上昇基調が続かない7月相場
この日本株の弱さは何だろう。朝方はナスダックの大幅上昇などを好感し、日経平均の上げ幅は一時300円を超えた。ところが急速に伸び悩むと前日比マイナスに沈み、結局引け値は小幅安で終えた。上方修正や増配まで発表したファーストリテイリング(9983)が2%安。好業績でも織り込み済みとの市況解説があった。
2023年の上半期、日本株のパフォーマンスは素晴らしかった。月次ベースで6連騰、つまり1月から6月まで毎月上昇した。日経平均は5月と6月は2ヶ月連続で2000円超の値上がりとなった。2ヶ月連続の2000円台の上昇は日経平均の算出以来、初めてのことだ。余勢を駆って7月相場も高値更新で始まった。ところがその後が続かない。12日までTOPIXは7営業日続落。日経平均も下落基調を辿り、12日は終値で6月8日以来およそ1カ月ぶりに節目の3万2000円を下回った。昨日は大幅に反発したが、今日はまた冴えない展開だ。目下のところは7月初めにつけた高値が天井となった感がある。これに関する質問を前回の「広木隆のMonday Night Live」(7月10日)でいただいていた。
日経平均株価本日の引け値32,189円で、チャート上Wトップのネックラインの32,306円を割ってしまいました。31,000円前後まで下げの可能性があるように思えますが、今後の見通しをお教え下さい。(みの様)
最近、日経平均は下落傾向ですが下限はいくらぐらいと思われますか。そろそろ買い戻ししたい値段帯のような気がします。(武藤様)
日経平均はダブルトップをつけてしまいましたが、下値はどのくらいを想定されますか?(もびー様)
良し悪しの問題ではなく、単に好き嫌いの問題だが、僕はテクニカル分析というものが好きではない。「好きこそのモノの上手なれ」だから、当然、好きでないものには明るくない。ダブルトップがどうこう、と言われてもサッパリわからない。蛇(じゃ)の道は蛇(へび)という。テクニカルのことは、専門家のお二人に聞こう。福永博之さんと東野幸利さんだ。
『福永博之のいまさら聞けないテクニカル分析講座(2023/07/12)』
【日本株】日経平均はトレンド転換のサイン「ダブルトップ」が完成、今後の動向は?
『相場一点喜怒哀楽(2023/07/11)』
ここに書かれている通りだとすれば、つまりダブルトップ形成で調整局面入りだとすれば、当面は上値3万3000円台後半から下値3万1000円台前半のボックス圏での推移となるだろう。このような予想を読んだ読者は、「ああ、またか」と思われたのではないか。多くのひとが持つ日本株相場のイメージは「ボックス圏」とか「レンジ相場」というものではないかと推察する。というのも、実際の株価の推移がそうだからである。
短期逆張りスタンスでよかったボックス相場が終わる
実は日本株相場の基調は10年以上も前から長期上昇トレンドであった。アベノミクス相場がスタートする直前の2012年10月末を起点とすれば日経平均はおよそ4倍になり、米国株をも上回るパフォーマンスだ。それでも、この間、一本調子で右肩上がりだったわけではなく、しばらくボックス圏でもみ合った後、ようやくレンジを上に抜けてはまたボックス圏でのもみ合い…という推移を繰り返してきたのであった(グラフ)。
だからであろう、上がったら売って、下げたら買う ー つまり短期逆張りのスタンスが個人投資家の習い癖になってしまった。それはこれまでのレンジ相場ではうまくいったかもしれないが、大きくステージが変化する局面では機能しないどころか失敗するリスクが高い。そして今がまさにその局面である。
ストラテジーレポート(2023/06/30)
で述べたことをよく理解してほしい。
これまではおカネを貯める一方で投資をしてこなかった日本企業が今やヒト・モノに投資し、成長へと舵を切り始めた。これは真の意味で「80年代バブル崩壊の終焉」と捉えることができる。
長期的に捉えるスタンスが求められる大きなステージの転換局面
前掲のレポートで述べたことをもう一度、繰り返そう。日経平均が史上最高値をつけた1989年末、すなわちバブルのピークは企業の投資意欲も旺盛で資金不足のピークでもあった。そこからバブル崩壊⇒経済縮小に平仄を合わせるように企業の資金不足は解消され、そして90年代半ばの日本版金融危機を経て、金融機関に頼れなくなった企業は自らファイナンス機能を維持するようになる。すなわち、おカネをひたすら貯め、減価償却の範囲内でしか設備投資を行わない。企業の投資不足が日本の低成長の原因だった。それは元を辿れば、バブル崩壊の後遺症と言えるだろう。
その状況が変わり始めたのである。大きなステージの転換局面と考えられる。したがって今は短視眼的に相場を捉えるのではなく、より大きなスコープで、より高い視座で相場を長期的に捉えるスタンスが求められる。まさにout-of-the-box(既成の枠を破ること)が必要だ。
短期ではレンジ相場となっても、すぐにまた上に抜けていくような展開になるだろう。ダブルトップの話に戻れば、その二つの天井もそれほど時間が経たないうちに払ってまた高値へと向かうと思う。