アクティブETF、6銘柄が新規上場

アクティブ運用型ETF(Exchange Traded Fund=上場投資信託)が2023年6月に解禁され、9月7日に先陣を切って6銘柄が新規上場した。新たな商品の誕生は、投資選択の範囲を広げるものとして期待される。

取引所に上場し、いつでも売買することができるETFはこれまで、株価指数などの指標に連動する「インデックス型」しか認められてこなかった。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)に連動するように設計されたETFが代表格で、銀行株指数などの業種別指数に連動するものや、金や原油などの商品価格に連動するものなど幅広く上場している。

キャシー・ウッド氏のアーク・インベスト社も注目する世界のアクティブETF市場

アクティブETFとは、連動対象となる指標が存在しないETFのことを指す。

日本取引所グループ(JPX)のホームページ(※1)によれば、アクティブETFとは「運用会社やファンドマネージャーが、あらかじめ定められた運用方針に沿って、その専門知識を生かしながら組み入れ銘柄や資産配分を選択することで、ベンチマーク(投資基準)を上回る投資成果を得る可能性を提供する」などと定義している。

大手調査機関によれば、2022年の世界のETFの新規上場銘柄数はアクティブETFが1,177銘柄、パッシブ(指標連動)ETFが1,757銘柄で、アクティブETFの比率は約4割。2023年5月末時点のアクティブETFの取引国・地域別純資産総額をみると、米国の純資産総額が3836億ドルで、世界のアクティブETF市場の77%を占めるという。

2023年5月末時点での米国アクティブETFの純資産総額首位は「JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF」で、これは株式の配当金とオプションプレミアムを原資として毎月分配を目指すETFだ。上位には米国債券や米国大型株を運用対象とするものなど、比較的オーソドックスなものが並ぶ。

一方、アクティブETFを一躍有名にしたのが、アーク・インベスト社が設定している「ARK Innovation ETF(ARKK)」だ。キャシー・ウッド氏が率いるARKKは、構成銘柄の条件として「破壊的なイノベーションをもたらす企業」を掲げている。生産性、コスト改革、プラットフォームなどのイノベーションを定義とし、これまでEV(電気自動車)のテスラを大量に組み入れたことなどで有名だ。

一時は劇的な高パフォーマンスをたたき出したことで、脚光を浴びた。2020年3月に37ドル台だった価格は、2021年2月には159ドル台に急騰した。ただ、その後は急落する場面も見られた。

今回、日本でも、アクティブETFが登場することで、投資の選択肢が増える。また、2024年1月からの新NISA(小額投資非課税制度)開始でも注目される可能性がある。

9月7日上場の6銘柄は、運用会社別ではシンプレクス・アセット・マネジメントが3銘柄、野村アセットマネジメント2銘柄、三菱UFJ国際投信が1銘柄となっている。そこで、今回はアクティブETFをピックアップする。

シンプレクス・アセット・マネジメント

PBR1倍割れ解消推進ETF(2080)

PBR1倍割れ企業をユニバースとして分散投資を行う。議決権行使を通じて割安な企業価値を放置している経営陣に経営の質の改善を促す。

政策保有解消推進ETF(2081)

政策保有株式が連結純資産の一定割合以上を占める企業に幅広く投資し、投資先企業の経営改善に伴う株価上昇を狙う。

投資家経営者一心同体ETF(2082)

経営陣が自社株を一定以上保有する企業、つまり経営者と株主が一心同体になって経営が行われている企業群をユニバースとして投資を行う。

野村アセットマネジメント

NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ投信(2083)

高ROEを維持できる「優良企業」への長期投資を中心に、ROE改善が期待できる「変身企業」に機動的に投資することで株価の上昇をとらえるETF。

NEXT FUNDS 日本株高配当アクティブ上場投信(2084)

安定的な「配当」、機動的な「値上がり益」の獲得により、中長期的なトータル・リターンの獲得を目指すETF。ポートフォリオの予想配当利回りは約4.0%。(2023年7月末時点、野村アセットマネジメントによる試算のもので、実際の配当利回りと異なる場合があります。)

三菱UFJ国際投信

MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信(2085)

東証に上場する大型株・中型株の中から、予想配当利回りの上位銘柄を選定する。年4回の決算時に分配を行う。

アクティブETFの注意点もある。JPXのホームページでは、連動対象となる指標が存在しないだけで、特定のセクターや市場に対するエクスポージャー(特定のリスク)を提供することを主な目的とするものも含まれるなど、その種類は多種多様で、投資するにあたっては、自らの投資目的と合致するか否かをより確認することが必要になる、と解説している。

(※1)ETFの概要 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)
https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/etf-outline/05.html

(※2)ARKK 銘柄-アーク・イノベーションETF 投資信託(ファンド)情報 -Bloomberg Markets
https://www.bloomberg.co.jp/quote/ARKK:US

 

アクティブ運用型ETFは、値動きや想定されるリターンが、日経平均等の株価指数といった特定の指標に連動した投資成果を目指すETFと異なることがあります。

アクティブ運用型ETFは連動対象となる特定の指標が存在しないことにより、運用会社において相場の状況等に応じた柔軟な運用が可能となっている一方で、運用パフォーマンスの向上のために積極的にリターンを狙った運用を行った結果、相場全体の変動からでは説明できない値動きをしたり、投資成果がベンチマークを下回ったりする可能性もあります。