンなど主要な暗号資産取引所が次々に訴追された。しかし、リップルやグレースケールなど一部の訴訟問題では当局の主張が否決される判例が出ており、当局に対してはより具体的な暗号資産規制の整備を求める声が大きくなっている。

米国が暗号資産規制の方針を決めあぐねている中、欧州アジアの主要国では2024年に暗号資産規制が本格的にスタートする。中でも香港は個人投資家の暗号資産取引が解禁されることで大きな注目を集めており、HuobiグループやOKXグループなど複数の暗号資産取引所が拠点を新設している。またDBS銀行やHSBCなど伝統的な金融機関も香港の顧客向けに暗号資産取引サービスを提供し始めている。このように規制が整った国では暗号資産関連の事業が盛んに展開されることが予想される。

2017年は日本、2021年は米国が暗号資産ブームの中心地となったが、いずれも暗号資産規制が整備されていない環境だった。次にどの国で暗号資産への関心が高まるかはわからないが、各国で暗号資産規制が始まる2024年以降にいよいよ暗号資産市場の本格的な成長が見られる可能性がある。

金融市場のお金が流入する

暗号資産規制が整備される中では、欧米を中心に金融機関による暗号資産関連事業への参入が進んでいる。まず大口投資家が暗号資産に投資する上では資産を安全に保管できる態勢が必要になるが、今ではフィデリティやBNYメロン、ドイツ銀行などが暗号資産カストディサービスを展開しており、彼らの顧客は暗号資産の管理を取引所とは別の機関に委託した上で取引を行うことができる。これにより取引所のハッキングリスクも軽減することができる。

暗号資産の保管技術が進歩すると投資信託やETFのような金融商品も組成しやすくなる。実際に米国ではグレースケールが提供するビットコイン投資信託がこれまで人気を集めており、2023年にはブラックロックがビットコインおよびイーサリアムの現物ETFを申請したことでも話題になった。現物ETFを筆頭に株式に準じた形で暗号資産に投資できる金融商品が増えることで、幅広い投資家の暗号資産市場への参入が進むだろう。

また、暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンを使い、株式や債券、不動産など伝統的な金融資産をトークン化しようとする動きもある。JPモルガンやシティ銀行、バンク・オブ・アメリカなどがそれらを取り扱うデジタル資産プラットフォームの開発に取り組んでおり、国際通貨基金(IMF)と世界銀行、国際決済銀行(BIS)は共同でトークン化に関する研究計画を発表している。このようなトークン化によってあらゆる資産の相互運用性が高まれば、暗号資産市場にも間接的に資金が流入することに繋がるだろう。

2024年は金融市場のプレイヤーが暗号資産市場へますます参入し、金融市場のお金がビットコインに流れることで大きな上昇トレンドを引き起こすと予想する。

web3は組み込み型で普及する

金融市場と暗号資産市場の融合が進む一方で、web3は未だに断絶された世界である。しかし、2023年にはweb3の機能を既存のインターネットサービスに組み込むような動きが見られた。

例えば米国ではコインベースが取引所の機能をAPIとして提供する企業向けのサービスを始めており、中でもウォレット機能を切り出した「Wallet as a Service(WaaS)」が業界関係者の間でも大きな関心を集めた。これに追随する形で米ドル連動のステーブルコインUSDCを手掛けるサークルも同様のサービスを発表し、今ではどんな企業でも簡単に暗号資産のウォレット機能を自社サービスに組み込めるようになりつつある。

実際に東南アジアのスーパーアプリで配車サービスを展開するグラブは、サークルが提供するWaaSを活用し、自社アプリ内にウォレット機能を導入する計画を発表した。これによりグラブはゼロからウォレットを開発せずともweb3事業に参入することが可能になり、サークルは間接的にグラブが抱える約2億人のユーザーにリーチすることができる。

このような組み込み型の金融サービスはフィンテック業界においても「Embedded Finance」というテーマで昨今の大きなトレンドとなっており、今後はweb3に関しても私たちが日ごろから使い慣れているサービスに一部機能が組み込まれることで拡大する可能性が高い。次のブームと期待されるブロックチェーンゲームも通常のインターフェースの裏側にNFTアイテムなどを管理するウォレット機能が備わっていなければ使い勝手が悪い。

2024年はブロックチェーンのモジュール化やクロスチェーン、オラクルなどweb3ネイティブな領域でも様々な進化が起こり、分散型SNSなど新しく注目されるDappsによって投機的な盛り上がりが起こる可能性もあるだろう。そのような閉ざされた世界をマスアダプトする鍵としてweb3の組み込み型サービスの発展に注目したい。

2024年のビットコイン価格のレンジ予想

最後に2024年のビットコイン価格のレンジ予想を披露する。

出所:Tradingviewよりマネックス証券が作成
ビットコイン 上値:約1,018万円(69,000ドル)/下値:472万円(32,000ドル)
※1ドル=147.50円で換算(2023年11月30日時点)

ビットコインの下値については水平線とチャネルのレンジから設定し、上値については米ドル建ての史上最高値付近を設定した。円安の影響で円建ての史上最高値は早くに更新する可能性があり、年末にかけては1,000万円を超える可能性があると見る。

四半期別だと2024年の第1四半期はビットコインの現物ETFや半減期の期待によって堅調な相場になる可能性が高い。しかし米国で現物ETFの承認が見送られた場合には一転して上値が重くなる可能性がある。2024年、第2四半期は注目イベントを通過した後に停滞する期間になると予想する。2024年前半は各国規制の施行を受けて新たなビッグプレイヤーの参入や暗号資産関連サービスの提供開始の動きが増え、ステーブルコインの発行や既存アセットのトークン化が活発化するかにも注目である。

2024年第3四半期から第4四半期にかけては、インフレや経済指標によって米国の利下げ時期が前後する可能性はあるが、世界的な金融緩和への転換が意識されて相場が再び上向くと予想する。2024年後半には米国大統領選も控えており、共和党勝利となればSECの再編によって米国における暗号資産に対する姿勢が友好的になることも期待される。また暗号資産市場のお金が増えた後にはweb3の中でも分散型金融(DeFi)やブロックチェーンゲームを中心に取引が盛り上がるかがポイントとなる。