モトリーフール米国本社、 2023年9月24日 投稿記事より

主なポイント

・アーク・イノベーションETFは、過去数ヶ月の間にテスラ株を繰り返し売却している
・テスラの株価は年初来で2倍以上に上昇しているため、アーク社の保有額は依然として大きい
・アーク社はテスラ株の売却益の一部を、大きな可能性を秘めたAI関連株のパランティア・テクノロジーズへ振り向けた

アーク・イノベーションETFの中で最も大きな割合を占め、かつ極めて高いリターンを上げている銘柄から、将来有望なAI銘柄へ資金を振り向け

キャシー・ウッド氏は、アーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)が運用する上場投資信託(ETF)のアーク・イノベーションETFの保有銘柄を定期的に微調整しています。この戦略は2023年に成果を上げており、純資産総額80億ドルの同ファンドは、年初来で40%のリターンを生み出しています。

同ファンドは9月21日、電気自動車メーカー大手テスラ[TSLA]の株式5万4,847株(1400万ドル相当)を売却する一方で、1000万ドル以上を投じて、人工知能(AI)銘柄のパランティア・テクノロジーズ[PLTR]の株式を購入しました。

テスラ株の売却は2023年初めから何度も行われており、アーク・イノベーションETFが最後にテスラ株を購入した4月下旬以降、合計で73万9,637株を売却しています。

ウッド氏はテスラに愛想を尽かしたのでしょうか、それとも単なる利益確定なのでしょうか。同氏がアーク・イノベーションETFの中で最も大きな割合を占めるテスラを売却し、パランティア・テクノロジーズに資金を振り向けた理由を探ってみましょう。

テスラ[TSLA]は依然としてアーク・イノベーションの中で最大の保有銘柄である

一連のテスラ株の売却について、ファンドの現在の資産と照らし合わせて考えることが重要です。実際、9月21日の取引終了時点において、テスラは依然として、アーク・イノベーションETFの中で突出して最大の保有銘柄です。同ファンドはテスラ株を約300万株、7億6500万ドル相当を保有しており、ポートフォリオの約11%をテスラが占めています。

つまり、ウッド氏はテスラ株を売却しましたが、株価上昇に伴って、ポートフォリオ全体に占める割合は上昇しています。2022年末時点で、アーク・イノベーションETFにおけるテスラの割合はわずか7%でした。しかし、その後に株価は急騰し、年初来で108%上昇しているため(執筆時点)、ウッド氏が繰り返し持ち分を減らしているにもかかわらず、テスラの比率は売却分を穴埋めする以上に高まっているのです。

アーク社が依然としてテスラに強気であることを示すさらなる証拠として、同ファンドによる最新のテスラ評価モデルがあります。モデルによると、ウッド氏はテスラの株価が2027年までに2,000ドルに上昇すると予想しており、これは今後4年間で682%の上昇を意味します。強気シナリオでは2,500ドル、弱気シナリオでも1,400ドルを予想しており、それぞれ878%と448%の上昇です。これは、ウッド氏が持ち分をわずかに削減したとはいえ、テスラの将来性に極めて強気であることを示しています。

これはまた、ウッド氏がテスラ株の売買に対してタイミングを見計らっていることを示しています。

AIに大きく賭ける

アーク・イノベーションETFのミッションは、破壊的イノベーションによって「世界の仕組みを変える可能性がある」企業を発掘し、投資することです。パランティア・テクノロジーズは、ビッグデータ解析とAIが交差する位置にいます。同社のプラットフォームは、膨大なデータをふるいにかけ、肉眼では気づかないパターンを特定します。この技術は、果てしなく続く米国政府によるテロリストの追跡に活用されているだけでなく、ビジネスの分析にも幅広く応用されています。

2023年初め、パランティア・テクノロジーズのアレックス・カープCEOは、第1四半期の株主向けレターの中でAIの可能性について触れ、「最新の大規模言語モデル(LLM)の誕生は、AIが一般化し得ることを世界に初めて知らしめた真の暗示であり、企業向けソフトウェアを大きく変革するものです。当社の新サービスである「AIP(人工知能プラットフォーム)」には前例のない可能性があり、これまでにない需要が期待されます」と述べました。

パランティア・テクノロジーズに魅力的な機会があると考えるのは、ウッド氏だけではありません。8月には、ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイブス氏がパランティア・テクノロジーズを「AI界のメッシ」と呼び、投資判断を「買い」、目標株価を25ドルとしました。これは9月21日の終値から79%の上昇余地を意味します。アイブス氏はさらに、パランティア・テクノロジーズは「他の追随を許さないAI要塞を築き上げ、今後10年間のAI革命の主要プレーヤーになる可能性がある」と述べました。

2023年のパランティア・テクノロジーズは、予想を上回る業績を上げ続けています。第2四半期の売上高は前年同期比13%増の5億3300万ドル、GAAPベースで3四半期連続の黒字を達成し、営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローも好調です。

ウッド氏のパランティア・テクノロジーズへの投資も、チャンスをうかがっていたように見えます。株価はこの3週間で30%も下落しており、アーク社にとって魅力的なエントリー・ポイントとなっています。最近の下落にもかかわらず、年初来で株価は119%上昇していますが、それでも2021年に付けた過去最高値からは64%下落しています。今回の購入により、アーク・イノベーションETFはパランティア・テクノロジーズの株式を670万株超、9300万ドル相当を保有し、ファンド全体の約1.3%を占めています。

勝利に向けたリバランス

ウッド氏がAIの継続的な可能性に強気であることは周知の事実です。アーク社は年次レポート「ビッグ・アイデア2023」の中で、AIは「他のすべてのテクノロジーに連鎖する」触媒であり、こうした破壊的プラットフォームは年率40%で成長し、市場規模は現在の13兆ドルから、2030年には200兆ドルに達する可能性があると書いています。

市場全体のダイナミクスを考えれば、ウッド氏がアーク社にとって最大かつ成長中のテスラのポジションを切り崩し、生成AIへの投資を増やすのは意外ではありません。そしてパランティア・テクノロジーズは、AIに特化した有望銘柄の1つとして存在感を高めています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Danny Venaは、パランティア・テクノロジーズ、テスラの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はパランティア・テクノロジーズ、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。