マーケットを動かしている米国金利は下げのきっかけ待ちの様相

先週のS&P500は2.52%の下げ、ナスダック100も2.61%の下げとなっています。これによりS&P500は7月の高値から10%の調整を経験したことになります。

現在米国株式市場を動かしているのは金利です。米国10年債利回りは世界中の金融参加者が最も注目している債券利回りのベンチマークと言って良いでしょう。

先週10月23日(月)著名ヘッジファンドマネージャーの ビル・アックマン氏がX(旧Twitter)でこれまで空売りしていた債券のショートポジションを解消したと発言したその一言で、米国10年債利回りが下落しました。明らかに米国10年債利回りが5%という状況は行き過ぎで、市場金利は下がりたがっているものの、債券市場では金利が下がるきっかけを探しているように思えます。

中東情勢は緊迫化が続き、事態が改善する気配はありません。このような事態もマーケットを不安にさせています。係る事態を受け、先週金価格は1.3%上昇しています。

第3四半期の決算発表。GAFAM企業の結果はまちまち、市場全体には影響せず

第3四半期の決算発表については、まちまちの内容でした。先週はGAFAM企業のうちアルファベット[GOOGL]とマイクロソフト[MSFT]の発表がありました。両社ともに10月24日(火)の引け後に決算を発表しましたが、クラウド・コンピューティング部門の利益がアナリストの予想を下回ったアルファベットの株価は1日で9.5%下落、一方予想を上回ったマイクロソフトの株価は3%上げですが、市場全体を押し上げるほどの力はありませんでした。

10月25日(水)の引け後に決算発表を行なったメタ・プラットフォームズ[META]は、広告改善を受け予想を上回ったものの、2024年の売上見通しについては不透明感があると強調、発表の翌日株価は3.7%下落しました。

一方、10月26日(木)の引け後に決算発表を行なったアマゾン・ドットコム[AMZN]は、サービスコストと配送速度を改善、AWSの成長を安定、利益率を高めつつ、広告収入を堅調に伸ばし、全社の営業利益とフリーキャッシュフローが大幅に増加したことなど、好調な第3四半期を発表、アマゾン・ドットコム[AMZN]の株価は6.8%上がっています。

ダウ構成銘柄はインテル[INTC]が9%上げるもダウ平均は下落

先週10月23日(月)にはエヌビディア[NVDA]がアーム・ホールディングス[ARM]の技術を使いPC用CPU市場に参入するという報道が流れ、これを受けCPU大手のインテル[INTC]の株価が下落しました。しかし、インテル[INTC]の26日(木)の決算発表では事前予想を上回り、10月〜12月期についても事前予想を上回る見通しを出したこともあり株価は1日で9%上昇しました。インテル[INTC]はダウ採用銘柄ですが、同社の株価が9%上がっても、ダウ指数全体を押し上げる力はありませんでした。先週NYダウは4.6%下げ、年初からのリターンは2.2%マイナスとなっています。

また、ダウ構成銘柄であるシェブロン[CVX]は化学製品の工場増設による国際的な過剰供給、および国外製油事業の損失をそれぞれ理由に挙げ、株価は1日で6.7%下落しました。

同じくダウ構成銘柄のジェイピー・モルガン・チェース[JPM]のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、自身と家族が保有する同行株約860万株のうち約12%に相当する100万株を売却する計画を明らかにし、株価は3.6%下落しています。26日の終値(140.76ドル)に基づくと、100万株は約1億4,100万ドル(約210億円)相当です。金融資産の分散と税金対策が目的で、同氏は引き続き同行の見通しが極めて強いと考えているとしています。

フォード・モーター[F]はEV投資を縮小

大手自動車メーカーのフォード・モーター[F]はアナリストの予想を下回る決算を発表。組合員のストライキが続いていることもあり、2023年通年の予想を撤回しました。また、赤字を発表したEV事業については、同事業における継続的な課題について警告、EV車の生産を削減する一方で、ケンタッキー州の第2バッテリー工場の延期を含む、EV車部門への投資を約120億ドル縮小すると発表しています。これを受け同社の株価は12%下落しました。販売台数を増やすために値下げを行うも黒字を出しているテスラ[TSLA]に対するチャレンジがいかに難しいかを物語っています。

今週の米国株式市場の注目ポイント:FOMC、アップル[AAPL]決算発表、雇用統計

今週のフォーカスは、11月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会) 、11月2日はアップル[AAPL]の決算発表、11月3日の雇用統計となります。アメリカ個人投資家協会のブルベアレシオのベア(弱気)の投資家の比率も2023年の5月のレベルまで高まってきています。マーケットのセンチメントが極端に悪い中、マーケットがリバウンドする可能性は高いと考えています。ただし、中東の状況が悪化しないという条件付きではありますが。

テクニカル的に見ると、S&P500は先週40週間の移動平均線である4,250の上値抵抗線を抜けきれず下落しました。次の下値抵抗線は4,114〜4,049となります。マーケットが上昇に転じるためには、4,200〜4,250のレンジを超えてくる必要があります。