東京証券取引所ではこれまでアクティブETFの上場が認められていませんでしたが、2023年6月に制度改正があり上場が可能となりました。でも、そもそもアクティブETFとは何なのでしょうか?今回はETFに関する基本的な知識をおさらいしながら、アクティブETFについて学んでいきましょう。

そもそも投資信託とは?ETFとは?

アクティブETFを理解するうえで、「投資信託(公募投信)」と「ETF」の理解は欠かせません。投資信託とは、一言でいえば「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。図にすると、下記となります。

投資信託の仕組み

投資家は、運用を委託する専門家と、投資する額をそれぞれ選べますが、運用そのものは専門家にお任せするので専門的な投資の知識がなくても資産運用することが可能です。また、投資信託は、複数の投資家から集めた資金を元手に運用するため、国内外の複数の株式や債券、不動産などに分散投資することができます。複数の銘柄・資産クラスに分散投資しておくことで、1つの銘柄・資産クラスの運用で損失を出してしまっても、他の銘柄・資産クラスの利益でカバーすることも可能であるため、リスクを分散することができます。

「卵は一つのカゴに盛るな」という相場格言にもあるとおり、投資の基本は、資金をいくつかの資産に分けてリスクを分散させる「分散投資」。個人の投資家が、自分だけで分散投資しようとすると、多くの資金が必要となりますが、投資信託は小口のお金を集めてひとつの大きな資金として運用するので、さまざまな資産に分散投資し、リスクを軽減することが可能になります。投資信託は、このような分散投資の考え方から生まれた金融商品です。

一方で、ETFとはExchange Traded Fund の頭文字を取ったもので、文字通り取引所(Exchange)で、取引される(Traded)、投資信託(Fund)、のことです。日本語では「上場投資信託」といいます。取引所に上場しているため、個別の株式と同じように証券会社を通じて取引所で売買することができるという点が最大の特徴です。

投資信託とETFの主な違いを下記の図でまとめました。

※2023年8月時点。保有コスト(信託報酬)の出所:投資信託協会サイト

インデックス運用とアクティブ運用

投資信託・ETFは主に2つのタイプがあります。インデックス運用とアクティブ運用です。

インデックスとは、特定のマーケットの動向を表す指標のことです。市場全体の動きを数値化した株価指数や債券指数、不動産投資信託市場の動きを数値化したもの等があります。このようなインデックスに連動することを目標とした運用手法がインデックス運用です。

一方で、アクティブ運用とは、運用会社やファンドマネージャーが、予め定められた運用方針に沿って、その専門知識を生かしながら組入銘柄や資産配分を選択することで、ベンチマークを上回る投資成果を目指します。インデックス運用とは、連動対象となる指標が存在しない点が大きな違いです。

運用のプロであるファンドマネージャーと運用チームが市場や個別銘柄の調査、分析を行い、その結果をもとに銘柄を選定して運用するため、アクティブ運用の投資信託・ETF(アクティブファンド)は、信託報酬などの運用コストがインデックス運用の投資信託・ETF(インデックスファンド)に比べて高いという傾向があります。

アクティブETFとは

アクティブETFとは、上述のとおり「アクティブ運用」の「ETF」のことです。これまで日本ではインデックス運用のETFしか上場していませんでしたので、ETFというと一般的にインデックス運用である、つまり日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、S&P500等といった何らかの指数に連動するように運用されている指数連動型の投資信託の一種という認識を持たれていました。

一方で、海外ではアクティブETFが広がっており、すでに米国やカナダ、英国、韓国などで上場しています。英調査会社ETFGIによると世界25カ国で取引されており、総資産残高は7月末時点で6280億ドル(約90兆円)に達しました。これはETF全体ではまだ6%程度ですが、過去10年間に約25倍に増えています。

ようやく、日本でも、アクティブETFが解禁され、指標に縛られない柔軟性のある運用が行われるETFを組成ことが可能となりました。既存のETFよりも運用会社やファンドマネージャーが決められた運用方針に沿ってETFの組入銘柄や資産配分を決めていくため、銘柄選定の目利きや判断力といったプロの腕が運用成果を左右することになります。このようなアクティブETFが、2023年9月7日に東京証券取引所で初めて上場しました。

アクティブETFのメリット・デメリット

アクティブETFはこれまでのETFとどう異なるのでしょうか。

メリット①:コストの低さ

アクティブファンドはインデックスファンドに比べて運用コストが高くなる傾向があると上述しましたが、アクティブETFはアクティブファンドよりは信託報酬が低い傾向にあります。投資信託と異なり、ETFでは販売会社への手数料が発生しないためです。

メリット②:運用の透明性

保有銘柄などの情報に関しては投資信託が原則決算期ごとの開示に対し、ETFは日次での開示が求められ、運用の透明性が高いとされています。

メリット③:商品の選択肢が増える

インデックス運用の指数・指標に運用成果を連動させるという制約が無くなるので多様な運用目標を設定することが可能になります。例えば、市場の代表的な指数より高い運用成果を目指すもの、事前に定められた一定のルールに沿って運用を行うもの、指数が作り難い複数の資産クラス(株式、債券、REIT、コモディティ等)に投資をするバランス型運用などです。

デメリット①:コストの高さ

メリットでコストに触れましたが、インデックスファンドに比べるとどうしても運用コストは高くなる傾向にあります。

デメリット②:運用状況の管理

アクティブETFは運用の自由度が高いことから、まず運用方針をきちんと理解し、投資した後もその銘柄が運用方針に沿ってしっかりと運用されているか定期的な確認が必要になります。市場全体の動き、期待とは違う運用成果になることがあり、運用リスクを取ることになります。

なお、2023年9月7日に上場した第一陣のアクティブETF6銘柄は、2024年1月から始まる新しい少額投資非課税制度(新しいNISA)の成長投資枠の対象商品となります。NISAで資産形成するうえで、個人投資家にとってETFが選択肢の一つとなるでしょう。